5月13日の財政制度等審議会のナントカ部会は数字(金額)面から社会保障制度の実態を示す資料を出している。膨大な資料のうち、一番、興味を抱いたのは、吉川洋東大教授のプレゼンテーションの中の「1人の生涯から見た社会保障給付の姿」という図である。生まれてから死ぬまでの生涯に、平均1人が毎年、どんな種類の給付をいくら受けるかが5年刻みで色分けしてある。
生まれてから20歳過ぎまでは、児童手当、保育所・幼稚園、義務教育、高校、大学といろいろ給付がある。小学校以降、高校までは毎年、100万円前後の給付を受ける。そのほとんどが学校教育であり、わずかだが医療の給付がある。
社会に出たあとは、60歳まで給付は非常に少ない。ただ、年齢が上がるにつれて、医療費が増えている。それでも、55~60歳では雇用保険を足して年間30万円程度である。
しかし、60歳を過ぎると、老齢年金の給付が加わるので、60~65歳の給付年額は55~60歳に比べ2倍強に増える。そして、65~70歳は老齢年金がフルに給付されるうえに、医療費も多くなるし、介護保険の給付もあるので、給付額が年180万円ぐらいに達する。うち医療・介護の給付は年50万円程度である。
70~75歳は年200万円ぐらいの給付である。年金が約130万円、医療・介護がおよそ70万円だ。
そして、評判の悪い「後期高齢者」となると75~80歳で給付は年220万円ぐらいになる。そのうち、医療・介護が年90万円ほどである。80歳以上になると、さらに増えて年260万円ぐらいである。80歳以上の給付の内訳は、年金と医療・介護とがほぼ半々。すなわち、医療・介護の給付が年間130万円ぐらいということだ。
以下は、この図を見ての感想。
上記の金額は、介護サービスを受けない高齢者とか、医者にあまり行かない高齢者を含めての平均である。したがって、当然、中にはケタが違うほど巨額の医療・介護サービスを受けている人もいる。いずれにせよ、社会保障は世代間の助け合いの色彩が濃いから、こうしたデータを見る限り、少子高齢化によって現役世代の負担がどんどん重くなることは明白である。
社会保障の給付金額は高齢化に伴い、今後も増え続ける。06年度89.8兆円だったのが、15年度には116兆円に達するという試算(厚生労働省)もある。では、そのカネをどうやって調達するかが最大の課題である。
従来、医療・介護のムダをなくせという意見もあったが、最近は、医療危機ということで逆に医療にもっとカネをかけろという声が強い。医療費を効率化するために始まったばかりの後期高齢者医療制度についても修正すべきだという“バックスピン”が強いし、介護サービスにしても、サービス報酬を引き上げるべきだという要望が多い。
だが、政府は08年度予算でも歳入の約3割を国債発行でまかなうほど借金に依存している。財政危機に瀕している。だから、増税か、医療・介護保険の保険料引き上げないし自己負担率引き上げか、という話になる。しかし、いまの政局では与野党とも、それらに触れたがらない。
経済成長で税収増をという主張も一部にあるが、成長をはかるには、規制改革や法人税率の大幅引き下げなどが必要。しかし、それらを本気で実施する動きはみられない。
また、世論調査からは、道路特定財源を一般財源にして、社会保障の充実に振り向けるべきだという国民が多いことがわかる。だが、与党も知事たちも、いまだに道路建設を優先しようとしている。
このように、いまの日本は真剣に国の将来を考えるリーダーがほとんどいない。これでは、国の明るい展望はない。若い世代を絶望させるばかりだ。
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