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2016年1月 2日 (土)

混迷の時代における新聞の役割

 元旦の新聞をざっと読んだ。全国紙6紙を読んでの感想を言うと、新聞よ、しっかりしてくれの一言に尽きる。

 新聞を精彩あるものにするのは特ダネ(特報)である。アッと驚くニュースは一面トップを飾り、読者も記者も活気づける。ことしの元旦は、産経新聞の「マイナンバー 運営システムに欠陥」が目立った。

 また、東京新聞の「中古武器輸出を検討 防衛施設庁」は、日本の安全保障政策の転換に伴う新たな動きをとらえている。毎日新聞も「改憲へ緊急事態条項」と報じている。読売新聞は「数研出版も教科書謝礼」を載せた。

 特ダネの代わりに連載記事の第一回を一面に大きく載せる形で紙面をつくったのは、日本経済新聞の「アジア  ひと未来 目覚める40億人の力」、朝日新聞の「18歳をあるく」である。毎日新聞の「チャイナセンセーション」は一面の真ん中に掲載、中国の一帯一路の行方を追っている。

 これとは別に、元旦の新聞でいい記事だと思ったのは、朝日の「新発想で挑む 地方の現場から」。水田にトウモロコシを植えているのが農の救世主になるという。東京の「がん患者が安心して暮らせる、英国発祥のマギーズセンターが今夏、東京にオープン」 、読売の第6部「日本の魅力の再発見」も興味深く読んだ。

 しかし、元旦の6紙を通読して感ずるのは、いまの時代をどうとらえ、それにどう日本は、国民は取り組まねばならないのか、といった緊迫した問題意識が乏しいのではないか、という点だ。

 東日本大震災で危機に瀕した原発の後始末はほとんど進んでいない。政治的には問題にもされない。消費税率の軽減問題が大きな争点になったが、バラマキ政治の広がりもあり、深刻な財政危機をどうやって解決するかが与党で真剣に論議されない。国民が高い関心を抱く安全保障政策と憲法との関わりもきちんと国会で論議されないままだ。また、議会制民主主義の政治を支える選挙制度の歪みの是正は遅々として進まない。沖縄における基地移転問題も地元の意向を無視して埋め立てが行なわれている。それらに関する記事はほとんど見なかった。

 また、グローバル資本主義のもと、企業を取り巻く競争環境は厳しくなり、貧富の格差は大きくなっている。先進国、途上国を問わず、雇用条件などで沢山の人が人間らしく生きることは難しくなる一方だ。技術革新は人間を幸福にすると同時に、失業を生み出し、それが社会保障などの充実を要求する。地球温暖化も人間の生存環境を破壊しつつある。そうした観点の記事も目につかなかった。

 昨年からフランスなど先進国でテロが起き、常時、警戒態勢が敷かれるようになった。民族、宗教などで異なる人々が平和的に共存する社会を再構築しなければならない。また、中国のように独裁強権国家が軍事力強化をバックに支配地域を広げようとしているのにも、平和共存を働きかけねばならない。

 世界も日本も、こうしたきわめて不安定、かつ危機的な状況に直面している。したがって、グローバル資本主義や世界の政治体制などをトータルにとらえ、世界と日本の平和と繁栄とをいかに確立していくか。そうした認識と処方箋とを念頭においた新聞づくりが求められていると思う。正月は明るい話の新聞を、というような社内的な都合はナンセンスだろう。

 欲張りかもしれないが、新聞の使命と紙面は時代の先端と切り結ぶ、厳しくかつ高邁なものであってほしい。

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