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2017年10月26日 (木)

鋭い指摘がある書物『巨大ブラック企業』(佐高信)

 ブラック企業という言葉はいろいろな使われ方をする。本書では佐高氏と専門家との対談を中心に、日本を代表するビッグビジネスの東京電力、日本航空、東芝、トヨタ自動車、松下電器(パナソニック)の5社の経営の問題点を多面的に紹介している。5社とも、私自身が一時、取材したことがあり、その後とはいえ、そんなことがあったのか、と教わることもあった。

 松下電器(パナソニック)については、立石泰則氏が、山下跳びといわれた山下俊彦社長について「社長になるつもりがなかったから、変な野心を持っていなかった」、「名経営者を一人選べと言われたら、迷わず山下さんを挙げる」、山下氏は「家電だけでは生き残れないと考え、……(コンピュータ事業再参入、半導体事業強化など)デジタルへ大きく舵を切った」と言う。

 戦後にPHP運動を始めたいきさつ、松下政経塾を創設したいきさつなどを読むと、幸之助神話のつくられた過程がわかる。また、立石氏は、いまの松下の広報はメディアはコントロールできると考えているという。開かれた広報と言っているが…。

 トヨタについては、『トヨトミの野望』(梶山三郎著)に取材協力した井上久男氏(フリージャーナリスト)は「豊田家では株式を二%くらいしか持っていない。……資本の論理で言えば、豊田家の会社ではない。……かつ上場しているから社会の公器という存在」、「日本社会にとってみたらまさに公器」、「そういう公器を、株式を持っていない豊田家という、創業者の子孫だからといって経営を任せてもいいのかという大きな問題提起を、この本の主人公はするわけです」と言う。

 また、井上氏は「社内で意見を言う人間が排除されるようになってしまった」、「トヨタがどこかの国に似てきたと思いますね。……トヨタという会社はグローバル企業で、多様性が必要な会社なんですけど、考え方に多様性がなくなってきている」、「今のトヨタで出世する人は、本当に忖度が上手い人ですよ」とも指摘する。

 同氏によれば、一時期は「社徳」や「オープンな会社に」と言って、メディアともうまく付き合っていきましょうという感じだったトヨタが、今はまた、秘密主義に戻ってしまったという。情報統制がすごいとのこと。役員人事は社長専管事項であり、その人事情報を書くとそのメディアはパージされるという。

 かんばん方式についての同氏の説明は興味深い。「本来のかんばん方式は、トヨタの方から取りに行く発想だったんです。要るものだけ取りにいくということで、下流工程から引き取っていくのがかんばん方式の神髄だった。すると、部品メーカーからしてみると、トヨタ自動車というのは下流工程なんです」、「本当はトヨタが引き取りにいかないといけないんですが、かんばん方式はそういう意味でも変質しちゃった」。

 という具合に、本書は読んでいくと、日本の企業社会のひずみをいやというほど感じさせられる。と同時に、どこかの大国の政治のありかたとも共通しているような思いにとらわれる。

 

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