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2016年11月29日 (火)

健康保険の薬価は高すぎるのでは

 厚生労働省は2017年度の社会保障予算の伸びを抑えるため、高齢者が外来や入院で負担する医療費の月額上限を引き上げようとしている。国の予算の一般歳出のうち、圧倒的なシェアを占めるのが厚生労働省の所管する社会保障関係分である。だから、患者の自己負担を増やすのは、その程度にもよるが、財政健全化のためには必要である。

 しかし、健保制度の要である薬価の水準や、薬価の決め方については、問題があるといわれてきた。製薬会社の利益率がずば抜けて高いこと、与党に対する製薬業界からの政治献金が多いこと、患者の薬漬け、医薬分業による調剤薬局の過剰などは、そうした例である。

 『週刊現代』12月3日号は「薬の値段がおかしい」と題して、上昌弘・川口恭の両氏の対談を掲載している。その中で、厚労省管轄の中央社会保険医療協議会(中医協)が薬価も診療報酬も決めており、中医協は「医療業界の利益を確保することを第一に考えている」と指摘している。

 医者も病院も、高い薬を処方すれば、薬価差益が増えるので、当然、値段が高い薬を処方したがる。公的保険で強制的におカネを吸い上げている医療業界が「お手盛りで医療費を膨らましていいのか」と批判している。そして、健康保険組合が医療費など制度の問題点を追及すべきではないかと言っている。

 この対談では、国民が見落としがちな制度の欠陥を指摘している。①肺がんにも使うオプジーボは今年2月の時点で薬価を再計算するルールがあるのに厚労省は実施しなかった。②米国には、医師への利益供与の情報を公開しなければならない制度(サンシャイン法)があるが、日本では任意にとどまる。監視者がいない。③国の予算は国会で審議されねばならないのに、新薬は枠外とされる。新薬で増えた費用を国は無条件で医療費に組み入れる。④健保制度は、外国籍でも住民票があれば加入できる。外国の肺がん患者が日本の健康保険で治療を受けようとすれば可能だ。

 厚労省は健康保険制度をがっちり守っていけると思っているのだろうが、ほころびがあるということがわかる。

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2016年11月28日 (月)

フクシマの賠償、廃炉等の費用20兆円超!

 11月27日の日本経済新聞朝刊はトップ記事で、東京電力福島第一原子力発電所の事故による賠償、除染、廃炉などの費用が20兆円を超えると経済産業省が推計していると報じた。従来、政府は11兆円と想定していたから、倍近い増加である。

 この後始末費用がいくらかかるかについては、今月6日のテレビ「NHKスペシャル」が従来の推計を大きく上回る13.3兆円に達すると伝えたばかり(本ブログの11月7日付け「フクシマ:賠償・除染・廃炉の重い負担」を参照)だ。それだけに、政府の想定の2倍近い金額には驚かざるをえない。

 日経によると、新たな推計は、賠償が8兆円、除染が4兆~5兆円、中間貯蔵施設1.1兆円、廃炉は従来の2兆円が「数兆円単位で上振れ」としている。

 廃炉については、いまなお技術的に試行錯誤の段階にあるうえ、作業が30~40年かかるため、その費用がいくらになるか定かでない。したがって、新たな推計の20兆円超も、単なる目安にすぎず、もっとカネがかかることも十分ありうる。

 そして、厄介なのは、その費用を東電だけでは背負いきれないことだ。誰がどう負担するか。その問題は、今後、日本社会の抱える深刻な課題である。

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2016年11月26日 (土)

常磐線復旧のため放射能の除染が続いている

 東京電力福島第一原子力発電所のメルトダウン事故が起きてから5年8か月余。放射能汚染でJR常磐線はいまだに全通していない。この鉄道復旧の作業はいまも続いている。一部開通したというニュースは小さく、国民は放射能汚染の問題はもう片付いたように過去のことと思っているのかもしれない。

 最近、この鉄道復旧作業を視察してきた人の話を聞いた。竜田~小高の37kmが未開通で、そのうちの富岡~浪江の21kmが2020年に開通すると、全線復旧となる見通しとされる。しかし、富岡~浪江間は白い防護服やマスクをつけた作業員が除染作業に従事している姿を見たという。視察に行った人たちも、ちょっと線路から離れると、高い放射能を検知したという。

 近くに国道があり、クルマがたくさん行き交っていたが、鉄道の線路から勝手に国道に行けないように柵がしてあったそうだ。また、この富岡~浪江間では、周辺は高い放射能で、人は住めない状態だとも言っていた。

 東電福島第一原発の核燃料が溶融し、周辺の環境中に核物質が飛散した。その後始末に、当事者の東電が四苦八苦している。周辺地域の住民は塗炭の苦しみを味わっている。ひとたび原発事故を起こしたら、いかに危機的な状態になるか。経済的にも大きな負担を長い将来にわたって背負うことになる。見てきた人の感想でもある。

 東電は、どうして「福島」原子力発電所と名付けたのかーーと嘆く住民もいると聞いた。福島県全体が、このマイナス・イメージをずっと背負っていかなければならないからだ。

 こんな話を聞くと、原発の罪の深さをつくづく感じざるをえない。

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2016年11月19日 (土)

財政審の予算編成建議に見る危機意識

 財務省の財政制度等審議会が17日、「平成29年度予算の編成等に関する建議」をまとめ、発表した。国の財政を預かる財務省は借金等に依存しすぎない健全財政をよしとしているが、現実の国家財政は、それとはほど遠い。このため、建議では、平成29年度の予算編成についても前年度までと同様の問題点を書き連ねている。

 建議は、①過度に楽観的な経済成長見通しのみに頼って、財政健全化努力の重要性を軽んじてはならない、②需要喚起を目的とした景気循環安定型の財政政策から、生産年齢人口の減少や潜在成長率の伸び悩みに対応した供給側の構造改革に重点を移せーなどと政府に訴えている。また、平成31年10月に消費税率を確実に引き上げるよう求めているほか、利払費を含めた財政収支の改善を唱えている。

 このほか、建議は、歳出の主要分野である社会保障の改革についてさまざま指摘しているし、地方財政の歳出の適正化についても取り上げている。

 安倍政権は国債の大量発行や日銀の極端な金融政策などに支えられた”アベノミクス”で日本経済のデフレ脱却を図ってきた。平成29年度国家予算の編成も、その延長線上に行なわれそうだ。財政審の建議は、そうした情勢に対して”金庫番”の立場から異を唱えたものだ。

 建議では、「2020年代半ばまでに政府債務残高が民間金融資産残高を上回るとの試算もある」という。また、財政健全化に向けて最大の課題は社会保障分野だとし、「2020年代に団塊の世代が後期高齢者となり始める」と指摘する。国の債務は平成27年度末で1110兆円である。グローバル経済の厳しい状況のもと、日本経済が放漫財政を続けていたら、財政破綻リスクは高まる一方だろう。

 

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2016年11月17日 (木)

熊本、水俣、知覧への旅

 先週の後半、ひさしぶりに九州に行った。ドナルド・トランプ米次期大統領の政策、人事や、博多駅近くの道路陥没などの出来事がメディアをにぎわせていた時だ。

 熊本では、飛行場に着陸するまでの上空から見ると、青いビニールのおおいがかかっている家が点在していた。市内では、熊本城が地震による痛ましい姿をさらしていたが、JR在来線の熊本駅そばに住む知人のマンションも、号室によっては、長い亀裂など痛々しい被災状況を呈していた。行った翌日も、熊本市などで余震があった。

 次の日は水俣病で知られる水俣市やチッソなどを訪ねた。チッソの水俣工場の汚排水にメチル水銀が含まれ、それが魚を食べることを通して水俣病を引き起こした。患者の発生が公式に確認された1956年から実に60年も経ったが、患者の認定、補償などで今日にいたるまで水俣病の問題は続いている。

 今回、工場排水を放出する百間排水口、患者がたくさん発生した茂道漁港、水俣湾のヘドロを浚渫し埋め立ててできた公園(慰霊碑などがある)、患者、川本輝夫氏が創設した水俣病歴史考証館、そしてチッソの工場を訪れた。工場では、会社の経営についての説明を聞いた。また、考証館では、チッソに勤めていた父親が、水俣病が公式に確認される前に発症し、亡くなったという女性から、いきさつなどを聞いた。

 水俣では、チッソの地元経済、政治に対する影響力が強い。漁民や患者は水俣市の周辺に多い。そうした違いが水俣病をめぐる住民意識の相違をもたらしているという。眼に見えない対立を解消するためになすべきことが多々あるように思った。”もやい直し”と講話の女性は言っていたが、何よりも、企業の社会的責任という観点で、チッソが自らの非を深く反省し、地元の融和に取り組むことが必要ではないか。

 60年も経てば、当事者はほとんど会社にいない。したがって、冷静に企業の社会的責任を突き詰め、水俣市の負のイメージを拭い去ることができるのではないか。

 旅行の3日目に鹿児島の知覧を訪れた。特攻平和会館と武家屋敷とがある。武家屋敷は庭を観光客に見せる家が数軒あり、薩摩の地方武士の暮らしの一端を垣間見ることができた。特攻平和会館は40分程度しかいられなかったが、大勢の人が来ていた。特攻の理不尽さは誰の目にも明らかだが、それがなぜ実行されたのか、私たちはそれを二度と繰り返してはならないという覚悟ができているのか、気になった。

 海外派遣の陸上自衛隊に「駆けつけ警護」を新たな任務として付与する15日の閣議決定は、他国軍との交戦や日本国内テロなどにつながっていくおそれがある。徐々に、徐々に、平和国家、日本の形が崩れていくおそれがあるのではないか。

 『戦艦大和ノ最期』の著者、吉田満は島尾敏雄との対談『新編 特攻体験と戦後』の中で、「あの時、終戦の混乱の中で、一ぺんに、いろんなことが全部捨てられた。日本人は世界の中でどう生きるか、どんな役割を果たそうとするのか。そんな問題もいっさい棚上げされてしまった。なにかそこに重大な欠落があったんじゃないかという感じが、三十数年間続いているということなんです」と語っている。

 岐路と気付かずに、私たちはいま、ゆっくりと曲がっているのではないか。どっちがどうともほとんど気付かずに。

 

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2016年11月 7日 (月)

体温計の目盛りを変えてごまかすようなことをやってきた

 野村証券副社長、日本取引所グループ最高経営責任者など資本市場で重要な役割を果たしてきた斉藤惇氏。朝日新聞の連載インタビュー『「市場の時代」道半ば』が7日付け第16回で終わった。最終回の見出しは「歪み正し市場いかせ」だった。

 「資本市場では、株価や金利が生産性や成長性などで合理的に判断され、値決めされる。企業も事業ごとの現金収支など合理的な数字をもとに経営するから本当の競争力がつく。経済全体でも、資本市場を中心に据えた国は効率性をもとづいた取引がされているから、生産性が高くGDPも増えている」――斉藤氏の基本的な認識はこれだ。

 それに比べ、日本は市場重視とは逆だ。景気対策として、株価の買い支えを考える政治家もいるという。「市場は失敗した時や非合理的なことには痛みを与えるから教訓になるのだ。熱があると市場が教えているのに、体温計の目盛りを変えてごまかすようなことを続けると、本当に取り返しのつかないことになる」と指摘する。

 市場経済は富の創出では一番いいシステムだが、格差拡大を引き起こす。だから、政府の再分配政策で配分の歪みを是正する必要がある。それによって、誰もが市場経済がいいものと感じるようにすることができる。斉藤氏はそう考える。

 いま、「国債がこれだけ増発されているのに、「金利ゼロ」という嘘のような世界になっている」。日銀は国債を大量に購入しているが、それは価格形成を歪め、市場機能を阻害している。社会も、財政などをなんとかせねばと本気で考えることをしない。そうした斉藤氏の指摘には素直にうなずかざるをえない。

 日本の企業は間接金融のウエートがまだ高い。また、家計の資金運用も、預貯金や国債などの安全資産がほとんどだ。これでは経済が活性化しないと斉藤氏は言う。

 ”アベノミクス”は斉藤氏の意見とは180度違うと思う。そうした面からも、斉藤氏のインタビューは意義が大だ。

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フクシマ:賠償・除染・廃炉の重い負担

 テレビ放送「NHKスペシャル」の「原発・廃炉への道」(11月6日)は賠償、除染、廃炉の3つの費用を足すと13.3兆円に達するという独自の推計を挙げた。内訳は、賠償が6.4兆円、除染は最低4.8兆円、廃炉は2兆円といい、合計の7割以上を電気料金と税という形で国民が負担することになる、と指摘した。

 また、すべての廃炉作業を終えるのに40年を見込んでいるが、そもそも1号炉の核燃料が溶け落ちたもの(デブリ)を取り出す作業は難航しており、2017年度の予定が2020年度に先送りされた。1号炉~4号炉などの廃炉で実際にかかる費用も2兆円の数倍になろうと予測している。

 東電の総資産は13.8兆円で、廃炉費用全体が同じ程度だとすれば、東電は確実に倒産する。原子力事故の事業者責任として東電が賠償、除染、廃炉の費用全体を負担するという、もともとの法の建て前を貫こうとすれば、東電が事業を継続することは不可能である。

 このため、国は損害賠償支援機構法を制定し、東電が賠償するために必要な資金を国がすべて供給する仕組みを設けた。そして、国は提供した資金を回収するため、保有する東電株式を売却して値上がり益を得るとか、東電および他の電力会社に利益の一部を負担金として納めさせる仕組みなどを設けたりしている。

 東電は天災などによるものとして免責を求めた。これに対し、国は事業者責任を前提とし、電力の安定供給や原発の運転再開などを踏まえ、死に体の東電を生かし続けることが望ましいと判断した。そのためには、ユーザー、国民に原発のツケを払ってもらうしかない。そういう国の方針が読み取れる。

 この番組で知った事実の1つは、廃炉作業には毎日7千人が従事しており、危険手当は1人2万円/日、つまり1日に1億円以上かかっていることである。

 また、除染作業で収集された放射能汚染物質を袋に入れて各地で保存集積しているが、その袋が劣化して包装し直したりしているという。こうして新たな費用が発生したりしている。

 フクシマの後始末は、緊急性があるため、ややもすれば、糸目をつけずにカネを払うことになりがち。それが積もり積もれば、膨大な費用負担を招くおそれがある。

 日本経済は”アベノミクス”なるもので、財政および金融面から強引にテコ入れしてきたが、その効果は小さい。最近では異常な金融緩和政策からの出口があるかが問題にされるようになった。そして、フクシマも日本経済の足を引っ張っている。これでは、明るい展望を国民がなかなか持てないのも無理はない。

 

 

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2016年11月 4日 (金)

TPPよりパリ協定を優先すべきでは

 11月4日の衆議院特別委員会はTPP(環太平洋経済連携協定)の承認案と関連法案を強行採決した。まだ審議がつくされていないと主張する民進党、共産党などの反対を自民党などが押し切った。TPPを主唱してきた米国が、大統領選で、トランプ、クリントンの両候補ともTPPの内容に反対の意向を表明しているように、今後、TPPの内容が見直される可能性がある。それなのに、日本政府として、いまのTPPを推進するというのなら、議会で、国民にわかりやすく全容を説明し、国民の納得を得るように努めるべきだろう。

 ところで、地球温暖化に歯止めをかけるためのパリ協定が4日に発効したが、日本政府は国会での協定の批准を終えていない。TPPも重要な問題だが、国会議員はパリ協定の歴史的な意義がわかっていないのではないか。人類の将来を大きく左右する地球温暖化防止対策で日本が世界の先頭に立つという意気込みがうかがえないのは情けない。

 温室効果ガスの排出量で世界第5位の日本は、京都議定書などで知られるように、環境問題の先進国とみられていたこともある。しかし、いまの安倍政権は地球温暖化を含む環境問題には関心が乏しいようにみえる。企業や家庭の環境問題への取り組みも依然ほどではなくなっている。

 

 

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