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2017年6月27日 (火)

藤井聡太くんが提起した問題

 将棋の藤井聡太四段(14歳)がプロとなって29連勝を達成し、日本中が沸いている。共謀罪、森友学園、加計学園などで安倍内閣に対する国民の不信が強まり、また、北朝鮮の核・ミサイルの脅威が高まったりしたあとだけに、穏やかで、親しみを持てる天才中学生の出現は明るい話題として歓迎されている。

 ここで、藤井くんを取り上げたのは、将棋のことではない。数学を得意としているのに、学校から宿題を出され、「どうして宿題をやらなければならないのか?」と、彼がクレームをつけたという話についてだ。

 藤井くんにしてみれば、学校で教わって、もうわかったことについて、家で宿題をやるのは時間の浪費である。それこそ、時間があれば将棋の勉強をしたいだろう。だが、学校は、授業でわからなかった生徒にも、わかった生徒にも、画一的に宿題を課す。

 しかし、それでは、伸びる子をどんどん伸ばすという理想に反する。むずかしいことだが、学校教育においても、生徒一人ひとりの個性、理解力の程度に応じて、教え方に差異があっていいのではないか。

 いまでも、生徒たちは集団の中で目立たぬよう、何かにつけて、皆と同じであろうとし、自分の個性を前面に押し出すようなことは避ける。しかし、それでは、個性を打ち出し、自分を主張する外国の人たちに負けてしまう。

 いま、塾に通っている小中学校生は相当な数にのぼる。そこでは、個々の生徒の学力レベルに応じて教えている。スマホなどの発達は、そうした個別学習に拍車をかけるだろう。義務教育においても、生徒それぞれの理解力に応じた個人別学習法を生み出し、授業に取り入れることが望ましい。藤井四段の快進撃は、そんな問題も提起している。

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2017年6月26日 (月)

財政と社会の関わりを考えさせるジュニア向け新書

 3月に発行された岩波ジュニア新書『財政から読みとく日本社会』(井手英策著)を読んだ。少年少女向けに書かれたとはいえ、著者の財政学や日本の現実への考えが展開され、いい本である。

 著者が学んだ財政学の師である神野直彦氏の著書『財政学』に、「市場経済では量入制出(入るを量って出ずるを制する)の原則が支配しているのに対し、財政では「量出制入(出ずるを量って入るを制する)の原則」にもとづいて運営される」と書かれている。私はそれを初めて読んだとき驚いた。そのときまで、財政についても、入るを量って出ずるを制するのが当然だと思っていたからだ。

 井手氏の新著は、神野財政学の考え方をベースに展開していて、刺激的である。日本ではEUなどに比べ、消費税の税率は低いのに、引き上げに対する国民の心理的抵抗が強い。高度経済成長期に繰り返された所得減税で、国民は税金が当然返ってくるという感覚を持つようになったからだという。日本では、33年間にわたり、純増税が行われなかったのだ。増税しながら人々の生活を支える仕組みをつくる経験をほとんど持つことなく、歴史上まれにみる巨額の政府債務を創り出したのだと指摘する。

 教育、医療、介護、子育て、環境など、人が生活していくための現物給付は、金持ちだろうと中間層だろうと、貧しい人であろうと、誰もが必要とする。すべての人を受益者にすると、財政規模は膨らむが、誰もが将来不安から解放される。財政は暮らしを支え、人と人との共感を創り出す道具だという。

 著者は財政を通じて望ましい経済社会をつくることを願って本書を書いた。読めば、戦後財政史を新たな視点で学ぶことができる。それも本書の特色であろう。

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2017年6月19日 (月)

安倍首相の「深く反省している」は国民をばかにしているのでは?

 安倍首相は19日の記者会見で「深く反省している」などと語った。だが、世論調査で支持率が10%ポイント前後下がったため、反省を口にしただけで、国民の不満や怒りにまともにこたえようとしたとは思えなかった。

 国会は国民の代表が集まって、政治のありようを議論し、決めてゆく最高の機関である。したがって、政府・与党は、野党から突き付けられた質問に真摯に答えなければならない。さまざまな行政の決定過程に疑問が突き付けられたとき、閣僚や行政官は、機密などはさておき、野党議員の質問に対し、きちんと真正面から答えなければならない。関係書類を破棄してしまったなどといったごまかしは許されない。

 また、野党の質問に真正面から答えるべき閣僚が、まともに答弁せず、質問に関わりのない発言をしたりしている。安倍首相以下のそうした不誠実な答弁が際立って多かった。官房長官会見も、記者たちの質問に、木で鼻をくくった答えかたが目立った。

 毎日のテレビ報道を見ているだけでも、安倍内閣の傲慢さが感じられた。一般国民の中でも、まともな論争を避けて数で押し切ろうとする安倍内閣に対して、同様な感じを抱いた人がたくさんいたのだろう。

 19日の会見で、安倍首相は反省を口にした。だが、内容は、テロ等準備罪などについて、国会での審議をもっと深めるべきだった、というような視点はなかった。都知事選への影響を抑えようとした口だけの反省に思えた。内閣改造にしても、与党内での論功行賞など、安倍首相への忠誠を確かなものにしたいというものにすぎない。どこまで行っても、安倍”独裁”の政治姿勢に思える。

 

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2017年6月14日 (水)

上場企業の6割強が実質無借金――を考える

 上場企業(金融などを除く)の財務体質が改善され、2016年度末時点で実質無借金企業が前年度より60社増えて2000社を初めて突破した、と日本経済新聞の13日付け朝刊が報じた。金融などを除く上場企業は3500社近いが、そのうちの58%が実質無借金の企業だという。

 現預金、短期保有有価証券などの手元資金から借入金、社債などの有利子負債を差し引いた「ネットキャッシュ」を算出。これがプラスの企業を実質無借金と定義している。

 GDPなどでとらえるマクロ経済では、デフレが続いているとか、賃金上昇率が低く、消費も低調だ、など、日本経済は長期停滞から抜け出せないように言われる。それにもかかわらず、ないしは、それだからこそ、企業は実質無借金化しているのだろうか。

 市場経済では、起業家が事業を起こし、必要な資金を株式、社債や借入金という形で調達するのが普通だ。資金の必要がなければ、資金を手元に置いておかず、株主などに返還するのが常識である。また、内部留保で手元資金が積み上がる一方で、雇っている社員などへの給料を増やさない、ないしは、下請けなどを買い叩くような企業は、社会的な公正さを欠いていると言える。

 企業が新技術、新製品などで事業の維持・拡大をめざせば、雇用も拡大し、国民経済も活性化しよう。また、内部留保を適正なレベルにとどめ、資金使途が見当たらないときは、増配で株主に返せば、消費の増大につながる。増配する企業が増えているが、もっと大々的に行なったらいい。そうすれば、株価はもっともっと上がる。

 また、個人の貯蓄が1000兆円を超え、無借金企業が増えるということは、マクロ経済では、政府が借金を増やすことと裏腹である。政府が法人税や個人所得税などの増税を行ない、国の借金を異常な高水準から引き下げることは望ましいことだろう。

 経済団体連合会は創設70年を迎え、会報の6月号は『「豊かで活力ある日本」に向けて――岐路に立つ日本と経済界の役割』と題して特集を組んでいる。だが、上記の、証券・資本市場の観点を欠いているのは残念である。

 

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2017年6月10日 (土)

財政悪化を是認する「骨太の方針」

 3月に出版された『サボる政治』(坂本英二著)は副題に「惰性が日本をダメにする」と記している。

 自民党は「財政に余裕があった頃に思い描いた夢の福祉国家や地方に予算を大盤振る舞いする仕組みは、もう見直さなければならないと有権者に正面からなかなか説明できなかった。」、また、野党は「増税反対!」「地方切り捨て反対!」と声高に叫び続けた。結果として、将来世代に負担を付け回ししてきた。これが過去30年ほどの基本構図だと言う。

 政府は9日、臨時閣議で経済財政運営の基本方針(いわゆる骨太の方針)を決定したが、概要を読むと、2020年度の黒字化を掲げてきた基礎的財政収支(PB)目標に加え、債務残高対GDP比の安定的引き下げという目標を掲げた。財政再建のメドとしてきたPBの黒字化が不可能とわかったからだと思われる。財政再建で野党から叩かれるのを避けるため、目標をあいまいにしたのだろう。

 アベノミクスではデフレ脱却、経済再生、歳出改革、歳入改革を唱えてきた。しかし、現実には、赤字国債の大量発行や日銀による超低金利政策をてこに、もっぱら景気刺激策が行なわれてきているが、政府の期待通りの経済成長を達成できていない。このままでは、「子や孫のクレジットカードで現役世代が飲み食いしている」(『サボる政治』)事態が今後も続きそうな気配だ。

 安倍政権発足から5度目の骨太の方針となる。財政再建がうまくいかないのは、将来に大きな負担を残す今の経済運営そのものに問題が内在しているからではないかと想定される。国会で与野党議員に加え、経済学者ら民間の専門家を入れて、今後の日本経済の運営に関する議論をしていくことが争点を明確化し、政策を見直すことにつながるのではないか。

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