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2016年2月29日 (月)

民主・維新の財政健全化推進法案

 衆議院は、平成28年度国家予算案に関する予算委員会の審議が大詰め。3月早々に政府原案が衆議院本会議を通過する見込みだ。いつも思うことだが、一般会計予算だけでも何十兆円規模に達する政府提出の予算案が、大勢の国会議員の審議にもかかわらず修正ゼロでパスするのはおかしい。国会審議において野党が指摘する問題点を、政府・与党が1つも受け入れない多数決は、果たして民主主義政治と言えるのだろうか。

 ところで、民主党と維新の党が2月9日、衆院議長に「国及び地方公共団体の責任ある財政運営の確保を図るための財政の健全化の推進に関する法律案」を提出したことを最近まで知らなかった。この法案の内容はさておき、主要な野党2党が焦眉の課題である財政健全化について共同で法案をまとめ、衆院に提出したことは評価されていい。

 同法案は、「財政健全化目標」として、①2020年度までを目途に、国および地方公共団体の基礎的財政収支の黒字化を確実に達成すること、②21年度以降は、国・地方の名目GDPに対する長期債務残高の割合が安定的に低下する財政構造を実現すること、を挙げている。

 そして、経済成長に伴う歳入増を図る、あらゆる改革を行なって歳出の重点化、効率化を図るとし、これらの諸施策によっても財政健全化が達成できない場合には、公平・透明・国民が納得できる税制を確立して必要な財源を確保する、と言っている。

 また、10年を一期とする「財政運営戦略」を定め、国および地方の基礎的財政収支額目標や、名目国内総生産に対する国・地方の長期債務残高合計の割合の目標などを定めたり、3年を一期とする国の財政健全化推進の中期フレームを定めるなど、を盛り込んでいる。

 「その他」として、①社会保障を効率化する措置として診療報酬明細書の電子化などを行なう、②国家公務員の総人件費を、平成21年度の当初予算額からおおむね20%相当額を減らすことを目標に協議・交渉を行ない、実現する、などを挙げている。

 財政健全化を推進するためには、もっと具体的な提案が求められるが、主要野党がこうした法案を提出したことは評価に値する。

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2016年2月27日 (土)

寄するもの容るるが湾よ春の雪(照井翠)

 東日本大震災で岩手県釜石市も大津波の被害をこうむった。被災した一人、俳人の照井翠さんの話を日本記者クラブで聞いた。釜石の高校で国語を教えている照井さんは2013年8月に記者クラブで話をしたことがあり、今月26日は二度目。3.11からの5年間の体験や、詠んだ俳句のいくつかについて貴重な話をうかがうことができた。

 タイトルに載せた句「寄するもの容るるが湾よ春の雪」は、記者クラブのゲストに記帳してもらったもの。この句について、照井さんは「毎年、3.11が近づくとドキドキした。しかし、いまでは、海が悪いわけではない、湾は海の水を受け入れているだけなのだ、と思うようになった」という趣旨の話をしてくれた。

 同じく、最近になって詠んだ句として、「死なば泥三月十日十一日」、「冬の月いま戦前と思ひをり」、「忘れたり三・一一も英霊も」を挙げた。三月十日は東京大空襲の日、英霊は、先の戦争の戦死者を指す、と。

 3.11から、5年近く経った。大津波の被災を、過去に経験した大災害とひとくくりにする視点を照井さんは持つようになったということだろうか。

 被災後3年半経ったころに詠んだものとして、「死に河豚の垂直のまま流れをり」、「夏草や壺の口まで埋むる骨」、「蜩や山の頂まで墓場」、「万緑の底で三年死んでいる」、「分かるのか二万の蝉の溺死なら」、「草茂るずっと絶望してゐろと」とを挙げた。照井さんは「3年半で復興が成っているはずだと思い込んでいた。それなのに復興は進まない。それでいらだったり、諦めたりした気持ちが表れている」という。

 照井さんが日本記者クラブに最初に招かれたとき、記帳は「寒昴たれも誰かのただひとり」だった。スバルは星がまとまった集合体である。人も皆、誰かにとってかけがえのない存在である。そんな意味か。

 被災地で教師として働きながら、住む地域の出来事を俳句を通じて表現し、記録するのは、とても意義深い。照井さんの話を聞いたおかげで、俳句のことをろくに知らない私でも、俳句による表現の広さ、深さ、豊かさを感じることができたような気がする。

 

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東芝は不適正会計? 不正会計? それとも粉飾決算?

 東芝が外部に公表する決算の数値を誤魔化していた事件。これに関する本が相次いで出版された。今沢真著『東芝 不正会計 底なしの闇』(毎日新聞出版)、それに浜田康著『粉飾決算―問われる監査と内部統制』(日本経済新聞出版社)である。

 前者の著者は、毎日新聞の論説委員兼経済プレミア編集長であり、東芝に焦点をしぼった読み物である。そして、後者はあずさ監査法人の代表社員であり、過去の大きな粉飾決算についても取り上げている。

 東芝事件が表面化した当初、メディアは、東芝のトップも使った”不適切会計”という表現で記事にしたり、”不正会計”という言い方を用いたりした。前者については、「東芝グループ行動基準」の「13.適正な会計」という用語があるので、その否定表現として出てきたものかもしれない。

 だが、従来、当たり前に使われてきた”粉飾決算”という用語で東芝事件を報道したメディアはなかったのではないか。そこに、個人的には違和感を覚えた。

 半世紀前の1965年に、山陽特殊製鋼が倒産し、粉飾決算というものが広く知られるようになった。この山特鋼の決算粉飾を中心に、当時の日本経済新聞編集局証券部の記者が書いたのが『粉飾決算』という本だった。以後、粉飾決算という言葉は広く人口に膾炙するようになった。

 そういう歴史を歩んだ日本経済新聞社が、今回の東芝の事件報道に対して粉飾決算という表現を使わないというのはなぜだろうか。日経の子会社の日本経済新聞出版社が今回、出した本は会計士が執筆したものなので、”粉飾決算”という言葉をタイトルに使っても問題はないということなのか。テレビ番組「相棒」シリーズの主人公、右京ではないが、細かいことが気になる。また、毎日新聞の論説委員が著書のタイトルに”粉飾決算”という表現を用いないのも釈然としない。

 安倍政権になってから、メディアはあからさまな政府批判を控えるようになっているのではないか。そうした気配が積み重なって、言論の封殺につながっていくおそれがある。それを憂うる。

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2016年2月21日 (日)

志賀・産業革新機構会長の会見に出席して

 産業革新機構という組織の名前を最近、よく見聞きするようになった。直近では、経営危機に直面しているシャープの再建策をめぐって、台湾の電子機器メーカー、ホンハイと並んで挙げられている。19日には、日本記者クラブの企画「チェンジメーカーに聞く」というシリーズの先頭を切って、志賀俊之会長が同記者クラブでスピーチをしたので、話を聞きに行った。

 志賀氏は日産自動車でゴーン会長に次ぐ経営トップだったから、その面でも、どんな話を聞けるか興味があった。

 感想の第一。スピーチの30分間、志賀氏は檀上に立って、歩き回り、手を大きく振ったりしていた。スクリーンには、細かい各種のデータ等が映された。二、三十年前のことだが、IBMなど米国の企業トップが日本に来て、会見したとき、彼らは檀上を歩き回りながらスピーチするのを初めて見て驚いたことを思い出す。日本人の経営トップにも、そうしたスピーチのやりかたをする人が少しだが、出てきた。

 感想の第二。産業革新機構の使命はというと、志賀氏は、「オープン・イノベーション」、つまり企業、事業の新陳代謝だという。それは大きく分けて再編・統合、ベンチャー育成、官民連携の3つだと述べた。

 再編・統合を掲げるのは、日本にはメーカー数が多過ぎて過当競争になっており、ROEが欧米の1/3~1/4と低収益になっているからだという。非コア事業を外に切り出す、次のコア事業を育成する、そのためにベンチャー企業を育成する、海外事業を買収してコア事業にする――そうした手を、業績が悪化する前に打つ。日本企業が勝ち続けるためには、それが必要であり、産業革新機構はそれを手伝うということのようだ。

 志賀氏によれば、グローバル競争の中で、日本企業は、事業の中身(ポートフォリオ)を見直し、入れ替えることが求められているが、どうしても不採算事業を抱えているために、徐々に地盤沈下しているという。

 事業統合などを行なうとリストラが行われる。だからといって、現状維持だと、いずれ、その事業はダメになる。日本は労働力不足になるのだから、生産性を上げて富をふやしていけばよい、と志賀氏は語った。

 感想の第三。事業再生に一番大切なことは、従業員の一人ひとりがやるぞ、という気になることだと同氏は言う。「From  Inside」だと。日産自動車の経営再建での経験を踏まえてのことだろう。講演にあたっての記念記帳では、「共感」と記した志賀氏は「共感の連鎖が起きるのを期待したい」とのコメントを付け加えた。

 最近、『読んで楽しむ”働くこと”』(相原正雄著)という本を読んだ。同書は、労働が西洋人には苦役だが、日本人にとっては価値あるお勤め、だというような話から始まって、日本は長期雇用、グループ主義、年功序列、企業別労働組合という長所を備えていると言う。日本企業の国際競争力に自信を持てと励まされるような気もするが、志賀氏が指摘する思い切った事業転換が遅れていることも否めない。

 春闘本番を迎えている。企業経営者も労働組合幹部も、大変革期に突入する覚悟を迫られているのかもしれない。

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2016年2月17日 (水)

すぐれた見識の琴奨菊に敬服

 昨日、日本記者クラブで開催された記者会見に、初場所で優勝した大関・琴奨菊が招かれた。日本人力士の優勝は10年ぶりということで、大いに話題を呼んだ関取の会見とあって、会見場に足を運んでみた。

 会見場に姿を現した大関はびっくりするほど体躯が大きく、堂々としていた。179cm、180kgというのは、こんな感じかと知った。

 質問に対しては、適切に答え、無駄がなかった。初優勝できた背景として、正月に休まず一番きつい稽古、トレーニングなどを行なったこと、昨年、入籍した夫人の支えや、若い付け人がきちんと稽古などのルーティンを支えてくれたことなどを挙げ、感謝の気持ちを表した。

 日本人力士がなかなか優勝できない理由を聞かれ、「相撲道」という固定観念がありすぎるのかも、と答え、勝とうという貪欲さが必要だと語った。立ち会いにおいて、当たりにいく角度を変えるとか、自分のペースに相手を巻き込むような相撲がとれるようにすべきだということらしい。それを琴奨菊は白鵬などの相撲の取り方から学んだという。

 「自分はアンパンマン」だとも言う大関は、「いろんなところから吸収する」、「人から教わったら、まず鵜呑みし、それから良い、悪いを相撲の中で判断する」と述べ、子供たちへのメッセージとして「あきらめず頑張ること。正面からぶつかって壁を乗り越えれば、楽しみ、周りへの感謝しかない」と語った。

 遅咲きの桜とも言うべき琴奨菊だが、真正面から相撲に取り組む、その精進ぶりは、角界の将来を担うだけの深みがあるように思えた。

 

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2016年2月12日 (金)

2015年度の国民負担率は過去最高に

 国民が負担する税および社会保障の国民所得に対する比率、即ち国民負担率の時系列データを財務省が12日発表した。それによると、2015年度実績見込みは44.4%と過去最高になるという。

 国民負担率は租税負担率と社会保障負担率とから成るが、租税負担対国民所得比は2015年度に過去最高の26.5%になる見込み。社会保障負担対国民所得比も同年度に17.9%とやはり最高になる見込みという。

 上記の国民負担率に財政赤字を加えた潜在的国民負担率というとらえかたもある。それだと、2015年度の実績見込みは51.1%で、過去数年ほぼ似た率で推移している。租税+社会保障負担の対国民所得比が増す反面、財政赤字の対国民所得比が低下してきたと読み取れる。 

 一方、同省は2016年度の見通しを示している。それによると、国民負担率は43.9%、潜在的な負担率は50.6%とわずかながら好転する見通しを示している。

 

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2016年2月11日 (木)

企業会計の視点で見た国の財政悪化

 財務省が3ヵ月ごとに発表する「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」によれば、内国債、借入金および政府短期証券の合計は2015年12月末現在で1044.6兆円だったという。ほかに政府保証債務が42.4兆円ある。普通国債、財政投融資特別会計国債などを合わせた内国債全体では902.2兆円(2015年3月末比20.7兆円増)に達した。

 一方、同省が1月29日に発表した2014年度「国の財務書類(一般会計+特別会計)」は企業会計の手法を参考にしたもので、異なる視点から国の財政実態を表している。

 まず、損益計算書に相当する2014年度の収支を見ると、税収などの財源合計が115.4兆円、費用合計が138.3兆円、単年度赤字に相当する超過費用が22.9兆円だった。また、貸借対照表にあたる資産合計679.8兆円に対し、負債合計1171.8兆円となっており、資産・負債差額がマイナス492.0兆円だった。

 一般会計と特別会計の2つを連結し、企業会計の考え方や手法にもとづいて作成された国家財政の数字を見ても、日本国の年間GDPに匹敵する500兆円近い赤字になっている。問題は、こうした危機的な実態を、与党の政治家が、安倍総理大臣の口癖のように”しっかり”と認識すべきなのに、していないことである。

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2016年2月 6日 (土)

従業員代表の経営参加を考える

 春闘のシーズンに入った。それに合わせて、安倍政権は同一労働同一賃金の実現をめざすとぶちあげた。一方、業績不振・粉飾決算の東芝が7千億円を超える損失を今3月期に計上する見込みというし、経営危機に直面するシャープを買収しようと、台湾の鴻海精密工業が総額7千億円規模の支援をシャープの経営陣に提案したという。

 デフレから脱し、格差社会を是正するにはどうしたらよいのか。また、日本経済を支える企業の強みとは、弱みとは何か?そうした本質的な問いが私たちに突き付けられているように思える。

 1年前に出版された『なぜ日本企業は強みを捨てるのか』(小池和男著)を読んだ。副題に「長期の競争vs.短期の競争」とある同書は、マクロの極端な経済政策に振り回されず、企業が長期の競争力を維持することが日本の経済発展につながると言っている。

 本書の論旨は「はしがき」にまとめられている。日本企業の強みは、長期の競争力を重視する慣行である。研究開発投資1つとっても見るべき成果を得るには10年はかかる。この長期重視こそが雇用を確保し、暮らしを支える。その長期の競争力の根源は人材とその育成であり、職場で工夫をこらし、経営方針にも発言する従業員の存在である。

 株主重視、ファイナンス重視の短期化に抗して、企業の役員会に従業員代表を参加させること、それこそが長期の競争力を強化する。従業員の参加はドイツなどEU内で行われているが、とりわけ、いまの日本に適した、効果の大きい方策ではないか、と本書の末尾で締め括っている。

 従業員の経営参加は、日本企業にとって望ましい方向だと思う。ただ、過去の日本企業の歴史を振り返ると、労使協調の内向き志向が行き過ぎて、企業の社会的責任が十分に自覚されなかったのを思い起こす。公害問題もその1つの表れだった。東芝の粉飾決算などからどのような教訓を汲み取るか。今後の日本企業のガバナンスの課題だろう。

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