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2016年4月 8日 (金)

安倍政権の反知性主義を鋭くえぐった上村達男氏の書物

 『NHKはなぜ、反知性主義に乗っ取られたのか』(東洋経済新報社)を読み終えた。早稲田大学法学部教授で、2015年2月までNHKの経営委員だった上村達男氏が執筆したもので、公共放送の使命に照らしてNHKの経営上の問題点を抉りだすと同時に、その背後にある現代日本政治の反知性主義を鋭く突いた警世の書である。

 2014年1月に籾井勝人元三井物産副社長がNHK会長に就任して以後、公共放送の使命に即した統治(ガバナンス)が行われているのか疑わしい。著者は、この籾井氏の経営支配の実態を、守秘義務に反しない範囲で記している。

 それとともに、籾井氏を送り込んだ安倍政権の反知性主義政治を取り上げ、その問題点を厳しく批判している。同書の中で、最も強く印象に残った個所(192~196ページ)を以下に紹介しよう。

・『第三の矢といわれる日本再興戦略は、あまりにも広範な領域を「成長」「稼ぐ」「攻め」「成果」「工程表」といったきわめて単純な発想で割り切る点で、日本の歴史や文化、規律、規範といった視点を隅に追いやる一種の単純化されたお手軽な文化大革命とも言えるような様相を呈しているように見えます』

・『そこで取り上げられた諸分野である企業統治、医療、研究・教育、農業、労働、地域振興といった諸問題を含む一切の問題が、具体的数値目標の設定と、世界何位を何年までに実現するといった工程表の提示および遵守と一体の問題とされ、それを無内容な決まり文句であるPDCAサイクルで回すという単純発想によって、しかも閣議決定という圧力の下にひたすら追求されねばならないものとされています。とにかくすべてが「異次元のスピード」で実施すべきことだそうです。』

・『ここで指摘されていることは正しいに決まっているのだから、時間を区切ってすぐにも実行せよ、という思い込みが全編を貫いています。』

・『複雑な論点を含む問題を一個の角度からいかにも簡単に割り切る、それがもたらしうる弊害や、それはどのような価値を捨象しているのかといったことを考えずに、閣議決定という権力でどこまでも推進していくことが正しいのだ、という精神こそが反知性主義そのものと言うしかないのではないでしょうか。「異次元」とは一歩間違えると、ある種の破壊になるかもしれないという想像力の欠如がそこにはあります。』

・『いま、戦後の富国強「財」路線は、日本列島改造論を経てついに成長戦略のためには一切の事柄を「お国のため」に犠牲にせよと強いているのではないでしょうか。』『この先にあるものは、新たな「国破れて山河あり」であり、「軍事敗戦」に次ぐ「経済敗戦」なのではないでしょうか。』

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