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2017年6月26日 (月)

財政と社会の関わりを考えさせるジュニア向け新書

 3月に発行された岩波ジュニア新書『財政から読みとく日本社会』(井手英策著)を読んだ。少年少女向けに書かれたとはいえ、著者の財政学や日本の現実への考えが展開され、いい本である。

 著者が学んだ財政学の師である神野直彦氏の著書『財政学』に、「市場経済では量入制出(入るを量って出ずるを制する)の原則が支配しているのに対し、財政では「量出制入(出ずるを量って入るを制する)の原則」にもとづいて運営される」と書かれている。私はそれを初めて読んだとき驚いた。そのときまで、財政についても、入るを量って出ずるを制するのが当然だと思っていたからだ。

 井手氏の新著は、神野財政学の考え方をベースに展開していて、刺激的である。日本ではEUなどに比べ、消費税の税率は低いのに、引き上げに対する国民の心理的抵抗が強い。高度経済成長期に繰り返された所得減税で、国民は税金が当然返ってくるという感覚を持つようになったからだという。日本では、33年間にわたり、純増税が行われなかったのだ。増税しながら人々の生活を支える仕組みをつくる経験をほとんど持つことなく、歴史上まれにみる巨額の政府債務を創り出したのだと指摘する。

 教育、医療、介護、子育て、環境など、人が生活していくための現物給付は、金持ちだろうと中間層だろうと、貧しい人であろうと、誰もが必要とする。すべての人を受益者にすると、財政規模は膨らむが、誰もが将来不安から解放される。財政は暮らしを支え、人と人との共感を創り出す道具だという。

 著者は財政を通じて望ましい経済社会をつくることを願って本書を書いた。読めば、戦後財政史を新たな視点で学ぶことができる。それも本書の特色であろう。

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