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2016年4月28日 (木)

コラム「インフレは目指すべきものか」

 4月28日付け日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」は三菱UFJリサーチ&コンサルティング研究理事の五十嵐敬喜氏が書いている。見出しは「インフレは目指すべきものか」だ。

 書き出しは、「私はエコノミストだが、どうしても理解できないことがある。物価は上昇することが望ましく、下落するデフレはだめだとする考え方だ。だが、物価が上昇すれば経済は成長し、国民生活は向上するのか。」と。

 そして、末尾で、「物価が上がれば景気がよくなったり、生活が豊かになったりするのではない。物価は経済成長の結果として上がるものでなければならない。」と言っている。

 28日の日銀の政策決定会合では、2%の物価上昇という政策目標の達成時期を2017年度中に先送りした。五十嵐氏のコラムが指摘していることだが、ひたすら消費者物価上昇の数値目標を追い続ける日銀の金融政策が、本当に国民生活などにとって望ましいことか、わかりやすく説明してほしい。強くそう思う。

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2016年4月24日 (日)

女川町住民が復興の主役、映画「サンマとカタール」

 宮城県女川町はサンマ漁の大量水揚げと原子力発電所との2つで知られる。2011年3月11日に三陸沿岸を襲った巨大地震と大津波で死者・死亡認定者が830人余、住家は4分の3が全半壊した。町の中心部は壊滅した。その女川町が復興に邁進し、中心街が急ピッチで復興された過程を描いた映画「サンマとカタール  女川つながる人々」を試写会で観た。

 この女川には、中東の石油国、カタールが震災直後に設立した復興支援基金からの拠出20億円に基づいて、2012年のサンマ漁に間に合うよう突貫工事でつくられた巨大な冷凍冷蔵施設がある。この建設が希望の灯となって、町の産業、企業の担い手である若い世代が春の祭りを企画し、アイデアを一杯盛り込んだ復幸祭を成功させる。

 県などの役所に頼る復興ではなく、自分たちの町の未来を自分たちで切り拓こうとする姿は、中央依存でない地域再生のありかたを示唆している。

 高い防潮堤をつくったら、海が見えなくなる。女川町の人たちは、海がみえるのを優先し、商店街や住宅地は盛り土で高くした地域にまとめるという選択をした。

 映画は、そうした3.11以降の女川再生の取り組みを定点撮影で撮った映像で見せてくれる。貴重な記録である。

 女川町を含め、被災地はどこも復興に懸命に取り組んでおり、将来、それぞれ、復興策が適切であったか、歴史の審判に立たされよう。

 女川の場合、東北電力女川原子力発電所があり、そこからの税収で財政的にゆとりがあるので、復興策はそれを支えにしてつくられているようにみえる。それが将来、吉と出るか、凶と出るか。人口減少は同町も例外ではない。5年後に同町がどうなっているか、映画の続編を見たい。

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2016年4月21日 (木)

地震・火山噴火への心構え

 2002年に出版された石黒耀著『死都日本』は、じょうご型カルデラ火山の破局的な噴火を描いたもの。九州で起きた巨大な火山噴火で巨大かつ高速の火砕流が生じ、九州のみならず日本全体を破局に追い込んでいく。読んでいるときに、これほど興奮し、恐れ慄く気持ちになった小説はない。

 かつて鹿児島から霧島神宮へドライブしたとき、山中で湯気を発する地面をまじかに見たことがある。そのとき、薄い地べたが熱く、そのすぐ下に溶岩があるような気がした。比喩としては適切でないかもしれないが、板子一枚下は地獄、というような恐さを感じた。そのときの体験が、『死都日本』を読んだ際、恐怖心に拍車をかけたように思う。

 この著者、石黒耀さんが2007年6月のベイエフエム/ザ・フリントマトーンのゲストとして語った内容が、いま、熊本地震に直面して、改めて読んだら、いささかなりとも参考になるような気がした。(以下、手を入れた文章である。)

 「安全を考えたら、日本列島はほとんど住めない」、「火山噴火も地震も当然来ると思って生活していて当たり前。一つの環境だと思えばいい」、「国の予算にしても、噴火や地震を特殊なことと思っているから、そのときだけ臨時予算を組むということになる」、「したがって、毎年、組んでおけばいい」。

 こんなことも言っている。「九州には川内原発がある。ああいうところは、阿蘇などの火山が非常に大きな噴火を起こすと、火砕流で何十メートルも埋まってしまう。原子炉の炉自体は意外に丈夫かもしれないが、使用済み燃料貯蔵プールに火砕流堆積物が何十メートルも積もると、大爆発する。その場合、ボイラー爆発のエネルギーの何億倍です」。

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2016年4月11日 (月)

バイオ医薬品で増え続ける薬剤費

 高価な新薬が次々に誕生するうえに、高齢化が進んで、国全体の薬剤費は年々増えている。そんな厳しい現実を、財務省の財政制度分科会で配られた資料が示している。

 薬剤費の総額は2001年を100として、1年ごとにジグザグしながら増え続け、2012年は132.7になっている。平均伸び率は2.6%である。既存薬価の改定率は2001年を100として年平均3.2%下落して2012年の70.3にまで下がったが、新薬の相次ぐ投入が薬剤費総額を押し上げたわけである。

 2001年、世界売り上げNo.1の薬は66.70億ドル、No.2は64.49億ドルの規模だった。それが2014年には、No.1が129.02億ドル、No.2が124.10億ドルと2倍ぐらいに膨らんだ。15位同士を比べても、21.50億ドルが48.71億ドルと倍増している。その背景には、バイオ医薬品が有力な新薬として次々に登場してきたという事情が一つあげられるという。

 日本赤十字社医療センター化学療法科部長の国頭英夫氏の分科会での配布資料によれば、日本の肺がん患者は2015年に13万人いたと推定される。うち非小細胞肺がんは10万人強、少なく見積もっても5万人という。彼らに最新の分子標的治療剤を1年間投入すると、1人につき年間3500万円かかるので、トータルで5万人に投入すると仮定すると、それだけで1兆7500億円かかるとしている。ちなみに、国民医療費全体は40兆円を超えている。

 これらの数字はどれもピンと来ないので、資料を誤読しているのかもしれない。だが、技術進歩と国民の医療費負担などを総合的に勘案して、国民の健康を支える医療制度をどう構築するのがいいのか考えるのに、参考になるだろう。

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2016年4月10日 (日)

クレージーなふるさと納税

 ふるさと納税制度による寄付は総務省によると、2014年度に341億円に達した。前年度の2.4倍だという。

 納税者が居住地に納付している所得税・住民税の一部を別の地方公共団体に寄付すれば、寄付額から2000円を差し引いた分については納税額が少なくてすむ。一方で、寄付を受けた自治体はお礼として地元の特産品などを送るため、ふるさと納税は、寄付額の何倍もの金額に相当する贈り物を手にするもうけ話になってきている。

 その結果、お礼の品物をめぐって競争が過熱。華美なお礼をする自治体に寄付が集中する傾向にあるという。このため、ふるさと納税の2015年度は14年度の何倍にも達したのではなかろうか。

 しかし、このブログで指摘したことがあるように、いまや、この制度に大きな欠陥があることは誰の眼にも明らかである。4月9日の朝日新聞朝刊の投書欄にも、「ふるさと納税は根本的に改めて」と題する神奈川県の主婦の意見が載っている。

 「そもそも住民税は居住する自治体に納めて、行政サービスを受けるという対価性の強いもの」、「税収を奪われる都市部は行政サービスに支障が出るはず」、「万一、支障が出ないというなら、元の住民税が高すぎたことになる」と制度の矛盾を指摘している。

 寄付を受けた自治体は、お礼の品の調達、送付にかなりの費用がかかる。したがって、寄付額のうち、行政で有意義につかえる資金は相当少なくなってしまう。納税者の欲得に訴えるやりくちは、国民の品格を貶めると言わざるを得ない。大都市の税収を減らして地方に回すことが望ましいならば、まっとうなやりかたをとるべきである。

 安倍政権は財政難を国債の大量発行で切り抜けている。それなのに、目先の、カネをばらまく手口で国民の支持を得ようとしている。そうした矛盾を矛盾とも思わない自公政権の堕落を国民はいつまで許すのだろうか。

 

 

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2016年4月 8日 (金)

安倍政権の反知性主義を鋭くえぐった上村達男氏の書物

 『NHKはなぜ、反知性主義に乗っ取られたのか』(東洋経済新報社)を読み終えた。早稲田大学法学部教授で、2015年2月までNHKの経営委員だった上村達男氏が執筆したもので、公共放送の使命に照らしてNHKの経営上の問題点を抉りだすと同時に、その背後にある現代日本政治の反知性主義を鋭く突いた警世の書である。

 2014年1月に籾井勝人元三井物産副社長がNHK会長に就任して以後、公共放送の使命に即した統治(ガバナンス)が行われているのか疑わしい。著者は、この籾井氏の経営支配の実態を、守秘義務に反しない範囲で記している。

 それとともに、籾井氏を送り込んだ安倍政権の反知性主義政治を取り上げ、その問題点を厳しく批判している。同書の中で、最も強く印象に残った個所(192~196ページ)を以下に紹介しよう。

・『第三の矢といわれる日本再興戦略は、あまりにも広範な領域を「成長」「稼ぐ」「攻め」「成果」「工程表」といったきわめて単純な発想で割り切る点で、日本の歴史や文化、規律、規範といった視点を隅に追いやる一種の単純化されたお手軽な文化大革命とも言えるような様相を呈しているように見えます』

・『そこで取り上げられた諸分野である企業統治、医療、研究・教育、農業、労働、地域振興といった諸問題を含む一切の問題が、具体的数値目標の設定と、世界何位を何年までに実現するといった工程表の提示および遵守と一体の問題とされ、それを無内容な決まり文句であるPDCAサイクルで回すという単純発想によって、しかも閣議決定という圧力の下にひたすら追求されねばならないものとされています。とにかくすべてが「異次元のスピード」で実施すべきことだそうです。』

・『ここで指摘されていることは正しいに決まっているのだから、時間を区切ってすぐにも実行せよ、という思い込みが全編を貫いています。』

・『複雑な論点を含む問題を一個の角度からいかにも簡単に割り切る、それがもたらしうる弊害や、それはどのような価値を捨象しているのかといったことを考えずに、閣議決定という権力でどこまでも推進していくことが正しいのだ、という精神こそが反知性主義そのものと言うしかないのではないでしょうか。「異次元」とは一歩間違えると、ある種の破壊になるかもしれないという想像力の欠如がそこにはあります。』

・『いま、戦後の富国強「財」路線は、日本列島改造論を経てついに成長戦略のためには一切の事柄を「お国のため」に犠牲にせよと強いているのではないでしょうか。』『この先にあるものは、新たな「国破れて山河あり」であり、「軍事敗戦」に次ぐ「経済敗戦」なのではないでしょうか。』

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2016年4月 6日 (水)

世界の指導者らのタックス・ヘイブン利用を暴いた「パナマ文書」

 パナマの法律事務所の約40年にわたる内部文書が流出し、タックス・ヘイブン(税回避地)を利用して蓄財をしている世界の指導者やその親族、友人の名前が報じられている。タックス・ヘイブンを利用することは合法だが、資金の出所が賄賂や脱税などの違法行為に基づく場合には、当該国で捜査の対象になったり、釈明を求められることもありうる。プーチン大統領、習近平国家主席、キャメロン首相やアジアの首脳などの名前も出ており、その波及が注目される。

 税は、マネー移動を起こす重要な要因の一つである。企業も個人資産家も、節税や蓄財のためタックス・ヘイブンをさかんに利用しているらしい。だが、世界の多くの国が財政逼迫に苦しんでおり、課税逃れを抑えて税収を増やす必要に迫られている。米国のオバマ大統領も、先頃、巨大な製薬企業が節税のため、外国企業と合併して、本社を低税率の外国に移すという動きに反対した。

 一方、世界経済はグローバルなマネーの動向に振り回されている。主要国の金融政策のゆくえや巨大なファンドの資金運用がそれに密接に関わっている。

 また、外国との資金のやりとりに課税する国際通貨取引税(トービン税)を創設すべきとの声もかねてある。フランスが航空利用に課税する国際連帯税を創設したように、途上国援助を目的にマネー移動に対する国境税を、というわけである。

 マネーをめぐる問題はこのようにいろいろある。今回の情報リークを契機に、資金移動で悪用されがちなタックス・ヘイブンのありかたを国連で取り上げていくのが望ましい。

 今回の情報リークは、米国の外交文書に関するウイキリークスの情報量に比べれば桁違いに多い。そのため、リークされた情報を読み解くのに、世界の100以上にのぼるメディアの370人もの記者が手分けしたとされる。日本からは共同通信と朝日新聞が加わったという。電子化で新聞が斜陽化し始めた中で、このような共同作業ができたのは、メディアの今後の生き方にヒントを与えているように思われる。

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2016年4月 3日 (日)

国の連結財務データ(2014年度)も悪化

 財務省が国の財政データの1つとして、「連結財務書類」の2014年度分をこのほど発表した。国の一般会計、特別会計および独立行政法人等の三者を対象に、民間企業で言うところの連結貸借対照表および連結損益計算書にあたるものを作成した。

 2014年度末の連結貸借対照表を見ると、資産合計が932.1兆円。これに対し、負債合計は1371.5兆円。資産総額よりも、負債総額のほうが439.4兆円多かったというわけだ。また、負債の大口は公債の716.0兆円で、前年度より54.2兆円増えた。

 一方で、資産の部では、有価証券が39.2兆円、現金・預金が23.7兆円それぞれ増えている。このため、資産総額マイナス負債総額の赤字は2014年度は11.6兆円だけ縮小している。

 なお、連結損益計算書にあたるものとして連結業務費用計算書も発表された。それによると、2014年度の費用合計は162.3兆円で、民間の売り上げに相当する財源合計は154.0兆円(GPIFの資産運用益15.3兆円を含む)だった。超過費用は8.3兆円である。

 連結で見ても、国の財政状況は悪化するばかりである。 

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2016年4月 1日 (金)

赤字国債発行への歯止めが実質的に消滅

 日本国の財政は、借金が約1000兆円にのぼる。歳入よりも歳出のほうがはるかに多い、その差が積もり積もったためである。その足りないおカネは公債(国債)の発行や借入金で調達している。

 一方、戦前の財政放漫やそれに起因する猛烈な戦後のインフレの反省に立って、財政法第4条で、国の歳出に充てる財源は公債・借入金以外の歳入でなければならない、ただし、公共事業費などの財源については建設国債発行を認める、と規定している。

 しかし、不況に直面した1965年度に、特例公債法を定め、赤字国債の発行を認めた。赤字国債の発行は本来好ましくないが、財政を円滑に運営するため、例外措置として認めたものである。したがって、赤字国債を発行する場合には、単年度ごとに国会で審議し、特例公債法の成立をまって行なうという仕組みにしていた。

 それが、本日から始まった2016年度から20年度までの5年間については、与党提出の改正特例公債法が成立し、年度ごとにいちいち特例法を成立させるという手続きなしに赤字国債の発行が可能になった。

 政府与党にしてみれば、赤字国債を発行しなければ財政は成り立たない、毎年度、国会で審議するだけ時間の無駄だ、ということかもしれない。しかし、それだと、財政法第4条の歴史的意義をないがしろにしているように思える。

 安倍内閣は財政健全化を口にはするが、実際には、あれこれバラマキをしたり、消費税引き上げを先延ばしするとも受け取れる発言をしている。歳出増の新規政策には熱心だが、財政再建に本気で取り組む姿勢はうかがえない。改正特例公債法の成立は、もっと批判されてしかるべきだろう。

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