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2017年3月29日 (水)

政府ペースの働き方改革実行計画

 安倍内閣は3月28日に働き方改革実現会議(議長=安倍首相)を開催し、「働き方改革実行計画」を決めた。長時間残業、非正規雇用と正規雇用との賃金格差、最低賃金の引き上げなどを対象に、ワークライフバランスなどの観点から是正をはかろうとするものである。

 日本経済新聞によると、実行計画は9分野で慣行を打破しようとするもので、それらは①残業時間規制、②柔軟な働き方、③非正規の処遇、④最低賃金上げ、⑤外国人の就労、⑥シニアの活躍、⑦転職や再就職、⑧仕事との両立、⑨女性・若者支援にわたっている。

 しかし、残業の上限を年間720時間とし、繁忙月には100時間未満とするなど、確かに一歩前進するが、ワークライフバランスの達成は夢また夢と言わざるをえない。インターバル規制も努力義務にとどまる。そのほかも、パンチ不足だ。改革に真摯に取り組んでいるという姿勢を国民に示しながら、実際には、難しい問題は先に延ばし、年月をかけて段階的に改革を進めるという色彩が濃い。

 そうした漸進的な改革にとどまってしまうのは、肝心の労働側の腰が引けているからではないか。春季生活改善闘争はよしとして、労働運動が結束して政治を巻き込む制度改革への取り組みは皆無に等しい。これだけ豊かな国になっても、労組が産別を越して共闘し、時短とか、最低賃金とか、インターバル規制とか、基本的な権利をめざしてデモやストライキなどで闘うことがないのは労働運動の退廃ではないか。

 今回も、安倍政権が改革をリードしているかのような印象を国民に与えているが、それは連合をはじめとする労働運動の側の怠慢である。厳しく反省してもらいたい。

 

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無修正で成立した2017年度国家予算

 日本の国会では、政府が作成し、提示した予算案を議論し、修正して成立させる役割の予算委員会が、あらゆる問題を審議する。いまなら、森友学園をめぐる国有地の売却価格などが争点となっている。

 国の一般会計などの予算案をめぐる審議のほうは、一昨日(28日)の予算成立で終わったが、1月に提出された予算案は無修正で承認・可決された。衆・参議院とも予算案を審議する予算委員会が開かれ、長時間、審議が行われたはずだが、修正個所が全くないというのには違和感を持つ。

 一般会計を例にとると、どんなことにいくら使うか、一つ一つを積み上げた歳出と、それらに必要な資金の調達である歳入ともに97兆円台という天文学的な金額である。カネの使い方で、政府提出案の何から何まで問題がないなんてことはありえない。それとも、予算案作成にあたる各省および全体を束ねる財務省の官僚は”神様”ばかりなのか。

 委員会の審議で中身をめぐる与野党の対立が起き、修正すべきものは修正する、それが国会議員の役目ではないかと思う。多数決民主主義で、与党が数の力でもって有無を言わさぬというのなら、独裁政治に似ていよう。野党の議員には、総論と各論の両面から政策と予算に精通し、与党と官僚に一目おかれる政策通になる人が何人もいるようになってほしい。

  一般会計歳出(国債費を含む)は2009年度に急増したあと横ばい。これに対し、一般会計税収は2009年度から右肩上がりに増えている。これらの数値を折れ線グラフにすると、”ワニ”の口がせばまってきている。一方、公債残高は2017年度末に865兆円(2016年度末実績見込み845兆円)と増え続けている。そして、日本銀行のゼロ金利および国債の大量買い入れという非常時の対策は出口が見えないままだ。

 こうした日本の財政・金融をめぐる厳しい状況について、国会議員がきちんと認識し、国政をまともな軌道に乗せることが求められている。内閣も、与党も自覚が足りないし、野党も枝葉末節ばかり追いかけていては話にならない。

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2017年3月22日 (水)

日本のものづくりの強さと問題点

 福井市を拠点に、繊維の一貫生産体制など独自の経営を行なう企業、セーレン。先週、同社の独創的な経営を推進してきた川田達男会長が日本記者クラブで会見した。その中で、同社の生産の6割は海外だとし、日本企業が海外でのものづくりにおいて強い理由として次の3点を挙げた。

 ①外国では、会社の中で他の人にスキルを教えない。日本人は別だが。②外国では、チームで仕事ができない。管理職は個室にいる。チームで仕事がやれれば、掛け算の成果が出る。③外国では、働く人に会社への帰属意識がどこにもない。会社のためなんて考えない――と。

 確かに、日本のものづくりの強さは、川田氏が指摘したような要因に支えられてきたと思う。だが、このところ、安倍政権も唱える働きかた改革が脚光を浴びているように、日本のものづくりに代表される企業経営の”影”が色濃く感じられる。

 それを象徴する1つは電通の女性社員の過労死であり、いま1つは東芝の巨額の粉飾決算・経営危機である。どちらもグローバルに事業を展開してきたビッグビジネスである。いずれも、社内から問題を提起することはなかった。社員には、人として、また社会人としての常識、良識すら欠けていたのではないかと疑いたくなる。(筆者自身、過去にどうだったか、と振り返ると、いささか心もとない)

 第二次世界大戦後の日本は、国民総出で経済復興にいそしんだ。労働者は仕事に生きがいを感じ、会社の発展に尽くした。労働組合は企業内組合であり、給与などの労働条件は属する会社の成長いかんにかかっていた。そのため、会社第一主義が当たり前となり、労働条件にせよ、働く人の暮らしにせよ、企業の論理が大きく影響した。個人は会社の前には無力だった。

 それでも、本当に日本はものづくりが強いと誇れるのだろうか。いまも根強い会社第一主義を抑えるには、個別企業を超えた力のある産業別労働組合のような組織が不可欠ではなかろうか。もちろん、産別があっても、それが資本に対抗する力を持たねばならないが。いずれにせよ、日本の企業内組合は、企業の経営側には都合がいいが、組合員にはそうではないと言えよう。

 

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2017年3月15日 (水)

直接税の改革を唱える書『日本経済《悪い均衡》の正体』

 「社会閉塞の罠を読み解く」との副題を付した伊藤修著『日本経済《悪い均衡》の正体』(2016年12月刊)を読んでいる。同書は「増税するなら、その主力であり最優先されるべきは消費税である」という「思考を習慣的に続けるのは今では正しくない」と述べている。

 増税するなら、「広く浅く負担を求める消費税がよいという理由は格差が小さかった時代のもので、現在は条件がまったく変わってしまっている」と伊藤氏は指摘する。

 そして、消費税については、なるべく早く、タイミングをみて10%にまで引き上げるべきだが、財政改革の中心は直接税改革に移行しなければならないと言う。すなわち所得税、法人税の引き上げである。

 税制では、所得税は日本経済の成長につれて累進税率のカーブをゆるやかにしてきたが、これを逆転し、累進度を高めよと同書は主張する。法人税についても、租税特別措置による減税を大幅に減らし、ビッグビジネスの異常に低い税負担を是正するよう求めている。

 また、世界的に進行している法人税引き下げ競争は「各国財政の共倒れを招いていることが明白であるから、協調を呼びかけて流れを変えるべきである」とも言う。

 日本の税と社会保険の公的負担は増え続けるが、先進国の中では負担率が低い。このため、同書は「相対的に「小さな政府」の範囲にとどまっており、引き上げの余地がある」と言う。そして、それゆえに、「客観的には破綻状態にある日本の財政が切迫した危険視をされず」にいるのだと指摘している。

 自動車など、春闘の第一陣回答が15日に出た。働き方改革の流れもあるが、概して、ベア回答は渋い。人手不足が言われているが、そのわりには賃上げ率は小さいように思われる。貧しい層の底上げを図るためにも、高所得の企業や個人への課税を増やすことが重要である。それが財政改革にもつながるのだろう。

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2017年3月11日 (土)

東日本大震災から6年、難題は続く

 6年前の2011年3月11日、東京の自宅(中層住宅の7階)にいて巨大地震に遭った。そして、テレビ報道で、三陸を中心とする被災状況をつぶさに見つめた。空から撮影された、津波が田畑をなめつくす映像などには心底震えた。

 日時が経ち、被害の実態がメディアを通じて詳細に伝えられるにつれ、想像だにしない大規模な被災であることが明らかになった。また、東京電力福島第一原子力発電所が地震と津波で破損し、水素爆発を起こしたり、放射能による大気や水の汚染を引き起こしたりした。

 2万人近い死者・行方不明者。地震・津波によるインフラや生活・経済への打撃。放射能汚染。それらに対し、政府は国民に特別課税をするなど、思い切って国費を注ぎ込んできた。いまだにプレハブ住宅での生活を余儀なくされている被災者もいるが、政府は、地域住民が、海が見えないほどの巨大堤防をつくるなど、公共土木事業に力を入れている。

 ところで、最近、内堀雅雄福島県知事が記者会見で、「光」と「影」というキーワードを使ってFukushimaの今について詳しく語った。避難指示区域が縮小されたこと、除染で外国並みになったこと、農産物モニタリングで安全を確認したこと等々を「光」として挙げた。そして、避難者が約8万人いること、原発のデブリの問題が続いていること、福島産の農産物価格が全国平均より低いこと、観光客が震災前より少ないこと、人口減少が続いていることを「影」として挙げた。

 そして、福島の復興について、「風評」と「風化」が同時に進行していると語った。知事は「いい話をすると、もう問題はなくなったと誤解される。一般のかたに明るい話と暗い話をすると困惑される」と言い、「来て見てもらうと、アンビバレントな状況が理解してもらえる」と語った。

 確かに、知事が言うように、東日本大震災の被災地は3.11以前の状態に戻れていない面がまだまだある。しかし、過去6年間に、日本の経済社会それ自体も変わった。”アベノミクス”でデフレから脱出すると称した安倍政権は、国債発行増による歳出増と日銀による国債大量取得という離れ業をもってしても、デフレ脱出ができていない。増税などをしなければ、財政危機が深刻化し、いずれは財政破綻に追い込まれる可能性が少なくない。

 東電福島原発の廃炉に至る道筋がいまだに技術的にさえも確かでない。我々は、この負の遺産をずっとひきずっていくことになる。そして、自公政権は過去6年間に深刻さが増した財政危機を、国民にしわよせするインフレという安易な方策で切り抜けようとしかねない。北朝鮮の核ミサイル技術の進展などによる安全保障問題を含め、日本の将来は厳しい。

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2017年3月 2日 (木)

賃上げ闘争にJAMが提起した新たな視角

 3月に入り、賃上げ闘争(春季生活闘争)が本格化しようとしている。働き方改革、人手不足など、新たな潮流とも重なり、従来とはいささか異なる展開を示すこともありえよう。そうした中で注目したいのは、ものづくり産業労働組合JAMが進める「価値を認めあう社会へ」の運動である。

 即ち、労働組合が会社側に賃上げを要求する”春闘”という従来の狭い視点から脱し、企業に対し、製品ごとの収益性をチェックし、赤字受注をしている製品を、打ち切りを含め見直すこと、受発注相互の取引条件を見直し、適正なコスト負担になっているかを確認するなどを求めている。また、短納期や長時間労働などの無理な働き方を解消するよう要請している。

 それらの収益改善に向けた取り組みによって、ヒトへの投資に向けた原資を確保し、労使が一体となってものづくり産業・企業の基盤強化を図ろうというわけだ。

 JAMに加盟する労働組合は中小のものづくり企業のそれが多く、JAMの指導員が経営改善を必要とする中小メーカーに経営改善プランを提起することもあるという。JAMはそうしたユニークな活動で知られるが、「価値を認めあう社会へ」の活動は、それからさらに踏み込んだ新たな取り組みだと思う。

 JAMの宮本会長は「JAMは、機械・金属産業の中小・ものづくり産業別労働組合として、製品の価値(公正取引)と労働の価値(賃金水準)を正しく評価し、「価値を認めあう社会の実現」をめざして、労使がイニシアティブを発揮した運動を展開していきます」と語っている。息の長い取り組みになろうが、持続することを期待したい。

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