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2015年12月22日 (火)

消費税引き上げが受け入れられにくい理由

 消費税率を現在の8%から10%に引き上げるのは、社会保障の水準を維持するなどのために必要不可欠だろう。だが、引き上げ時期を2017年4月に延ばしたり、食料品などに軽減税率を適用しようとすることになるなど、消費税引き上げに反対する政治的な圧力は相当なものだ。

 社会保障レベルの高い西欧諸国に比べ、日本の租税負担率、また社会保険料を含めた国民負担率はいずれも低いほうである。にもかかわらず、国民は医療、介護や年金などの社会保障に対して、西欧並みに充実を、と求める。この要求水準を満たすには、税・保険料の引き上げが欠かせないが、そのことを国民が理解し、増税などの負担増を受け入れるところまで達していない。

 議会制民主主義のもとでは、国民が享受している利益を守るため、それに必要な税を負担することに同意し、それが執行される仕組みが基本だ。しかし、現在の日本では、国民は享受している利益ないし新たに享受しようとする利益に見合うだけの負担をすることに拒絶反応を示す。それは議会制民主主義の基本を揺るがし、社会の長期的な安定を損なう。

 最近読んだ『日本の財政はどうなっているのか』(湯本雅士著)は代表制民主主義の「原則を理解し、受け入れているはずの国民が、あえて負担の増加に対して拒絶反応を示すとしたら、それは、現在、このプロセスのどこかに問題があると考えているため」として、問題点を挙げている。

・立法府が一人一票という民主主義の基本原理が守られていない以上、国会の意思は国民多数の意思という定理は受け入れられない。

・国の予算案策定プロセスが不透明。どこでどのように決まるのか、どういう理由によるのか、が不明瞭。

・議会での審議において、予算そのものの検討がおろそかになっている。

・租税制度には著しく不公平・不平等が内在している。それが納税意識を失わせている。

・歳出では、既得権層の利益保護としか考えにくい支出が多く目に付く。

・国民は納めた税がどう使われたかについて十分な知識が与えられず、納得もしていない。

・納めた税金が有効に使われていなかった場合、直ちに適切な是正措置がとられることに納得すれば、納税への抵抗感もある程度やわらぐ。

 いま、国の2015年度補正予算案、2016年度一般会計予算案がまとまりつつある。そこでは、著者、湯本氏の指摘するような旧来の予算づくりが続いている。大量の国債発行に依存してカネをばらまき、政権支持率を上げようとする魂胆が見え見えである。これでは日本の財政破綻は必至だ。

 同書は末尾で、「このままではこの国は必ず行き詰まってしまう」とし、政治がなすべきこととして、現在の日本の状況を国民に十分に理解してもらうよう努めること、国民が慣れ親しんできた古い衣を脱ぎ捨てる必要があること、その脱皮には必ず痛みが伴うが、日本の存続を図るために必要不可欠な国民の義務とでもいうべきものであると繰り返し説き、国民全体の意思と力を結集するよう努めることを訴えている。いささかわかりにくい文章だが、危機意識は伝わってくる。

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