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2017年1月31日 (火)

民主主義の米国に出現した独裁者

 2017年1月は、米国および世界が大きく暗転し、深い傷が残った時期の始まりとして歴史に刻まれよう。オバマのあとに就任した米国のトランプ大統領は、立て続けに大統領令なる”印籠”を振りかざして、次々に新たな政策を打ち出した。

 民主主義国家は司法、立法、行政の三権分立を基本としており、新聞などのメディアが言論の自由を裏打ちしている。トランプ大統領はそうした民主主義国家の枠組みを全く無視しているようにみえる。

 トランプ氏は、新たな政策をツイッターで発信する。そして、自分のやりかたに反対する人、組織、メディアなどの言い分を聞こうともせず、一方的に歪んだ見方で叩く。メディアへの不信感が強く、批判的なメディアをつぶせとまで言う。米国は民主主義の元祖みたいに思われていたが、民主主義くそくらえと言わんばかりの独裁者誕生である。ヒトラーもこれほどひどくはなかったように思う。

 新大統領の経済政策は、米国で売る物は米国で生産せよ、とか、雇用を増やせ、といったもの。国境を超えてモノ、カネ、人、情報が行き来しているグローバリゼーションの実態をまるでわかっていない。世界の貧しい人々や、戦争で平穏な暮らしを奪われた人々に対する共感も持っていない。

 こうした無茶苦茶な政治を行なっているトランプ大統領をやめさせることができるのは米国民である。いま、各地でデモがあり、憲法違反などとして裁判を起こす動きがみられる。他方、トランプ支持のデモもある。世論は大きく分裂している。

 考えてみると、トランプ氏が大統領に就任してからわずか10日ほどしか経っていない。この先を読むには早すぎるが、これからも、トランプ政治をめぐって米国および世界が混乱し続けるのだろう。当然、日本もそれに巻き込まれよう。

 トランプ政治は短いほど、いいとも思うが…。どうだろう。

 

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2017年1月30日 (月)

歯止めのない国債残高増大

 2017年度の国家予算案が国会で本格的に審議される段階に入った。サンケイBiz(20日付け)によると、財務省の試算では、17年度末に858兆円に達する国債発行残高は26年度末に1029兆円に膨らむという。

 10年国債の発行金利は17年度に年1.1%、その後、毎年0.1%ずつ上昇し、20年度以降は1.4%が続くという前提で試算したものという。これにより、利払費は17年度9.3兆円が26年度15.3兆円になると見込んでいる。さらに、名目GDP成長率は18年度以降、3%と高めにしている。

 それらを前提にして、石原経済再生担当大臣は、GDPを600兆円に引き上げるための経済成長の実現と、基礎的財政収支(PB)を20年度に黒字化する財政健全化の両立を目指すとしている。

 こうした安倍政権の経済財政政策に対し、29日付け日本経済新聞は「脱デフレ 金融政策では限界だ」、「インフレで債務軽減 宣言を」、「物価2%まで増税凍結」といった見出し付きで米プリンストン大学のクリストファー・シムズ教授のインタビューを掲載している。そこで紹介されているのが「物価水準の財政理論(FTPL)だ。

 それによると、インフレを起こして、それで国の借金の価値を下げる、つまり増税ではなく、インフレで借金を返すというのが、日本政府のとるべき政策だとする。「経済に悪影響をもたらす低金利・低インフレが続いている間は増税しないと宣言することが重要だ」とも言う。

 同紙の「経済論壇から」では、土居丈朗慶応義塾大学教授が鶴光太郎氏の見解を紹介し、「要するに、政府は国債を返済するための財政資金を十分に用意できないから、物価による調整で、カドを揃えて返済できたようにする、ということだ」と書いている。「税負担なく財政支出の恩恵にだけ預かるタダ乗りを奨励して……」という鶴氏の指摘も。

 FTPLの理論はよくわからないが、政治が増税を国民に受け入れてもらうために懸命に説得する努力をしないですませる安易な道であるように思える。それでいいのか。

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2017年1月21日 (土)

「ふるさと納税」制度の歪みを明快に説明した記事

 「ふるさと納税」というと、どこに寄付すると得するか、という話になりがち。そうした特集を組んだ雑誌、新聞なども昨年、多かった。一方で、地元の産品を返礼品にした結果、その土地の産物を生産・販売する業者が思わぬ景気にわいたという面もある。

 そうした「ふるさと納税」制度について、1月21日の日本経済新聞は、制度を利用する高所得者が得し、それ以外の中低所得者を含めた国民全体が負担する仕組みだと、わかりやすく解説している。

 また、この記事が指摘する問題点は、「ふるさと納税」バブルである。思わぬ多額の歳入が舞い込んで、当該自治体の財政が豊かになったため、歳出が放漫になりがちな点だ。

 住民が地方自治体に「ふるさと納税」を行なうと、国は税収減となった自治体に対し、その75%を補償する制度がある(東京都は補償されず、まるまる減収となる)。総務省によると、自治体への財政補てんは年数百億円になるのではないかという。それに、国は入るはずだった所得税(国税)も減る。

 このように、「ふるさと納税」は積極的に利用する高所得者が多大な恩恵を受け、他の国民が犠牲になっているというわけだ。財政危機のもと、政府が人気取りに走るのではなく、制度の全体をフェア(公正)なものにしないと、政治への不信が強まる。

 財務省の試算に基づくと、2020年度の国の基礎的財政収支(PB)は6.4兆円の赤字に達し、安倍政権の掲げる20年度黒字化の目標達成は難しいという。「ふるさと納税」などの人気取りに走る安倍政権の姿勢には問題があろう。

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2017年1月19日 (木)

不穏な2017年の幕開け

 米国のトランプ次期大統領の就任式が20日に迫った。米国のビッグスリーや化学、商業などの巨大企業が彼のツイッター攻撃に屈するかのように、米国内での投資や雇用を拡大するなどと発表している。米国の巨大企業がいとも簡単に経営方針を変更するのには正直、驚いた。どうしてなのか。

 企業の多くが共和党に親近感を抱いているせいもあるかもしれない。が、それよりも、世界を股にかける米多国籍企業といえども、戦時下のように、統制経済に類した国家権力の行使をふりかざしてくる新政府には異を唱えにくいということだろうか。

 あるいは、米国の貧富の格差や失業問題などで、米国内で富の偏在が行き過ぎたという反省がビッグビジネスの経営者にも広がったのか。

 中国は共産党による独裁国家であり、企業は党・政府の指示には従わざるをえない。これと似て、トランプ新政権も、国家権力による企業コントロールに踏み出したのだろうか。

 太平洋を挟んで、米国と中国とが似た経済体制で競い合うことになるのか。

 間に立つ日本の安倍政権はといえば、経済界に対し、企業の内部留保を賃上げに回すよう経営側に求めたり、長時間労働を減らすとか、女性の活躍の場を広げるよう働き方改革を主唱している。

 今年はどうやら、世界のあちこちで、経済や政治・外交の面で、従来の路線の行き詰まりとその打開をめぐって、多様な動きがみられそうな気がする。不穏な動きも。

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2017年1月 9日 (月)

太平洋戦争で奈良などの文化遺産が多く無事だった理由

 太平洋戦争末期において、東京大空襲と広島・長崎への原爆投下とは、日本本土が受けた最も悲惨な攻撃だった。米軍機は東京を無差別に空襲したといわれる。だが、8日のNHK・BS放送「芸術家の太平洋戦争 法隆寺を愛した米国人」によれば、米軍は日本本土爆撃に先立って、法隆寺など日本の歴史的文化的重要遺産などを破壊しないように、空爆の対象からはずずといった措置をとったという。

 東京に対する空爆においても、皇居をはじめとして、博物館のある上野公園一帯や東京大学、東京駅などを爆撃対象から除いていたことを、初めて、この番組で知った。浅草寺も爆撃対象外だったが、これは燃えてしまったという。

 この番組を途中から見たため、間違って理解しているかもしれないが、これには、日本の古くからの寺院・仏像などに傾倒し、戦後、「不滅の日本芸術」(翻訳書は1954年に朝日新聞から出版された)を書いた研究者、ラングドン・ウォーナァなどの日本文化研究者が軍を説得し、動かしたという事情があるようだ。戦後、日本から賠償として日本の古美術などを持ち去ろうとする戦勝国の主張もあったというが、これも米国の学者・研究者の働きかけで阻止されたという。

 日本の古来の歴史、文化は世界に誇る価値があり、いま、日本の”観光立国”を支える大きな柱となっている。第二次世界大戦の最中、歴史的文化遺産を空襲から守るため、寺院などは独自に仏像などを疎開させたりした。

 しかし、それとは別に、米軍のサイドで、日本の重要な文化・歴史遺産の保護を訴え、実現させた学者・研究者がいたのは驚くべきことである。米国の懐の深さを痛感する。

 

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2017年1月 6日 (金)

米・中では「無理が通って道理引っ込む」

 米国のトランプ次期大統領は自動車メーカーのGM、フォードがメキシコに工場を建設するのをツイッターで批判したのに続いて、5日には、トヨタ自動車が計画しているメキシコ工場の建設も取り上げて批判した。まだ、トランプ氏は大統領就任前だが、すでに、フォードやキャリアはトランプ発言を受けて、メキシコでの工場建設をやめると決定した。”無理が通れば道理引っ込む”ではなかろうか。

 トランプ氏の発言は、彼が米国の国益に反すると考える巨大企業の行動を槍玉にあげているように受け取れる。しかし、人、もの、カネやサービスが国内・国際的に複雑に行き来している世界経済において、企業が適切と判断する外国への投資案件を無理やり抑えて、米国内に変更させることが、真に当該企業にとっても、また米国にとっても適切だろうか。

 第二次大戦後、ガット・WTOに象徴される自由貿易ルールによって、先進国も途上国も発展してきた。それを自由貿易の旗手、米国が歪めようとしている。それが米国の経済力を強めることになるのかどうか。トランプ旋風に対して、メキシコがどう対抗措置をとるか、それによっては、経済戦争になりかねない。メキシコ以外の国との間でも、問題が起こるだろう。

 ところで、米国のアップル社が、中国における「アップストア」から、ニューヨーク・タイムズの中国語版アプリを削除したという(6日付け日本経済新聞朝刊)。2012年以来、中国政府は中国本土から同紙のウエブサイトに接続できないように規制を敷いており、これをかいくぐる中国語版アプリも新たに違法とされたからという。

 中国は米国に次ぐ巨大な市場である。だが、中国政府は私企業に対して厳しい規制を課し、それを受け入れなければ、中国国内でのビジネスを許さない。ビジネスを展開したければ、当局の厳しい規制を受け入れるしかない。アップルは、ビジネスを優先して、民主主義や言論の自由、市場経済を認めない中国政府の厳しい規制を容認したわけだ。

 フォードにしても、アップルにしても、国家権力がビジネスのありように厳しく介入してくる新たな時代に直面しているように思われる。日本の安倍政権は安倍政権で、企業の賃上げの水準にまで口を挟んでいるし、中立のはずの日本銀行の役員人事にまで介入し、強引な金融政策を継続している。

 それだけ、上記の国々は国内の政治経済が相当思わしくないという表れなのだろう。 

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2017年1月 3日 (火)

主要紙の正月の紙面雑感

 全国紙6紙(朝日、読売、毎日、日本経済、産経、東京)の1月1日付けおよび3日付けにざっと目を通した。1面には各社とも力を入れるが、パンチのきいた記事はあまりなかった。

 ニュース記事では、1日付けの「中国、海底に命名攻勢」(読売)、3日付けの「中国、腐敗摘発へ新機関」(朝日)、3日付け東京の「空き家 首都圏浸食」などが目を引いた程度。

 他方、連載読み物は、日本経済新聞の「断絶を超えて」①「当たり前」もうない」、②「「協争」の時代が来た」、朝日の「我々はどこから来てどこへ向かうのか」の①「試される民主主義」、②「日本人って何だろう」、そして東京の「包容社会 分断を超えて」の「㊤対話は力、強気をくじく」、「㊥半径数㍍の実感大切に」など、行き詰まった現代社会の突破口を模索する記事が目立った。

 毎日新聞の1日付け「希望を持って前へ」という「主筆 小松浩」の記事、それに、東京の3日付け「論説特集」は、主張するという新聞の機能を強調したものと言えよう。後者は、「論説主幹・深田実」の「社説を読んでください」という文章と、社会・地域担当、国際・米ロ担当、経済担当、政治・外交担当といった12人の論説委員それぞれの顔写真付き意見を載せている。見開きの2ページを充てたこの特集の大見出しは「人には優しく 権力に厳しく」と明快である。

 各紙とも、安倍政権の主要課題を真っ向から取り上げて、その成否を論ずるというような特集を組んでいないのは、いささか気になった。普段、取り上げているから必要ないということかもしれないが、いささか遠慮の度が過ぎるのでは。 

 些末なことを言うと、正月の新聞はページ数が少なくなっている。第二部、第三部、第四部、第五部……といった別刷り特集は少なくなった。広告が集まらないからだろう。かつては、美術、新技術・新産業とかの別刷り特集があり、パズル、漫画など趣味娯楽のページもあったが。

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