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2016年5月27日 (金)

企業経営者の報酬は高い? 安い?

 ソフトバンクグループのニケシュ・アローラ副社長が2015年度に得た報酬は80億円ちょっとだったという。同年度に孫正義社長の報酬は1億3千万円だったそうだ。アローラ副社長は入社した2014年度には契約金等で約165億円の報酬があったという。

 武田薬品工業、資生堂など、外国人の経営者を雇った会社は、役員報酬が外国人と日本人とでは大きく違う。日本人社長よりポストが下の役員でも、外国人だとはるかに多額の報酬を受けている。

 富岡製糸場などもそうだが、明治の日本では、お雇い外国人の報酬は桁違いに日本人より多かった。技術などを教える立場と教わる立場とでは報酬のレベルが全く異なる。それが当たり前だった。

 では、現代日本の大企業の役員報酬が邦人と外国人とで極端に違うのはどういうわけだろう。個人的な考えだが、グローバル企業を経営することができる人材かどうかが決め手ではないか。世界のあちこちに事業を展開しているビッグビジネスのリーダーは、コミュニケーション能力、事業経営能力、先見性など、さまざまな能力を具備した人物が望ましい。また、企業として、そうしたエリートを育てる仕組みも不可欠である。

 日本では、若いうちから選別して幹部候補を育成するというやりかたをしてこなかった。それを早期育成へと切り替えることがよいかもしれない。もっとも、同じテンポで昇進し、長く競わせる人事政策の良さも捨てがたい。ただし、近年、転職が増えているので、それが有効かどうか。

 ところで、庶民には手の届かない巨額の報酬を得た経営者は、そのカネをどう使うのか、貯めるのか。人の懐具合を云々するのは好ましくないが、一握りの金持ちが世界中の富の何割かを占めているのは見過ごせない。事業であれ、スポーツであれ、まっとうにそれによって巨万の富を得るのは非難されることではないが、彼らの富の使い方は、自分のためだけでなく、社会のためになることが望ましい。

 先日、ノーベル賞受賞者の大村智博士(北里大学特別栄誉教授)の講演を聴いた。画期的な熱帯病治療薬の研究開発に貢献した同氏は、産学連携研究の仕組みを使って特許のロイヤリティが受け取れるようにした。その収入は研究資金や人材育成に充てられるほか、病院開設・運営、美術館開設・運営などに投じられている。

 講演の中で、博士は、明治時代の政治家、後藤新平の言葉「金を残すのは下、仕事を残すのは中、人を残すのは上」を紹介、それを人生訓にしていると語った。億万長者には、大村博士の爪のあかを煎じて飲むよう勧めたい。

 

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伊勢志摩サミットを消費増税再見送りに利用した安倍首相

 G7伊勢志摩サミットが終了した。おもてなしを大事にする日本の慣習で、警備を含め、最大限の歓迎体制だった。サミット関連に要した費用はいくらだったかと問うのはヤボかもしれないが、災害復興、景気テコ入れなどで大盤振る舞いが当たり前になっている安倍政権のことだから、気になる。

 5月14日のブログ「消費増税再見送りの安倍首相」で、「一番、財政危機に直面している日本が、サミットの会合で財政出動を強調するのは喜劇としか言いようがない」と指摘した。ドイツなどが財政出動に否定的であるにもかかわらず、サミット本番でも、日本はリーマン・ショック再来を想定した機動的な財政出動を唱え、合意事項に盛り込ませた。主催国日本がそれほどまでに言うなら、認めよう、ただし、自国の財政運営がそれに拘束されるわけではない、というのが参加各国の本音ではないか。

 サミットはG7が直面する他の問題も取り上げている。しかし、今回、日本は、アベノミクスがうまくいかなかったのを世界経済のせいにし、自らの失政を、さらなる赤字国債の積み重ねで糊塗しようとしているとしか思われない。国内政治面での思惑がのぞき見える。

 日本経済新聞の27日付け朝刊の談話で、河野龍太郎氏(BNPパリバ証券チーフエコノミスト)は「年初より世界経済のリスクは和らいでいる」、「日本経済は完全雇用の状態にあり、企業業績も良い。成長がもたついているのは潜在成長率の低さが理由だ」、「金融や財政政策は循環的な不況の際に繰り出すべきであり、停滞懸念があるという理由で実施すべきではない」と指摘。「財政出動で国際協調をめざすことを、国内で消費増税を先送りする説明にしたいという構図だ」と真相を見抜いている。

 

 

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2016年5月22日 (日)

温暖化もたらす大気のCO2濃度が400ppm超える

 日本の温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」が観測する地球大気全体の月別二酸化炭素平均濃度が、昨年12月に400.2ppmとなり、初めて400ppmを超えた。ことし1月までの暫定的な解析の結果だが、地球温暖化の進行速度が落ちていないことを示すものだろう。

 これは宇宙航空研究開発機構(JAXA)や環境省などが発表したもので、21日の日本経済新聞夕刊によると、「今の増加ペースでは、あと20~30年で450ppmに達してしまう」(横田達也国立環境研究所フェロー)という。そんなスピードで濃度が上がり続けたら、人類や社会は危機に直面することが必至だ。

 世界は昨年12月、温暖化防止のためのパリ協定をまとめることができた。批准はまだだが、そこには、21世紀末までの気温上昇を1.5度までに抑えるという意欲的な目標を盛り込んだ。しかし、参加各国がそれぞれ自主的に削減目標や実施方法を掲げ、その実現に努めるという緩やかな排出削減策にとどまっている。

 しかし、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の報告によれば、18世紀の産業革命以前と比べた気温上昇を2度以内にとどめるためには、大気中の二酸化炭素の濃度を450ppm以下にとどめる必要があるという。一度、450ppmを突き抜けると、温暖化が加速して、元に戻ることは難しく、人類の生存は困難になる可能性が大きいと思われる。

 21世紀の末まで、人類が平和に存続できるか、疑わしい。400ppm突破は、そうした悪夢が現実化する可能性が大きいことを教えているように思う。

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2016年5月20日 (金)

財政審の建議の読み方

 財務省の財政制度等審議会が5月18日に『「経済・財政再生計画」の着実な実施に向けた建議』を発表した。「経済・財政再生計画」は2015年6月に閣議決定された。2020年度の国・地方の基礎的財政収支を黒字化し、その後、債務残高対GDP比を安定的に引き下げるという健全化目標の堅持を表明した。

 安倍政権は近く開催されるG7伊勢志摩サミットにおいて、参加各国が財政主導の経済発展を進めることで合意するよう、これまで働きかけてきた。しかし、G7の中で最も財政状況が厳しい我が国が、率先して財政主導の経済発展を唱えるのは、どう見てもおかしい。野党までもが消費税を2%分引き上げるのを再度先延ばししようとするなど、日本の財政危機は一層深刻化しかねない。

 そうした中で、財政を担当する官庁の財務省としては、安倍首相ら自公政権の財政運営に婉曲に懸念を表明したのが今回の建議ではないか。それを示す文章を以下に紹介する。

・我が国は、各国よりも厳しい財政状況にあるにもかかわらず、各国より緩い財政健全化目標を設定している状況にある。この状況を踏まえれば、我が国が各国以上に、計画に沿って財政健全化に向けた取り組みを着実に進めていくことは当然である。

・経済ショックは繰り返されるものであり、想定外の事象が発生したとしても、(財政健全化への)取り組みを後退させることなく、(財政構造改革や財政健全化などの)計画を着実に遂行していく必要がある。

・想定を上回る税収が得られる場合には、歳出増に充てるのではなく、債務削減に充てるのが原則であることも確認された。このような対応により、財政面での「貯金」をすること、即ち財政収支の改善を前倒しで実施することは、将来起こり得る経済ショック等に対して適切な経済対策を打つ余力を確保することにつながる。

・平時に堅実な財政運営を行なわないことのコストがいかに高いものであるかは、ギリシャの例がよく物語っている。

・資産売却収入は原則として債務償還に充当すべきであり、政府として取り組むべき重要課題に対する追加的な財政需要については、歳出改革により財源を賄うことで対応すべきである。

・経済成長のみでは財政健全化は成就しない。同時に、財政健全化のためには、経済成長も重要な要素である。

・財政状況が厳しい我が国においては、経済再生に向けて財政出動のみに依存せずに、聖域を設けることのない構造改革の取り組みを一段と加速していくべきである。

 以上、もっともな内容ばかり。建議のごく一部分を紹介したに過ぎないが、財務省が審議会の建議という形をとって、アベノミクスに対して厳しい批判(というか不満?)を展開していることがわかるだろう。

 

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2016年5月14日 (土)

消費増税再見送りの安倍首相

 本日(14日)の日本経済新聞は一面トップで「首相、消費増税先送り  地震・景気に配慮」と報じている。同紙はまた、安倍首相が政府・与党幹部に増税見送りの方針を伝えたと書いている。首相は、2014年11月に「再び延期することはない。はっきり断言する」と言い、その後は「リーマン・ショックや大震災のような事態が起きない限り、予定通り増税する」と断言していた。

 振り返ると、政府・与党は消費税を5%から10%に引き上げる予定だったのを、まず3%分だけ上げ、次に残り2%分を上げるという2段階方式にした。そして、残り2%分引き上げの実施が近づいた段階で、これを2017年4月に延ばした。今回、さらに、これを先送りする意向を固めたわけである。

 政治家は二枚舌どころか何枚も舌を持っているらしい。しかし、総理大臣たる者が自分の都合のいいようにその場しのぎの発言を繰り返していたら、国民の政治不信を強める一方にならないか。

 国内経済について、安倍首相はアベノミクスなるものをぶち上げた。その中身は、日銀のゼロ金利、国債大量買い上げや、大幅な財政赤字による歳出の大盤振る舞いが中心で、経済構造の改革はほとんど行われなかった。社会保障の重要な財源と目されていた消費税の引き上げも、政府・与党が国政選挙や地方選挙に及ぼす影響を懸念したため、先延ばしが続いている。選挙は毎年のようにある。いちいち、それに政府・与党がびくついていたら、適時的確な政治は行われない。安倍首相は当面の選挙に勝つことを重視しすぎる。そして財政危機の深刻さに対する認識を欠いているとしか思えない。

 伊勢志摩サミットを控えて、安倍首相は欧米を回り、各国首脳と会談し、財政出動による需要喚起などを訴えた。しかし、財政の健全性を重視するドイツなどは財政出動に対して首をタテに振らなかった。一番、財政危機に直面している日本が、サミットの会合で財政出動を強調するというのは喜劇としか言いようがない。それもこれも、国債という”打ち出の小槌”がいくらでも使えると誤解しているからではないか。

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2016年5月 4日 (水)

「勤務間インターバル規制」の法定を、ただし助成金は無用だ

 5月4日付け日本経済新聞によれば、厚生労働省は、従業員が退社してから次に出社するまでに一定時間を空ける「勤務間インターバル規制」の導入を促すため、制度を導入する中小企業に助成金を出す方針だという。

 深夜残業、早朝出勤などによる長時間労働は労働者の健康や家庭生活に悪影響を及ぼすおそれがある。そこで、EUでは1993年にインターバル規制を導入し、退社から次の出社まで11時間の間隔を設けるように義務づけた。我が国では、これまで、一部の大企業が労使交渉により、このインターバル規制を導入しているが、厚労省は就業規則にインターバル規制の導入を明記した中小企業に対して最大100万円の助成金を給付することを考えているようだ。

 長時間労働はワークライフバランスを崩す。労働者の健康を損ねたり、家族との生活を不安定にする。このため、一日当たりの労働時間や週労働時間などに上限を設けるのは不可欠である。また、退社後、十分に休息などをとって次に出勤するまでの時間を十分に確保することを目的とするインターバル規制も法定するのが当たり前だろう。

 ところが、日本経済新聞の報道によると、「ニッポン総活躍プランに、この制度の普及を目指すと盛り込む。厚労省は現段階で義務化を考えておらず、助成金で導入を促す」とある。過労死、過労自殺など深刻な労働問題が起きているにもかかわらず、インターバル規制を法律で義務付けることを避けているわけだ。働く者の人権を擁護するのは行政の当然の義務なのに、カネで釣るという形の中途半端な労働行政にはあっけにとられる。

 残業規制を労使の協定で形骸化できるというケースもそうだが、厚労省は基本的人権の擁護については腰が引けている。

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2016年5月 1日 (日)

女性や子供向けに財政問題を訴え始めた財務省

 財務省が4月中旬に、財政学習教材『日本の「財政」を考えよう』を発表した。国の役割や活動を「財政」という視点からとらえ、先進国の中で最悪の日本財政をこれからどうすべきか、を理解してもらうのがねらいらしい。財政問題を自分のこととしてとらえるよう求めている。

 また、4月下旬、財務省は、財政制度等審議会財政制度分科会を使って、「国の財政の未来を考える女性の集い~次の世代への橋渡し」を催した。財政審委員が講師となった。

 まず、国の財政の現状を紹介し、次に、市場における日本国債の評価などを説明。そして、社会保障給付費の増大が日本の財政を圧迫し、財政赤字が膨らんでいるため、受益と負担とを踏まえ、消費税の引き上げが不可欠であるとしている。

 政府・与党は選挙を意識して、消費税などの増税をいやがる傾向が強い。財政赤字を国債発行で補うのを、あたかも”打ち出の小槌”のように思っているようにみえる。また、霞が関の中では、財務省以外のどの官庁も、歳出増をよしとしている。しかも、日銀が市場から国債を大量に購入しており、それが目先、国債の値崩れを防ぐ役割を果たしている。

 このため、先進国の中で群を抜いて悪化している日本の財政が健全化に向けて大きく反転するような事態は起きそうにない。財務省の上記の動きは、そうした情勢が背景にあるのではないか。

 

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