2009年11月10日 (火)

国の“借金”が半年で18兆円増えた

 財務省が10日、国債および借入金の9月末現在高を発表した。864兆5226億円で、半年前に比べ18兆256億円増えた。わずか半年で国民1人あたり14万円弱増えた。よくまあ“借金”を膨らましているものだ。自民党・公明党の政府もそうだったが、民主党中心の政府も目下、返済のことをほとんど考えていないようだ。

 発表によると、内国債だけで9月末現在、694兆2982億円。700兆円大台乗せは時間の問題である。

 これだけ“借金”が大きくなると、政権の座にある者は、じたばたしてもしようがないと度胸がすわるのかもしれない。しかし、国民のモラルハザードが心配になる。いくら家計と国家財政は本質的に異なるとはいっても、国の将来が危ういとなると、真面目に働く気持ちも萎えるだろう。国の将来に明るい展望を切り拓いてみせてくれる政治が切望される。

 事業仕分けは財政のサステナビリティ(持続可能性)に大きく関わる。民主党政権ならではの画期的な取り組みだが、それでどこまで膨らんだ予算要求をカットできるか。政治家がやるんだと力み過ぎているため、官僚をうまく使うというやりかたになっていない点が問題である。

 事業仕分けは大きな意味があるが、同時に歳出のすべてにわたる見直しが求められる。国がやるべき業務であっても、ろくに働かない人をやたら抱えているようでは税金の無駄づかいだ。それはおそらくほとんどすべての業務に大なり小なりあるにちがいない。そこを攻めるには、官僚を味方につけ、問題点を彼らから教えてもらうのがよい。各省庁の三役には、肩の力を抜き、衆智を集めて行政の質をよくするように願いたい。

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2009年10月30日 (金)

09年度個人向け国債の発行額を減らした

 財務省が10月30日、09年度国債発行予定額の内訳を変更すると発表。個人向け販売分を当初に計画していた4兆2000億円から半分の2兆1000億円にした。個人投資家が関心を持つ15年変動利付債および10年物価連動債の発行(各3000億円)を取りやめた。

 どうやら、個人投資家があまり国債を買わないということと、インフレ対策に有利な変動利付債・物価連動債は売りたくないということが変更の理由らしい。

 この日の発表資料を読むと、09年度の国債発行予定総額は149兆2044億円のまま変わらないということがわかるが、金額のあまりの大きさにびっくりする。国債というのは国が借金するために発行する債券だが、09年度の1年間に国民1人あたり新たに110万円余、借金するということだ。一方で、国債の元本を返済する償還もあるし、借り換える分も多い。だから、まるまる借金が積み上がるわけではないが、差し引き50兆円ぐらいは純増分になるだろう。国民1人あたり40万円ぐらいになる。将来へのツケ回しだ。

 財務省によると、ことし3月末で普通国債の発行残高は約546兆円。これが従来の見込みでは来年3月末に約592兆円に増える。しかし、税収が落ち込む一方、鳩山内閣はかなり歳出増となる政策をとろうとしているので、来年3月末に600兆円を超えるおそれもある。

 普通国債以外に国は財政投融資特別会計国債や政府短期証券なども発行している。そのほかに借金もある。ということで、従来の見込みでは、来年3月末の国債・借入金残高が924兆円とされている。これも実際には相当に増え、1000兆円間近になるだろう。

 これは将来、国民に払ってもらわねばならないものである。国民1人あたりいくらになるか。皆さん、計算してみてほしい。

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2009年10月23日 (金)

脱財政赤字で、日本よりはるかに真剣なEU

 日本経済新聞によれば、EUのユーロ圏16ヵ国の2008年における財政赤字はGDPの2%だった。また、政府債務残高のGDPに対する割合は69.3%だったという。最近の日本は年間財政赤字がGDPの10%近い。政府債務残高の対GDP比率も170~180%ぐらいに達している。両者を比べると、日本はフロー、ストックとも、ユーロ圏とはかけ離れたひどい財政危機状態にある。一目瞭然、ユーロ圏諸国の財政は日本よりはるかに健全である。

 そのEUが、20日開催された加盟27ヵ国の財務相理事会で、2011年から財政再建に着手するとの原則について合意した。EUの景気が自律的に回復することが条件とされる。そして、21日付けの日経新聞によると、財政赤字が急速に拡大している加盟国は2011年を待たずに財政再建に取り組むこと、また2011年以降、毎年の財政赤字をGDP比で0.5%以上削減することで合意している。

 まだ、EUの経済も金融危機の影響から脱していないが、にもかかわらず、EUが財政を健全化するための出口戦略を2011年から実施するという方針を決めたことに注目したい。

 第一次世界大戦後のドイツで天文学的なインフレが起き、経済・社会が破壊的な混乱に陥った。そうした状況の中からアドルフ・ヒトラーが現われた。EUが財政悪化を恐れる背景には、そうした歴史の記憶があるように思う。

 日本は第二次世界大戦後の激しいインフレで国民生活を苦しめたが、その歴史の教訓は忘れられた。戦後の高度経済成長が終わった頃から、好不況にかかわらず、国債発行による財政ばらまきを続けてきた。このたび与党と野党が入れ替わったが、借金によって財政の大盤振る舞いをする竹馬(たけうま)財政は変わらないようにみえる。

 国債の市場取引価格が大きく下がる(つまり長期金利が大きく上がる)と、財政危機が表面化する。この市場価格(金利)が暴落(金利暴騰)しないうちは財政赤字がいくら大きくなっても大丈夫だというような“他力本願”でいつまでも安泰であるはずはないのである。

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2009年10月21日 (水)

マクロ経済政策の欠如と影が薄い菅副総理

 1週間余、海外に旅行して帰ってきたばかりだが、新聞報道をみると、2010年度国家予算の編成で、相変わらず鳩山内閣のマクロ経済政策が見えない。各省の提出予算を合計すると、一般会計は95兆円になり、その他の要求事項を加えると97兆円ぐらいになるらしい。税収は40兆円を切りそうだから、要するに、財源は二の次、三の次にして、マニフェストに盛った歳出を最優先する大盤振る舞いになるようだ。

 予算編成の前提である、日本経済の成長率はどのぐらいが望ましいか、それを達成するには、政府の予算規模はいくらぐらいが適切かといった話はほとんど国民に伝わってこない。デフレになりつつあるから、景気刺激策が必要という話なら、大型予算を組むのもわからないわけではない。それでも、12日のブログにも書いたことだが、これはあくまで緊急事態だということを国民によく理解してもらうことが絶対に必要である。

 この予算編成の過程で不思議なのは、マクロ経済の視点から予算編成方針を打ち出すべき立場の菅直人副総理・国家戦略担当・経済財政政策特命担当大臣がほとんど何も発言していないことである。菅副総理は単年度予算方式の修正を口にしているものの、2010年度予算の編成に対して、マクロ経済の観点からどうあるべきか、語っていない。予算こそ国家権力の権力たるゆえんであるのに、担当閣僚の存在感が全くうかがえない。彼の手足となるべきスタッフもいまだにそろっていない。

 それはなぜなのか。一つには、菅氏がマクロ経済のみならず経済政策に全くの素人であることがあげられる。何をすべきかが、わかっていないということである。いま一つには、平野官房長官―小沢幹事長のラインで、菅氏を副総理・国家戦略担当だとか、経済財政担当とか、カッコいいネーミングのポストにまつりあげて、官邸に対する菅氏の影響力を弱めようとした結果だと思われる。岡田克也氏を外相にして、国内での影響力を削いだのと同じことである。鳩山政権を安泰にするための民主党内の権力争いがマクロ経済政策の欠如につながっているというわけだ。

 日本郵政のトップ交代で、斎藤次郎元大蔵省事務次官が新社長に決まった。福田内閣当時、民主党の小沢代表が自民党との大連立をはかろうとしたことがあるが、その裏に斎藤氏の暗躍があったといわれる。斎藤氏は細川政権時代に事務次官であり、今日にいたるまで小沢氏に最も近い官僚OBといわれる。日本郵政のトップ人事には、間違いなく小沢氏の意思が働いている。

 鳩山政権は自民党政権ができなかったことを実行しようとしている点で高く評価される。だが、その一方で、この日本をどういう国にしたいと考えているのか、それをどうやって実現するのか、という総論および各論がよくみえない。郵政改革のご破算も、なぜそうするのかがよくわからない。

 経済界や金融市場(マーケット)を安心させる経済政策を打ち出さないと、経済の低迷から抜け出すことは難しいのではなかろうか。

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2009年10月12日 (月)

こうした時こそ、国の財政実態を国民によく知ってもらうべき

 消費者物価の下落が続き、日本経済はデフレに陥っているとの見方が増えてきた。そして、マクロ経済が40兆円(年間)の需給ギャップを抱えていることから、政府に新たな補正予算を求める意見が強まっている。09年度は補正を合わせて102兆円の予算が組まれているが、税収は40兆円を切るかもしれない。もし、民主党政権が現在の補正予算からムダを削ったとしても、新たな補正予算を組めば、差し引きの予算規模、国債新規発行額、ともにもっと膨らむかもしれない。

 景気が悪かろうと良かろうと、国債という“麻薬”を打つ癖がついた日本経済。政府も政治家も、そして企業、国民も、納税額をはるかに上回る歳出(支出)を当然視してきた。「フリーランチはない」という基本をすっかり忘れてしまった。

 このため、国民にも企業にも、また地方公共団体にも、限られた財源の中で歯をくいしばってでも自主自立で頑張ろうという精神が薄れてきている。甘えの気持ちが強く、何かというと、国・政府に依存しようとする。そして、思い通りにならないと、国・政府を批判する。それに対し、国・政府のほうも、カネで解決するのなら、と安易に「借金」を積み重ねてきた。そうした政治の退廃が国・地方の債務残高の対GDP比を世界で突出したレベルにしてしまった。

 この天文学的な財政赤字を引き継いだ民主党中心の新政権は、藤井財務相によると、いずれプライマリーバランスの達成時期と、債務残高の対GDP比を安定化させる時期とを財政再建の目標に掲げることになりそうだが、当面は国・地方の“借金”増大に目をつぶるようにみえる。行政刷新会議を通じてムダ退治を進める一方で、減税したり、子供手当などの新たな歳出を設けたりするので、差し引きすると、やはり自民党政権と同様に巨額の財政赤字を積み上げることになる。それは長い目でみると、財政破綻により近づくことを意味する。

 日本財政の実態は深刻であり、本来、国民が甘えるような余裕はまったくない。民主党が、それにもかかわらず、いまは景気下支えのために財政が出動せざるをえないという認識なら、そのことを国民にきちんと知らせ、理解してもらう必要がある。そうしておけば、将来の増税の必要性をいまから理解してもらうことができるだろうし、実際に増税するときもしやすいだろう。そして、納税額をわきまえず、あれもやってくれ、これもやってくれという国民の甘えに歯止めをかけやすくもなろう。

 いずれ本格的に財政再建に乗り出す時期が来る(?)とすれば、それに備えて、いまから国民一人ひとりに現実の税収と歳出とのギャップがいかに大きいか、をよく知ってもらう必要がある。国民が税や社会保険料の負担増を抜きに、大きな政府を求めれば、財政破綻するのは必至である。政権が交代しようと、財政健全化は至上命題である。

 かねて地方分権が唱えられているが、それは小さな中央政府とし、生活に身近な市町村が権限、財源などを持ち、地域の実情に即した小回りのきく行政に変えることを意味する。そうなると、国に対し、あれもしてくれ、これもしてくれという現在の甘えの構造が変革を迫られる。そうした点からも、国民に財政の危機的実態を理解してもらうことが望ましい。

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2009年10月 3日 (土)

都道府県の債務は80兆円、市町村の債務は53兆円

 総務省が都道府県および市町村の普通会計の08年度決算集計(速報)を2日に発表した。

 都道府県の歳入は48兆0458億円、歳出が47兆3490億円、市町村は歳入が49兆5838億円、歳出が47兆8347億円だった。

 これに対し、地方債および債務負担行為による債務から積立金残高を差し引いた実質的な“借金”残高は都道府県が80兆4932億円、市町村が53兆1644億円だった。前年度に比べ、それぞれマイナス0.1%、マイナス2.8%と減った。

 一方、標準財政規模を100としたとき、地方公社等を含め一般会計等が抱える“借金”がどれだけあるかを示す将来負担比率をみると、都道府県は219.3、市町村は100.9だった。大ざっぱにいうと、都道府県は歳入の2.2倍の借金を抱え、市町村は歳入とほぼ同額の借金を抱えていることになる。

 ただし、市町村のほうは財政危機の深刻なところがいくつもあるなど、都道府県に比べばらつきが大きい。全体の数値だけでは市区町村の持つ問題点がわからないというわけだ。

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2009年9月27日 (日)

格差と再分配、『誰から取り、誰に与えるか』(井堀利宏著)から

 「格差と再分配の政治経済学」という副題の付いた『誰から取り、誰に与えるか』(09年7月刊)を読んだ。財政学の学者で、啓蒙書もたくさん書いている井堀利宏東大大学院教授の新刊本である。ちょっと記述がていねい過ぎてくどく感ずるところもあるが、いまの経済政策を考えるうえでとても参考になる。

 国民1人ひとりや世帯の間には、あるいは地域の間には、所得や資産の多い少ないの差がある。そのため、社会保障などにより所得や資産の再分配が行われているが、現代の日本では、それが十分ではないとして、「格差」という視点からその是正が社会や政治の問題になっている。では、どのような格差が問題なのか、本当に格差が拡大しているのか、どこまで是正すべきか、再分配政策はどこまで有効なのか、コストや弊害はないのか。といった観点から、公平性、効率性の両面を踏まえ、どのような再分配政策が望ましいのかを同書は展開している。

 井堀氏は、再分配の原則として①対象の設定、②期間の設定、③経済的制約の考慮、の3つを挙げている。①については、再分配を受けるべき弱者は誰か、それを特定するのは非常に難しい。また、ある時点で弱者と認定されたとして、その後、ずっと弱者であるとは限らない。再分配を受けるのが既得権化したり、弱者を偽装する者をきちんと排除するのは容易ではないという。

 ②については、「再分配政策の目的は、単に弱者を救済することではない。弱者が自立した経済生活ができるように、スキルを身につけて、自力で経済力がつくのを支援することである」として、期限を設定することを求めている。受給者が安住せず、給付の打ち切りに備えて努力するように仕向けるためである。

 ③は、再分配政策による弊害(コスト)、すなわち、求職のための自助努力を阻害したり、一生懸命働くのをやめて再分配政策に依存するようになったりするというマイナスの影響を考慮して、再分配政策の規模、対象、期間などを決めるべきだとしている。

 また、再分配政策の主要な課題を挙げ、それらの改革の方向を提示している。公的年金制度を個人勘定積立方式や個人勘定賦課方式(自分の子供から給付を受ける)に変えること、地方交付税制度を縮小し、国から住民に直接渡し(個人勘定交付税)、住民から地方税として納める方式に改めること、納税者番号制度や社会保障個人勘定を導入すること、などである。

 このほか、興味深い指摘が随所にある。そのうちの2つを紹介する。「1980年代以降、農業世帯の所得はサラリーマンの所得を上回っている。生活水準で見て現在最も豊かな地域は、北陸3県など地方の農業地域である。他方で、埼玉県や千葉県など首都圏は、劣悪な住宅事情なども考慮すると、全国で最も生活しにくい地域になっている。これは過疎地方の既得権が既成事実化し、税金の使い方に大多数の有権者の民意が反映されていない結果である」。全くその通りである。

 また、親による子供の虐待事件が多い背景の1つとして、井堀氏は、親が子供を育てる明確な経済的動機を失ったことも大きいのではないかと、次のように述べる。親が利己的に行動する場合、昔は、子供をきちんと育てれば、親の仕事を手伝わせたり、親の老後の面倒をみてもらえるという見返りがあった。しかし、家庭と仕事場が離れたことや社会保障制度の充実などで、子供に老後の面倒をみてもらわなくてもすむようになった。その結果、親としては子供をきちんと育てるメリットが乏しくなった、と。うーん、そうかなあ。 

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2009年9月19日 (土)

藤井財務相の発言から

 鳩山新内閣では主要ポストの1つが財務大臣だが、就任したばかりの藤井財務相は17日の記者会見で財政健全化について次のように述べた。

 「日本の財政状況は先進国で最も悪い。しかし、財政のために経済をつぶしてはいけない。さりとて野放図でいいとは全然思っていない。財政の正常化のために長期目標を立てる。これは国家戦略局の大きな仕事だ。

 これまでプライマリーバランス(基礎的財政収支)だけを言っていたけれども、GDP対比の借金総額も大事な基準だ。それらを含めて財政再建の目標を立てなければならない」と。

 また、藤井財務相は特別会計の埋蔵金について、「ストックの埋蔵金は借金の返済に回すべきだ」とし、フローの埋蔵金については、財源として使うことを考えなければならないと語った。

 経済危機だからといって、財政の危機のほうを忘れてもらっては困るが、その点、藤井財務相は旧大蔵省の出身だから、財政問題の重要性は十分わかっているようだ。

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2009年9月10日 (木)

榊原英資氏、民主党の政策へのオススメ

 民主党の有力シンパである元大蔵省財務官の榊原英資早稲田大学教授が9日、日本記者クラブで新政権へのリコメンデーション(お勧め)を語った。以下、会見から。

 マクロ経済政策の記述がマニフェストになかった。この1ヵ月ぐらいのうちに景気対策を打つべきだ。いまのままだと、年末から年始にかけて景気に二番底が来る。補正予算は増額修正すべきであり、無駄な歳出のカットは来年度予算以降でよい。

 景気対策の財源は国債の新規発行でまかなうしかない。どこかの歳出を削って財源を捻出するというのでは景気対策にならない。いまの金融市場では10兆円単位の新規発行を受け入れ可能だ。民主党の言う16兆円は新規国債発行でまかなえばよい。

 日本が危機的財政状況にあるとは思っていない。日本は世界最大の債権国、米国は最大の債務国である。したがって、日本は国債の50兆円から100兆円の新規発行は問題ない。中長期の財政規律は大事だが、何年先にPB(基礎的財政収支)が復活するという目標さえあればよい。時間をかけて借金を減らしていけばよい。

 第1期は増税をしない。無駄のカットをできるだけ行なう。第1期の4年間のうちに年金、医療の改革プランを議論し、作り上げる。そして、それを提示して選挙に臨む。勝てば、第2期に実施する。

 国家戦略局に法的権限を与えるべきだ。予算の大枠を決める権限、各省庁に指示する権限など。そして、各省の設置法を廃止すべきだ。民主党がやろうとしていることはある種の平和革命であり、設置法廃止はその重要な武器である。一方で、改革派の官僚ないし改革派になりうる官僚と組むことが大事だ。

 地方分権で最初にできることは、ひも付き補助金をやめること。ひも付きでない交付金の形で出せばよい。地方分権は基礎的自治体を中心に考えるべきだ。昔の藩の単位で“廃県置藩”がよい。いまも昔の藩の単位で伝統や文化がある。道州制は絵に描いた餅だ。

 国の行政のかなりの部分をこうした基礎的自治体に移すべきだ。年金は税でやるべきで、国が保険をやるのはやめたほうがいい。保険の本質は資産運用だが、厚生労働省にそのノウハウはない。文部科学省が教育行政をやるのはやめて、地方に分権したほうがよい。教育はユニークな学校が地方、地方にあってよい。多様なパスがあるのが望ましい。

 後期高齢者医療制度の廃止に賛成だ。医療は保険制度でやるべきではない。医療目的税をとってやるべきだ。ただし、財政的に持たないから、混合医療制度を実施すべきである。歯医者でやっているように、これ以上の治療は自己負担してもらうというやりかただ。

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2009年9月 1日 (火)

新政権とムダ退治

 事前に予想されていた通り、民主党が大勝した。勝って兜の緒を締めよ、ということわざがあるように、これからの100日ないし年末までの4ヵ月のうちに、国民の多数がなるほどと思うような成果を挙げれば、新政権はしっかりと根を下ろすことになるだろう。

 民主党の代表や代表代行あたりに次ぐ幹部の人たちはよく勉強しているようで、政策論議がしっかりしている。ネクスト・キャビネット(影の内閣)に顔を連ねる人たちとも重なるが、彼らに政治を任せることにほとんど不安はない。自民党のほうが、そういう点では人材の層が薄い。

 しかし、民主党が、社民党などと連立をはかるにせよ、政権をとったら、すぐに閣僚に就くはずのネクスト・キャビネットを“白紙”にしたのは問題がある。16日の組閣までの間、日本の政治はほぼ機能停止となってしまう。100人の議員を霞が関に送り込むというのはいいが、そうであればこそ、スタンバイの態勢にあるネクスト・キャビネットをまず先行して送り込むことが必要ではないのか。そのあたりの基本的な方針変更は、民主党の指導層内部における対立抗争の兆しのような気もする。

 国民の1人として大いに関心があるのは、民主党がマニフェストに書いた個々の約束を実行していくうえで、官僚たちをどう使うかだ。ムダの排除と言うが、何がムダなのか、1つ1つ個別政策の要不要を追及していくやりかたは正当だが、検討の時間を踏まえると、成果は自ずと限られる。

 一方で、7兆円余の財源をひねり出せという大きな枠組みだけを財務省に命じたら、同省は各省庁の予算要求額を一律カットするという答しか出せないだろう。道路建設などを大幅に減らすにしても、ゼロにするわけではないとしたら、優先順位をどうやって決めるのか。地方自治体の要求などもある。補正予算の修正および2010年度予算の編成で、民主党がどんな方針を打ち出すか、また、それを貫くためにどういう手立てをとるのか、興味深い。

 ところで、北沢栄著『亡国予算 闇に消えた「特別会計」』(2009年5月)を読んだら、いろいろ教わった。主要先進国にはない特別会計の制度をやめて、一般会計一本に統合すべきだと提言している。それがムダの体系を生む資金源を制度ごと葬る改革だと述べている。予算を個別に見直す改革では、時間ばかりかかって部分的改革にとどまらざるをえないと言う。

 また、同書によると特別会計の埋蔵金は約50兆円あるという。また、特別会計の不用額(使い残し)の規模は92年度以来、ほぼ一定しているから、「特別会計から毎年、少なくとも10兆円規模を一般財源もしくは国債の償還用に継続的に活用できる」という。

 このほか、「埋蔵金」がらみで独立行政法人や天下り公益法人にも相当の埋蔵金があると指摘している。独立行政法人には2兆円超、天下り公益法人には少なく見積もっても10兆円規模の埋蔵金があるという。

 民主党の主張するムダの削減とか、埋蔵金の活用は、この『亡国予算』の論旨と共通している。そういう点でも、本書の内容は興味深い。

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2009年8月10日 (月)

市町村で平均年収が日本一の多摩市

 8月7日付け日本経済新聞朝刊の地域版に、「多摩の断面」というカット付き囲み記事が載った。東京都下、多摩26市の自治体職員の平均年収が東京都23区平均より27万円高いと指摘し、「多い地域手当や独自制度」、「お目付け役不在が影響」という見出しがついている。

 日経調査(2008年4月現在?)によると、都内自治体で平均年収が高いのは、1位多摩市、844.5万円(平均年齢46.2歳)、2位武蔵野市、798.3万円(同43.3歳)、3位八王子市、795.1万円(同45.3歳)、20位の目黒区でも748.3万円(44.8歳)である。ちなみに全国の市区町村ランキングでみると、多摩市は1位、武蔵野市は4位、八王子市は5位だという。目黒区は47位に位置する。

 多くの市区町村の公務員平均年収は国家公務員のそれより高いといわれる。この記事では、実際に資格が上がらなくても、一定年限が経てば上の資格の給与を支給する「わたり」、給与表の級を増やして高い給与を支給する「足伸ばし」とか、地域手当を国の基準より多く支払うといったからくりを指摘している。

 そして、「国には人事院、都道府県や23区には人事委員会があるが、大半の市町村にはない」として、お目付け役が不在だと書いている。

 以下は私見だが、本来、市町村の議会・議員が行政をチェックすべきなのに、現実には、議会・議員は首長や自治体職員、すなわち「自治体政府」と渡り合うだけの力を持っていない。現実には、大半が単なる“翼賛会”に過ぎず、「自治体政府」からさまざまな便宜供与などを受けたりしている。

 また、ほとんどの首長は自治体職員(その背後に労働組合がある)の協力なしでは行政が進まないから、役人の言うことを受け入れがちだ。国政の官僚支配政治と似た状況が地方政治にも起きている。多摩26市の平均年収が高いのは、こうした公務員(および労組)天国を反映していると思う。

 問題は、地方自治体の住民が市町村の行政に対しても、また議会の活動に対しても、ろくに関心を示さないことだ。それが多摩26市の高い平均年収を許しているのである。国が地方政治に対して権限もカネも握っている弊害の現われだ。

 ところで、いま、総選挙のマニフェストで、自民党や民主党は主要な公約の1つに地方分権・地域主権を取り上げている。その1つが、地方財政が窮迫しているため、地方自治体に財源を移すというものである。だが、現実の地方自治体の行政や議会を前提にすると、自主財源が増えれば増えるほど、職員の給与引き上げなど、ろくなカネの使い方をしないのではないかと懸念してしまう。

 上から制度を変えれば、暮らしを大事にする地域主権の政治や行政が自動的に実現するわけではない。住民の草の根からの活動が広がって初めて、地域の問題を直視し、行政を住民本位に変えることができる。多摩市には、議会・議員の活動を監視する住民運動があるが、市民の参加や支援はなかなか広がらないらしい。でも、議会や行政を住民サービス優先に変えることができるのは、そうした運動しかないと思う。

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2009年7月26日 (日)

企業会計ベースでみた日本国の財務データ

 国の会計は「出るを計りて入るを制す」とされる。初めに「出る」(支出)があり、それを賄うために「入る」(税収、公債発行)を操作するというわけで、多額の公債を発行する近年の日本財政にはそれを強く感じる。このほど財務省が発表した07年度「国の財務書類」をみてもそうだ。

 この「国の財務書類」には、①一般会計の財務データ、②一般会計と特別会計とを合算し、省庁間の債権・債務等を相殺消去した企業会計ベースの財務データ、③これに日本郵政株式会社、年金積立金管理運用独立行政法人など214の独立行政法人・特殊法人を連結した財務データ、の3通りのデータが載っている。

 3つのうち、一番、国の財務実態を表しているのは③だろう。これを紹介すると、07年度の「業務費用」は152.5兆円。GDPの約3割に当たる。当期純損失相当額(財源不足)は16.6兆円に達した。貸借対照表の「資産」は829.4兆円、「負債」は1100.5兆円。債務超過額は271.1兆円である。

 「負債の部」のうち、「公債」は418.2兆円、「郵便貯金」が180.7兆円、「公的年金預かり金」144.1兆円など、「資産の部」では、「有形固定資産(公共用財産など)」268.3兆円、「貸付金」242.3兆円、「有価証券」213.0兆円などが主なものである。

 ちなみに、「負債の部」のうちの「公債」が①では544.5兆円であり、②では675.7兆円となっている。この②の内訳をみると、普通国債543.7兆円、財投債等142.1兆円などとなっている。②と③の「公債」の金額が大きく異なるのは、独法・特殊法人が保有する公債が大きくて、相殺消去が257.3兆円にものぼるためとみられる。

 また、「資産」と「負債」の差額である債務超過額は①では349.0兆円、②では282.9兆円、③では、すでに記したように271.1兆円である。「公債」と比べると相当少ない。ただ、財務省は公共用財産などは売却して債務の返済に充てることが基本的に予定されていないとして、「資産・負債差額が必ずしも将来の国民負担となる額を示すものではない点に留意が必要」と注書きしている。言い換えれば、国民の負担はもっと大きいことを示唆している。

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2009年7月19日 (日)

経済同友会のアピールが、財政健全化法を求めた

 経済同友会は例年、夏に軽井沢セミナーを開催する。ことしのセミナーは「新しい国づくりに向けた覚悟と行動を求める」と題するアピールをまとめた(17日発表)。その柱の1つが財政の健全化で、早急に「財政健全化法(仮称)」の制定を求めた。

 その法の内容については、①政府の規模(国民負担率)の上限を定め、その範囲内での財政運営を行う(Pay as You Go 原則の徹底)、②社会保障給付総額の伸びを名目経済成長率の範囲内に設定する、などを実施するとともに、新たな財政健全化目標を示すべきだとしている。

 また、アピールでは、緊急経済対策といえども、「賢明な支出」の条件に照らして優先順位を定めるべきであるとし、財務省と有識者の第三者から成る監査機関「緊急経済対策評価委員会(仮称)」を設け、政策目標や期待された効果に比べた事後評価を行うよう求めている。

 また、同日、経済同友会版「骨太の方針」を発表した。それによると、日本財政の持続可能性が懸念されているとして、その原因の1つである巨額の財政赤字を減らしていくために財政健全化への取り組みを挙げている。財政健全化法については、「新たな財政健全化目標を制定し、与野党間で目標を共有する」としている。

 また、「財政健全化目標の再設定」として、①次年度予算:集中改革期間を通じ、「政府の大きさ」(一般歳出規模の対GDP比)を07年度水準以下にする、②短期:基礎的財政収支の赤字幅を毎年1~2%ずつ削減する、③中長期:国民負担の増加を含めた改善措置を講じ、債務残高のピークアウトを図る、と述べている。

 そして、新しい歳出削減計画を策定し、行政効率化、規制改革と一体になった歳出削減を進める、としている。

 同友会版「骨太の方針」の「財政健全化の基本的考え方」は「歳出・歳入・経済の三位一体改革」だという。即ち、「歳出削減・効率化」と「国民負担の見直し」と「経済成長の実現」の3つから成る。歳出削減では、「これまで聖域視されてきた社会保障や地方への財政移転などの支出も将来世代のため抑制に取り組む」と言い切っている。

 横道にそれるようだが、アピールでは「規制改革基本法(仮称)」を制定するよう求めた。規制改革会議の後継組織は民間人から成る第三者組織とし、独立した事務局を有し、関係省庁に対する勧告権や調査権を持つよう求めている。

 経済同友会は提言はたくさんするが、その実現のために活動することはまずない。したがって、ほとんど言いっぱなしで終わる。しかし、財政危機の深刻さは十二分にわかっているはずだし、将来世代に対する責任も感じているだろう。ここらで、“どういう会?”なんぞと言われないように、会員が挙げて財政健全化に本腰を入れて取り組んでいただきたい。

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2009年7月 5日 (日)

財務省による予算執行調査

 財務省が3日、「平成21年度予算執行調査」の結果を発表した。20年度の予算のうちから14省庁の73件(事業)を抽出し、そのうちの調査を終えた57件について発表したもの。調査結果は事業等に関するものと庁費、契約等に関するものとに分かれており、事業等に関する調査は必要性、有効性、効率性の視点で調べたという。その結果によると、すべての件(事業)で見直しが必要だとしており、全部または一部の廃止を求めるものもある。

 73件(事業)は予算編成過程で執行の実態についても詳細に調査すべきだと財務省が判断したもので、予算額は全体で2兆1千億円(朝日新聞3日付け夕刊)。一般会計がほとんどで、特別会計、独立行政法人も1件ずつ含んでいる。

 だが、特別会計、独立行政法人、特殊法人のほうが予算のむだづかいが多いといわれているのだから、そっちのほうももっと調査してほしい。会計検査院は決算書が出そろってから本格的に検査に入るから、各省庁にしてみれば、とっくにすんでしまったこととして、何を言われてもあまり痛くもかゆくもない。

 57件の個々の件(事業)をみていくと、競争入札をすべきなのに、実質的に指名発注につながるような条件を設けるなどして国の方針に違反するケースなど、明らかに犯罪に等しいことが行われていたりする。天下り先との癒着による可能性が大きいが、それはさておき、こうした違反を、きちんと処罰してもらいたい。いまの官僚主導の政治は、そこがきちんとしていないから、国民から見放されるのだと思う。

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2009年7月 2日 (木)

経済財政諮問会議の資料を読んで

 7月1日の経済財政諮問会議は与謝野馨氏が担当大臣としての最後の会合だった。でも、提出資料を読んでいると、「言うだけなら何とでも言える」という感じが強くする。

 「平成22年度概算要求基準のポイント」には、「特別会計についても、一般会計と同様、事務・事業を徹底的に見直し、合理化・効率化を促進」とある。一般会計より図体が大きく、「はなれでスキヤキを食べている」といわれる特別会計に対して、この程度のことしか求めていないのである。

 「公益法人向け支出については、国民の視点に立って無駄を根絶し、支出を縮減する観点から徹底して見直し」と書かれているが、こんな抽象的な総論に従って各官庁が歳出を減らすだろうか。

 資料のひとつ「平成22年度予算の全体像」にも、似たような表現がある。「不断の行政改革の推進と無駄排除の徹底を継続していく必要がある」。しかし、政府・与党のやっていることをみれば、これは単なる枕ことばなのだろう。

 また、「安心社会を実現するための雇用を軸とした新規施策については、「安定財源なくして制度改正なし」との原則に立って、税制の抜本的な改革や歳出歳入改革の中で、具体的な内容と併せて所要の財源確保の検討を進める」というくだりがある。本当は何をするのか、したいのかが、さっぱりわからない。

 一方で、財政状況については、危機的な事態にあることを数値で示している。国と地方を合わせた基礎的財政収支の赤字は平成20年度において対GDP比で4%程度、21年度で8%程度にもなるという。利払い費を含む財政収支の赤字は20年度において対GDP比で6%程度、21年度で8%程度に達するという。そして、国・地方の政府債務残高は21年度に163%程度になることが見込まれている。

 このように、欧米をはるかに超える財政赤字は、少子高齢化などとならんで日本の抱える深刻な課題であるはずだ。しかし、いまは景気対策しか考えないといった視野狭窄症が跋扈している。

 経済財政諮問会議は小泉首相と竹中担当大臣のときに官邸主導の政策決定システムとして機能した。その後は、「役者」の交代で、党・官僚主導の古い政策決定システムに戻ってきた。1日の会議の資料に目を通すと、諮問会議がほとんど意味のない組織になったこと、そして、自民党のたそがれの到来を感じる。

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2009年7月 1日 (水)

一般会計と特別会計の連結で見えること

 財務省が「特別会計のはなし」の新版を発表した。日本の国家財政は一般会計よりも特別会計のほうが規模が大きい。しかし、議会では長年、一般会計のほうにばかり目を向けて審議してきたし、メディアも一般会計の内容を中心に報じてきている。だから、特別会計は所管官庁の好きなように運営されてきたという面があるし、各官庁のおいしい利権や天下り先にもなってきた。ここでは、一般会計と特別会計とを一緒にしてみたときの財政規模や、その特徴を見てみる。

 09年度予算の一般会計と特別会計とを連結し、重複部分を除いた純計ベースだと、歳入220.1兆円、歳出206.5兆円。うち一般会計が歳入81.6兆円、歳出37.1兆円なのに対し、特別会計は歳入138.5兆円、歳出169.4兆円に達する。歳出では特別会計が一般会計の4倍超の規模である。

 主要経費別歳入歳出純計額を見てみると、歳入220.1兆円のうち、公債金及び借入金が何と91.1兆円にも達する。租税及び印紙収入は48.0兆円に過ぎない。次いで保険料及び再保険収入35.1兆円などである。

 そして、歳出では、国債費が78.9兆円と一番多い。次いで、社会保障関係費が68.5兆円に達する。これら2つで歳出全体の7割を超える。日本の国家財政が借金まみれ、極端な借金依存になっていることが浮き彫りになる。

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2009年6月24日 (水)

最後?の“骨太の方針”

 政府の「経済財政改革の基本方針2009~安心・活力・責任~」(「骨太の方針」)が23日の閣議で決定された。「短期は大胆、中期は責任」との観点から、財政健全化を推進し、財政健全化目標を次のように定めた。

 「①国・地方の債務残高の対GDP比を基本目標と位置づけた。これを2010年代半ばにかけて少なくとも安定化させ、2020年代初めには安定的に引き下げる。②今後10年以内に国・地方のプライマリーバランス(PB)黒字化の確実な達成を目指す。また、利払い費を含む財政収支の均衡を視野に入れて収支改善努力を続ける。③まずは景気を回復させ、5年を待たずに、国・地方のPB赤字(景気によるものを除く)の対GDP比を少なくとも半減させることを目指す。ただし、世界経済等の流動的要素にかんがみ、時宜に応じた検証を行う。」

 しかし、この「骨太の方針2009」は、社会保障費の自然増を抑制(年度ごとに2200億円)するというこれまでの政府の方針を撤回しているし、「昨年度とは異なる概算要求基準を設定し、メリハリの効いた予算編成を行う」と述べている。与謝野財務相は党内のばらまき圧力で後退するばかり。総選挙を前にして、財政健全化の前途は一段と険しくなった。

 小泉政権のもとでは、経済財政諮問会議が改革志向を鮮明にした「骨太の方針」をつくり、それを与党や政府に押しつけることができた。だが、ポスト小泉では総理大臣の強力なリーダーシップがないため、改革の揺り戻しが始まっている。おりしも、総選挙で自民党が下野する可能性は日に日に高まっているから、「骨太の方針2009」も短命が予想される。

 ただ、財政悪化の進行は民主党が政権の座に就こうと変わらない現実である。既得権益のしがらみが自民党よりは少ないから、財政改革をやる気になれば、民主党は相当のことができるはずだ。そこに期待するしか道はない。

 

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2009年6月18日 (木)

党首討論での財源をめぐる相違点

 17日、国会で行われた麻生首相と鳩山民主党代表との党首討論では、社会保障費などの増大を賄うのに、財源をどこから見つけ出すかで意見が分かれた。首相は3年後、経済が好転した段階で消費税を含む税制の抜本改革を行うと述べた。社会保障費をきちんと確保するには、消費税増税が避けて通れないと、かねての主張を繰り返した。

 これに対し、鳩山氏は、民主党が政権を握ったら、まず無駄を徹底的になくすという方向からスタートしたい、と述べ、20兆円ぐらいを新しい政策の予算として計上したいと語った。また、政権をとっても4年間は消費税増税をしないと明言した。これもかねての民主党の主張である。

 一般会計と特別会計とを連結すると210兆円になる。鳩山氏は、そのうち、公共事業、施設費、人件費、補助金を合わせると70兆円になるとし、このうち、随意契約の見直しとか、不用不急のものを後に回すとかすれば10兆円程度減らせると主張した。つまり、それだけ、新たな財源が生み出せるというわけである。

 しかし、麻生首相は、210兆円の話からいきなり20兆円も新たに使える財源を生み出せるというような話は現実味を欠いていると鳩山氏を批判した。

 20兆円を新たな政策の予算に計上するには、新規に国債を増発するか、既存の歳出を削減する必要がある。鳩山代表の説明だと、10兆円は捻出できるとしても、あと10兆円をどうやってひねりだすかが明らかでない。そこを十分に説明してもらいたかった。

 一般に、国家予算というと、一般会計だけを論じることが多い。しかし、特別会計を合わせた連結ベースで予算・財源を議論すべきであり、その点で、鳩山代表の考え方は正しい。特別会計は一般会計よりも規模が大きいのに、縦割り的に各省庁の官僚がかなり裁量的に利用しており、いまだに実態が明らかにされていない“伏魔殿”である。独立行政法人とか特殊法人などが多額の国費を浪費している可能性が高い。天下りもそれとつながっている。民主党がそこにしっかりとメスを入れることができれば、“埋蔵金”のような財源、それもフローとしての財源を発掘することは十分期待できるだろう。

 官僚が明らかにしたがらない特別会計の実態を白日のもとにさらすことが可能なのは、問題意識のない自民党に代わって民主党が政権の座に就くことである。しかし、それで国民が望む財政の健全化を達成できるかどうかは、政権党としての民主党の能力・実力にかかってくる。そこがもっとも懸念されるところだ。

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2009年6月14日 (日)

スウェーデンの高負担は開かれた政府への信頼があってのこと

 スウェーデンといえば、高福祉・高負担の国として知られる。成長政策庁のヤルマルソン長官がこのほど来日し、日本経済新聞の取材に対して語った記事が12日(金)付け同紙朝刊に載っている。同国も1960年代は日本と同じぐらいの税負担だったが、徐々に上がって、「ここ5年ほどはこれ以上、税負担を上げるのは難しいところまできた」という。

 同国の税および社会保険料負担を合わせた国民負担率は70%を超える。日本の国民負担率が約40%(巨額の借金を考慮に入れた潜在的国民負担率は50%ぐらい)だから、スウェーデン国民の稼ぎの手取りの割合は日本よりかなり低い。

 所得税率は地方税で26~35%、平均して約30%、高所得者には国税が加算される。法人税率は長官によると約26%。消費税は25%で、食料品、交通費などは12%。そして書籍、新聞などは6%だそうだ。

 長官は、国民が高負担を受け入れている理由について、「公共サービスで社会が機能しているという信頼感があるから」だと述べ、「納めた税金の分だけ受益があるということだ」と指摘した。

 では、その信頼はどこから生まれているのか。長官は「政府が国民に開かれていることではないか」、「税の多くは地方税」であり、税が何に使われているかの情報が納税者に開示されていることを挙げた。

 長官の話をもとにスウェーデンと、中福祉・中負担(麻生首相がめざす)の日本とでは、何が違うかを改めて考えた。①日本では政治家も政府も信頼されていない。②日本は、国民も政府にしてもらうことばかりを求めがち。受益と同時に負担をも受け入れるようになっていない。政治も国民に理解してもらう努力をしない。避けて通ろうとする。

 ③日本では企業悪という観念がいまだに残っていて法人を敵視するきらいがある。だから、法人課税を重くすれば税収がたくさん得られるという主張が根強い。これに対し、スウェーデンは企業の国際競争力が弱くなれば税収自体がなくなるという観点で法人税率を低めにしている。④スウェーデンは地方分権が徹底している。納めた税金がどう使われるかが住民によくわかる。どう使うかへの住民の発言力も強い。日本は、中央集権的で、税の使途の透明度は国、地方を問わず、きわめて低い。

 スウェーデンは人口が900万ちょっと。日本はその10数倍もある。それを理由に、スウェーデンのような小さな国と同じようなことはできないという意見もある。しかし、社会保障関連の財政負担が年々膨らみ、財政赤字が世界最悪の状態を放置したら、日本国の経済はひどいことになる。長官の話の中には、日本にとって参考になる点が少なくない。

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2009年6月10日 (水)

役人言葉で書かれた財政健全化目標の先延ばし案

 9日の経済財政諮問会議で、有識者議員が財政健全化の新しい目標を提示した。これまでの、2011年度と想定していた国・地方の基礎的財政収支(PB)の黒字化を引っ込め、代わりに、以下のような目標を示した。

 国・地方の債務残高対GDP比を財政健全化目標の基本と位置づけた。「2010年代半ばにかけて少なくとも安定化させ、2020年代初めには安定的に引き下げる」としている。

 このため、今後10年以内に、国・地方のPB「黒字化の確実な達成を目指す」。「利払い費を含む財政収支の均衡を視野に入れて、収支改善努力を続ける」。

 まずは景気回復を優先し、5年を待たずに、国・地方のPB赤字(景気対策によるものを除く)の対GDP比を少なくとも半減させることを目指す。ただし、この目標については時宜に応じて検証する。

 この新たな目標を掲げた文章は読みにくい役人言葉で書かれている。そしてあいまいな表現が多い。「2010年代にかけて少なくとも安定化させ」、「2020年代初めには安定的に引き下げる」というのは数値で表現したら、どういうことなのかがわからない。また、「均衡を視野に入れて、‥‥努力を続ける」というのは、具体的な数値で例示すると、どういうことなのか。「赤字(景気対策によるものを除く)」とあるが、その意味がわからない。

 それに、なぜ、PB重視の財政健全化だったのが、債務残高対GDP比が基本に変わったのか。その説明もない。

 「社会保障と財政の持続可能性を早期に確保していくことは極めて重要」という有識者議員の認識は適切だ。そのためには、国民、有権者に、問題の所在と望ましい政策とをわかりやすく説明し、痛みの受け入れを含めて、十分に納得してもらうことが欠かせない。政権の交代があろうとなかろうと、そこは重要な点だ。

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2009年5月12日 (火)

松阪市の「借金時計」

 三重県松阪市のホームページに、1秒ごとに市の「借金」がいくら増減するかを表す「借金時計」が載っている。平成21年度は借金が14億円余減る見込みなので、珍しいことに「借金時計」は1秒につき借金が約46円減る表示になっている。

 同市はことし2月に、33歳と当時、全国で最も若い山中光茂新市長が就任した。同氏は市の財政がことし3月末現在で、一般会計が582億円の借金を抱え、特別会計、企業会計を合わせると1277億円にものぼる借金になっているため、歳出削減に努めている。

 ホームページの「借金時計」は、市民に財政状況に関心を持ってもらうとともに、市役所職員が常に借金を子供や孫たちに負わせていることを感じながら行政にあたるようにするためだそうで、情報量も多い。ここまで詳しいのには感心した。それに加えて、同市長は「市庁舎前に市債残高の状況を示す「借金時計」を設け、市民に借金削減への理解を求める計画」(日本経済新聞11日付け朝刊)だという。是非、実現してほしい。

 借金時計については、2006年10月3日および2008年9月11日に、このブログで取り上げたことがある。現在、財務省のホームページでは、1秒ごとに動くデジタルカウンター方式をとっていないので、やっていないのに等しい。高知県の借金時計も、県のホームページをのぞいたが、いまは見当たらない。したがって、国も都道府県も財政健全化のための「借金時計」を設けていない。市の段階では、松阪市が初めてではないか。

 本来、「借金時計」を設けて、国や地方公共団体に財政改革を行なうよう圧力をかけるのは、納税者の役割だと思う。この国では、情けないことに、納税者は、財政赤字が積もれば、結局、増税などの形で自分たちに降りかかってくるという問題意識、危機意識を欠いている。国民、住民に納税者の意識が乏しいからだ。

 だから、カネを使う政府自らが財政健全化を納税者に訴えるという珍妙な現象が起きる。せめて、日本では経団連会館(最近、新しい建物に移ったばかり)の前に「借金時計」を設置するという話があってもよかった。

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2009年4月15日 (水)

財政審の地方懇談会(山形)でも多い意見は?

 財務省の財政制度等審議会財政制度分科会財政構造改革部会(なが~い名称だ)が4月7日に山形市で開催した地方懇談会の模様(西室部会長の会見)を記録で読んだ。

 地元の各種業界の代表、市長、NPO法人代表から①当面の財政運営と地方活性化施策、②高齢化の下での社会保障制度とその財源、③国と地方の在り方、の3点について意見を聴取したという。

 その内容をいちいち紹介するのは避けるが、休業補償助成金を拡充してほしい、農業に直接補償金を出してほしい、使途自由の地方交付金を増やしてほしい、中核的な都市形成に財政支援をしてほしい、といった、国の財政による地方支援を求める声が多い。道路建設についても、地方の連携を推進するのに必要だからと要求する市長もいる。それらとは違うが、不妊治療にも医療費などの支援をという意見や、旧来型の公共事業を見直し、地域交通の整備をという意見などもある。

 一方で、「新しい設備の投資ばかりが景気対策上、評価されるが、既存設備のメンテナンスをきちんとやれば、新規投資は必要ない」とか、補助金制度について「申請が少ないものが多すぎる。そういう制度は意味がないのでは」とか、「補助金の名目で支出が確定すると、断るわけにはいかないから無理して使うようなことがある」といった趣旨の疑問が投げ掛けられた。それに、旅館の業界からは、「自己責任で頑張ってやる以外にない。国もできる補助はしてほしい」との発言もあった。

 そして、一部だが、社会保障費の増加分の一部を抑えることに対して、「税金は高くてもいい」と消費税の引き上げなどで社会保障の充実を求める声もあった。

 全体として言えば、国がもっと財政支出を行なうことを求める意見が多数で、一部に、財政のムダ遣いがあること、政策に整合性がないこと、社会保障費の増大をまかなうためには増税も必要という指摘があったと総括できよう。

 日本の財政状態は危機的段階どころではなくなりつつある。にもかかわらず、山形県での懇談会の地元発言者は、まだ、国の財政にぶら下がろうとする人が多数だ。国の財政危機に対する国民の認識はまだまだであることがよくわかる。もっとひんぱんに地方懇談会を開催し、国民に財政の実態を知ってもらうとともに、地方から見た中央政府の財政の問題点をどんどん指摘してもらうことが必要だと思う。

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2009年4月 9日 (木)

「新経済対策」を斜めに見ると

 政府・与党は新経済対策を10日に決定するという。それを財政面から裏付ける09年度補正予算(案)は15兆円を超え、事業規模では総額57兆円弱というから、これまでにない大規模なものだ。

 たまたま株価が回復してきているが、国内経済はまだまだ雇用悪化や企業倒産増が予想される。したがって、補正予算を組むのは必要だが、首相が「追加経済対策を」と言えば、待ってましたとばかりに真水が15兆円超もの大規模な補正予算(案)が出てきたのにはいささかびっくりする。

 09年度予算案をつくったあと、経済情勢の悪化で、上乗せが求められる状況になっていったから、各省庁は内々、追加対策の準備をしていたのだろう。それに、日本の官僚は政策をひねり出してカネを使うのは得意中の得意である。たちどころにもっともらしいメニューを取り揃えたというわけだ。天下り批判などで最近は逼塞していた官僚の皆さんにとっては、久しぶりにわが世の春だと言えよう。

 しかし、カネを使うことが経済対策だと思い違いしている議員や官僚が、いまこそチャンスと、普段なら絶対通らない予算要求を次々に出し、それらがそのまま認められたというのは遺憾千万だ。子育て、安心・安全、環境、農業、地方などというキーワードを用いれば、予算がとりやすいというのが見え見えである。

 GDPの落ち込みの多くは自動車、電機などといった輸出産業の輸出減による。その落ち込みを内需の増大でまるまるカバーしようと財政がフルに出動するのは間違いだ。例えば、にわかに道路予算を増やしたら、次の年はそれをやめれば、また内需が落ちるから、簡単にやめるわけにいかない。その次の年も同様で、いったん道路予算を増やしたら、ずっと続けざるをえなくなるおそれがある。こうした政策は、自ら借金王と称した小渕恵三内閣の過ちを繰り返すことになる。

 自動車の輸出も内需も、回復したとしても、元通りには戻らない。多くの人が言うように、せいぜい7~8割だろう。したがって、その程度でも利益が出るように経営を改革するのが企業の課題である。それに対して、政府・日銀がやることは雇用調整や資金繰り、さらには技術開発面などで企業を支援することにとどまる。ゆるやかに縮小均衡できるようにだ。もちろん、一方で、政府は成長産業を支援する必要があるが、これからは暮らしの質を重視し、これまでのような、国として何が何でもGDPを縮小させないという発想はもうやめにすべきだと思う。

 新経済対策では国債を10兆円ぐらい発行することになりそうだ。09年度予算(当初)では33.3兆円(うち赤字国債25.7兆円)の国債発行を予定しているから、合計で44兆円ぐらいの国債を発行せねばならない。一方で、09年度予算は46.1兆円の税収を見込んだが、いまの見通しではそれを4、5兆円は下回りそうだという。そうだと、税収<国債という、かつてない状況になる。財政危機、ここにきわまれりだ。

 先のG20で各国が財政出動を約束したが、これほど早く財政拡大を表明するのは日本ぐらいだ。それも、政治家が自ら政策を主導するのではなく、政策の多くを官僚などにおんぶしているからだと思う。それにしても、財政危機が世界で最も深刻な日本が、巨額の債務のことを忘れて、一番乗りで大盤振る舞いの財政出動をするのは、とちくるっているのではないか。

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2009年4月 6日 (月)

消費税と社会保障給付のセットで所得格差は是正されるとの説

 4月2日付け日本経済新聞朝刊の「経済教室」欄に、吉川洋東京大学教授と松元崇内閣府政策統括官が「社会保障費の財源確保  消費増税 議論逃げるな」と題して書いている。そこでの主張の1つは、消費税の全額を年金、医療、介護の社会保障給付と少子化対策とに充てる区分経理を行なえば、所得格差は是正されるという内容だ。

 税率がフラットである消費税は高所得者の負担が相対的に低く、低所得層の負担が重いとして、課税の逆進性が問題にされることがある。そういう視点からは、社会保障費の増大や財政危機への財源対策として消費税を引き上げるということには反対だという意見が出る。

 ところが、吉川氏らの見解によれば、消費税の負担と社会保障の受益とを比べると、対年間収入比で、年収200万円未満は負担0.71%、受益1.09%、ネットの受益0.38%。年収200万円~300万円は負担0.55%、受益0.68%、ネットの受益0.13%‥‥と、年収500万円までは「負担<受益」で、ネットの受益はプラスになっている。

 それ以上の年収となると、負担の比率も少なくなるが、受益の比率のほうがもっと少なくなるので、ネットの受益がマイナスとなり、かつマイナスの幅が大きくなっている。年収1000万円以上は負担0.23%、受益0.13%、ネットの受益はー0.10%である。

 2008年11月28日の経済財政諮問会議に民間議員(吉川氏もその1人)から提出された資料は「粗い試算」と断りつつ、同じ内容をグラフにして示した。そこでは「社会保障目的の消費税増税により所得再配分は強化される」と書いてある。

 この諮問会議における民間議員の見解は、2008年12月24日の閣議決定〔持続可能な社会保障構築とその安定財源確保に向けた「中期プログラム」〕の基本的な骨格となっている。「中期プログラム」の「1.税制抜本改革の道筋」では、「消費税収が充てられる社会保障の費用は、その他の予算とは厳密に区分経理し、予算・決算において消費税収と社会保障費用との対応関係を明示する」、「消費税の全税収を確立・制度化した年金、医療及び介護の社会保障給付及び少子化対策の費用に充てる」と言い切っている。

 吉川氏らは「経済教室」において、日本の消費税に相当する付加価値税が北欧諸国では25%にもなっているのに、北欧諸国の所得格差は日本よりも小さいと指摘。「消費税と社会保障給付の組み合わせで所得格差は是正されるのである」と述べている。

 ただ、問題は消費税率引き上げのタイミングだ。吉川氏らは、不況克服後、速やかに上げないと、景気が下降して実施ができなくなることを懸念している。その意味で、景気回復がどうなったら引き上げるか、いまから条件を詰めておく必要がある。

 もっとも、自民党・公明党の連立政権が野党に政権を渡すことになれば、現政権の閣議決定もほごにされる。そのときは、社会保障政策は財源問題を含めて新しい政権のもとで見直されることになるが、いずれにせよ、吉川氏らの見解は見直しの際にも選択肢の1つになりうると思う。

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2009年3月29日 (日)

上山信一著『自治体改革の突破口』の財政赤字制御策

 自治体改革のアドバイザー、上山信一慶応大学教授が最近、『自治体改革の突破口― 生き残るための処方箋―』を出版した。その中で、「財政赤字をどうやって制御するか」を書いている。「政府の財政はサラ金地獄と同様の制御不能に陥っている」とし、「この問題は国家全体の財務構造の改革なしには解けない」と言っている。

 日本では財務統制機能が各省庁に分散していて、全体像を把握し集権的に制御する機関が存在しないという。各省庁に任せていたら、不要な事業がやめられない。そこで、総理・官邸が集権的に制御する体制を構築せよと述べている。

 「財政再建にはそのための規律と統制の仕組みづくりが必要だ」という。それには以下の4つの仕組みが必要だという。第1に、マニフェストを掲げて政権をとると、新政権はマニフェストを官僚機構に実践させねばならない。そこで、大臣に「大臣マニフェスト」を作らせる。その前に、大臣は総理大臣および局長と十分に話し合う。重要施策の達成目標と期限を定める。そして、それらが実現できないと、大臣は責任を問われるようにする。

 第2に、各省庁の大臣は、予算や人事の実権を握っている局長や官房長に「局長マニフェスト」を作らせる。局長らに目標と期限を掲げさせ、結果責任をとらせる。

 第3に、各省庁に、経済財政諮問会議同様の、政策を審議・評価する機関を設ける。具体的には、現在の省議に民間人を送り込み、活性化する。この会議は実質的な決定機関とし、大臣は会議を主宰する。

 第4に、税を徴収する、予算を編成する、国有財産を管理するなどには、それぞれの官僚機構があるが、我が国には、「国家レベルの財務を一元的に統制管理する機関が存在しない」という。「政府の負債と資産の実態を把握し、問題点を分析する。その上で毎年の収入(税収)と支出(予算)を同時に制御し、かつ債務の圧縮や資産の売却のあり方、そして資金調達の工夫もする」のが本来の財務だという。したがって、一元的な財務統制機能の確立をという。

 上山氏は「どうやって財政再建、いや制御回復を図るか。原理は単純だ」という。第1に支出削減、そのための地方分権、第2に税収増、そのための大胆な規制緩和による経済活性化、第3に資産の有効利用ないしは売却だとのこと。しかし、実現は容易ではない。なぜなら、政府には倒産リスクがない、市場競争原理も働かない、民主政治は短期の利益誘導で歳出が膨張しがち、特に自治体の議会はその傾向が強いからだという。

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2009年3月28日 (土)

09年度予算が政府案のまま成立

 小沢民主党代表の秘書逮捕と代表続投の影響で、与党に対する民主党の攻勢がすっかり鈍ってしまった。09年度の国家予算案と予算関連法案は政府案通りに成立した。経済危機の真っ只中にあるから、予算案が今年度のうちに成立するのは歓迎されるが、政府案の問題点を指摘して修正に持ち込むぐらいのことが欲しかった。

 09年度の一般会計予算は88.5兆円(08年度は当初予算が83.1兆円、補正後は88.9兆円)。歳入の内訳は、税収が46.1兆円、公債金33.3兆円(うち赤字国債25.7兆円)などと「借金財政」だ。

 歳出の内訳は、一般歳出51.7兆円、国債費20.2兆円、地方交付税等16.6兆円となっている。一般歳出のうち半分近い24.8兆円が社会保障関係費である。とにかく社会保障関係費だけは急ピッチで増えている。また、借金増に伴い、国債費も増加している。

 いずれ09年度補正予算が組まれる見通し。したがって、補正後の予算規模は過去最大となるだろうし、国債の大規模な追加発行が予想される。

 09年度一般会計の当初予算をもとにすると、公債残高は09年度末に607兆円程度となり、地方の分を合わせると、重複を差し引いて国・地方の長期債務残高が804兆円程度に達する見通しという。このほかに、財政投融資特別会計国債残高が123兆円程度あるなど債務残高はもっと大きい。

 過去を振り返ると、一般会計の歳出総額と税収との差は1990年ごろを境に大きく広がり出した。いわゆるワニの口のようになっている。その開いた口が2005年度あたりから狭まり始めたものの、08年度からまた開き出した。歳出と税収との差は借金で賄っているから、年々、国債残高の増大に示されるように、国の借金は膨らむ一方だ。いまの経済危機はそれに拍車をかける。 

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2009年3月12日 (木)

与謝野財務大臣の心変わり

 自民党の中で財政健全化の旗振り役をしてきた与謝野馨財務大臣兼内閣府特命担当大臣(金融・経済財政政策担当)が、現在の経済・金融危機に直面して、財政健全化の旗を完全に降ろした。

 昨年には、サブプライム問題の日本への影響は蜂の一刺しか二刺し程度と言っていたのが、3月10日の記者会見では、「今は世界各国が合意しているように、経済回復のためにはあらゆる政策手段をとるという一般的な合意に沿って活動しようと思っています」と述べた。赤字国債の発行も容認するのかとの質問に対して、「あらゆる手段を容認するという意味です」と答えている。

 ここで思い出すのは、1997年秋に橋本内閣のもとで成立した「財政構造改革の推進に関する特別措置法」と、その後である。同法は2003年度までに国と地方の年度財政赤字をGDPの3%以下にする、赤字国債の発行をゼロにする、という内容だった。そのとき、与謝野氏は官房副長官として梶山官房長官を支え、同法成立に努めた。だが、その後の経済危機で、同法は1998年5月に改正され、改革は事実上、棚上げされた。そして、小渕内閣のもとで、財政構造改革停止法が成立し、公共事業を中心とする財政の大盤振る舞いが行なわれた。それが、財政危機をもたらし、今日、さらに危機は深刻化している。

 それなのに、与謝野大臣は、小渕内閣時代に戻るしかないと言っているのである。歴史は繰り返すというが、与謝野氏は、今回の皮肉な役回りをどう思っているのだろうか。あるいは、何とも思っていないのかもしれない。

 昨年8月、まだ福田内閣のとき、経済財政担当大臣だった与謝野氏は「大変緊急を要する事態に直面したときに、それに対応するような行動予算が必要か、あるいは財政規律が必要か、二者択一になることはありうる。そのときは、どっちかをとるという話ではなくて、両方少しずつとるという話ではないか」、「何より大事なのは、バラマキに至らない、ケインズ的にお金を使わない、そういう経済対策でなければいけない」、「単に有効需要を創出することだけを目的にしたお金の使い方ではいけない」と言っていた。

 今回の経済・金融危機を想定したかのようにも受け取れる発言である。だが、その後の与謝野大臣の発言は相当にぶれている。内外の急激な状況変化に追従しているだけのようにみえる。3月10日の発言はかつての借金王、小渕首相を連想させる。

 同氏は記者会見でも国会答弁でも誠実かつ当意即妙の受け答えをするので、与野党の中でも評判がいい。しかし、どうも、内外情勢の認識は官僚からの受け売りのようにも思える。100年に一度の危機をトータルにとらえ、日本国の歩むべき道を指し示す深みのある話を聞きたいと願うのは無いものねだりであるらしい。

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2009年2月18日 (水)

大阪府の09年度予算案

 橋下大阪府知事が発表した09年度予算案の一般会計は歳出・歳入が3兆391億円、前年度比3.9%増だった。歳出の中で注目したいのは、①人件費が8586億円で2.4%減、②国直轄事業負担金は要求額から建設系20%、維持系10%カットして387億円とした、③中小企業向け制度融資は4619億円と1375億円増やした、の諸点である。

 一方、歳入では、①府税は前年度当初予算より17.7%減って1兆1514億円、うち法人二税は38.3%も減って3315億円になる、②地方交付税は67.6%増えて2850億円になる、③府債も17.7%増の3148億円で、うち臨時財政対策債は1607億円で102.1%増である、④減債基金は09年度末残高が7000億円、などが目に付く。

 経済危機が府の財政再建にブレーキをかけたような感じだ。公債残高は09年度初4兆9526億円で、08年度初の4兆8684億円より842億円増える。これは一般会計の分だけで、特別会計に5404億円、企業会計に3985億円の府債があり、合わせると5兆8915億円に達する。

 ところで、国直轄事業負担金については、橋下大阪府知事がカットを言明し、新潟県の泉田知事も北陸新幹線工事に関する追加負担要求には納得できないと発言するなど、波紋が広がっている。最近の地方分権改革推進委員会では、露木委員(神奈川県開成町長)が「これらの知事の発言が地方自治体が財政難の中、直轄負担金の支払に苦しんでいるのを如実に示すものだ」と指摘、緊急ヒヤリングを実施するよう要望した。

 これについては、1998年の地方分権推進委員会第5次勧告では次のように述べているのを想起したい。「公共事業は国と地方との明確な役割分担の下で実施されることが必要であるが、地域づくりのための公共事業が地域のニーズに即したものか否かを最も的確に判断できるのは、地域住民であり、地方公共団体であるといえる。したがって、(中略)地域住民に身近な行政主体である地方公共団体が、住民の意見を踏まえ、自らの判断に基づいて事業を選択し、決定することができる仕組みを基本としていかなければならない」。この趣旨に照らしてどうかがキーポイントではないか。

 もう一つ、大阪府の予算説明で目についたことを挙げると、国所管法人に対する財政支出については、「府が支出する負担金等が国の職員及びOBの人件費に充当している場合は事業費の一部を削減するとともに、会費については予算計上を見送り、その他は人件費相当の30%を削減」という。くわしいことはわからないが、橋下知事の指示によるものだろう。

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2009年2月 8日 (日)

「無利子非課税国債」という提案も

 自民党の一部議員が呼びかけて「政府紙幣」や「無利子非課税国債」などの実現をめざす議連を10日に開催するという。安倍元首相も最近、無利子非課税国債のような思い切ったことをやる必要があると語った。野党でも、亀井国民新党代表代行が、無利子非課税方式で100兆円のファンドをつくれと主張しているようだ。ただ、これらの人たちは、政府が使うカネを増やせば増やすほどいい、と思っているフシがあるから、彼らの言う通りにしていたら、大変なインフレになりかねない。

 「政府紙幣」については、先日このブログで取り上げた。「無利子非課税国債」は、利子ゼロだが、税務当局が相続税の対象資産とはみなさない国債のことだという。償還期限については議論されていない。創設すれば、相続税がたくさんかかるような資産家が節税のために購入することが想定される。

 こうした奇策がぶちあげられるのは、次のような理由だろう。即ち、日本の国家財政がひっ迫していて、現在の経済危機に対応するのに必要な財政支出も容易ではないので、“埋蔵金”のように、どこかから財源をみつける、ないしひねり出さねばならない、というものだ。「政府紙幣」の場合には、与党が好きなときに好きなだけ出せるし、利子がないから、国家財政に負担にならないというものである。もちろん、今年の9月までに衆議院選挙があり、劣勢の自民党としては、大盤振る舞いをしてでも何とか挽回したいという事情があるのは明白だ。

 しかし、どうも気になるのは、新たな財源探しが優先しているのではないかという点である。それより前に、まず、現状をどう認識し、当面および中長期に、どういう対策をとることが望ましいのか、それに必要な財政支出はいくらぐらいか、そして、それには税収とそれ以外にそれぞれいくらぐらい要るのか、をはっきりすべきではないか。そうすれば、国会でもメディアでも、この危機の脱出策の中身を議論できる。と同時に、財政健全化についても、意識を高めることになろう。

 相続税をかけない「緑の国債」を発行し、環境対策に資金を充てるという案が民主党の議員から出ているという。このように、与野党こぞっての議論があっていい。

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2009年2月 3日 (火)

またも浮上してきた「政府紙幣」発行構想

 苦しいときの神頼み? 国債を発行せずとも、「政府紙幣」を発行すれば、打ち出の小槌のように、財源を生み出せるから、その発行を検討すべきだという声が政界などの一部で上がっている。

 自民党の菅義偉氏らが景気刺激策としてぶちあげているという。「政府紙幣」発行の意見は、米国の著名は経済学者であるスティグリッツ氏が2003年にわが国の関税・外国為替審議会で、デフレ克服策として提案したことがあるし、榊原英資氏なども唱えたことがある。最近では高橋洋一氏が提言している。

 「政府紙幣」は政府が発行する紙幣だ。日本銀行が発行する紙幣(日銀券)と同様に通用するが、単に紙切れとしての1万円札などを発行するコストしかかからない。国債を発行した場合には利子を支払わねばならないが、「政府紙幣」を発行しても利子は不要である。したがって、財政難だとか、財政健全化だとかといったことを気にしないで財政支出を増やせる。そこに目をつけたわけである。

 国債が増えすぎ、市場消化が難しくなった場合、日銀に国債を直接引き受けさせると言う形で、政府が財政支出の財源を確保するというやりかたも考え得る。だが、それは「通貨の番人」である日銀の独立性を侵すことになるし、国債発行により利子支払いが伴うから、国の債務が膨らむ。財政悪化が誰の目にも明らかになる。「政府紙幣」の発行は、そうした問題を回避できる。

 このように、一見すると、「政府紙幣」はいいことづくめのようにみえる。しかし、実体経済の規模が同じところに紙幣の量だけが増えるのだから、物価上昇につながるおそれがある。景気を刺激しようという目的で発行するのだから、わずかな金額ではないだろうから、当然、インフレの危険を伴う。今日の政治情勢をみると、一旦始まれば、発行量に歯止めが効かなくなる心配もある。

 しかも、政府は「政府紙幣」を回収するというような調節はしないから、日銀が日銀券の増減で金融調節することになるが、スムーズに行くかどうか。

 おぼれる者はわらをもつかむ。いまの世界的な経済危機をどうやって乗り越えるかを考えるとき、「毒食わば皿まで」といった、節度も何もない、ただ何にでもカネを使えば景気はよくなる、といった発想は人々の心を堕落させ、将来の日本を、あるいは世界をみじめな状態に陥れるのではないか。「政府紙幣」を議論することは結構なことだが、その直接、間接の効果や社会的な影響などを十分に検討すべきだろう。

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2009年1月26日 (月)

良薬は口に苦し

 経済危機で、財政再建の一里塚であるプライマリーバランス(基礎的収支)の2011年度黒字化という政策目標が吹っ飛んだ。この結果、専門家の意見を聞いていると、日本国家がいずれ財政破綻に直面する危険性がかなり高くなった。では、国民は財政破綻に追い込まれたら、どんなに大変か、理解しているのだろうか。言い方を変えると、政府は国民に対して、財政破綻が国民の暮らしなどに及ぼす深刻な影響についてわかってもらう努力を十分してきただろうか。そして、財政は基本的には税収、つまり国民の負担で賄うのだということについてもきちんとわかってもらうようにしてきているだろうか。

 そんなことを改めて考えさせられたのは、麻生政権に関する世論調査の結果と山形県知事選挙の結果をみたからである。日本経済新聞の世論調査結果(1月26日付け朝刊)によると、2011年度からの消費税増税方針に対する賛成は24%、反対が67%である。定額給付金についての賛成が22%、反対が67%だから、回答者は消費税増税に対し定額給付金同様、かなりはっきりと否定に傾いている。

 消費税増税に対して、自民党支持層でも賛成が反対よりいくらか少ない。まして民主党支持層は反対が80%、無党派層は反対77%である。政権が民主党に移った場合、消費税の増税は自民党政権のもと以上に難しいように思える。ムダの排除などは当然だが、歳出が税収の倍近いという無茶な財政構造を正常化するうえで消費税の相当のアップは不可欠である。

 自民党、民主党の対立が県知事選挙に持ち込まれた山形県知事選挙は、現職1期を終える齊藤弘氏が新人の吉村美栄子氏に敗れた。一般に、2期目の選挙は現職が圧倒的に有利といわれるが、齊藤氏は接戦の末、落選した。齊藤知事が推進してきた財政改革に対し、吉村氏は、それが県民に大きな痛みを与えていると批判し、勝利をおさめたということのようだ。

 日本銀行、IMF(国際通貨基金)などで仕事をしてきた齊藤氏は、県財政の改革を「1丁目1番地」ととらえ、将来に対するツケとも言うべき県債残高を削減し、利払費を含めた財政収支の均衡を目標にしてきた。そのために、投資的経費の大幅削減などを実施したりした。しかし、県民はそうした財政改革による痛みに耐え切れなくなったらしい。福祉などへの歳出増を訴えた吉村氏に希望を託したようだ。義務的経費が9割以上に及ぶ硬直的な財政構造の中で、吉村氏のこれからの県政が財政悪化をもたらす可能性は高いのではないか。

 大阪府の橋下徹知事は就任して1年になるが、破綻寸前まで行った府財政を立て直すため、大規模なリストラ方針を打ち出した。事業費を大幅に減らし、職員の給与をカットするという荒療治をしても、そう簡単に府財政は立ち直らない。経済状況の悪化もあり、府民がどこまで耐えてくれるかが橋下知事の改革を大きく左右することになりそうだ。

 国の財政と都道府県市町村の財政とは基本的に違うところがある。国はカネがなくなれば、国債などを発行してカネをつくることができる。地方公共団体にはそうした自由がない。そうした違いはさておいて、公的財政は、歳出を主に税収でまかなうようにしないと、財政は破綻する。破綻したらどうなるか、それを為政者はかんでふくめるように説明し、理解してもらうことが大事である。「フリーランチはない」、「負担なくして受益なし」の原則を国民、府県民に十分わかってもらっていないと、国民は「良薬は口に苦し」を厭う。「こっちの水は甘いぞ」の声にひかれる。その結果、経済社会の崩壊に至るとしても。

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2009年1月17日 (土)

基礎的収支黒字化の時期ずれる

 16日の経済財政諮問会議は「経済財政の中長期方針と10年展望」をまとめた。「2011年度末までに国・地方の基礎的(初期的)財政収支を黒字化させるとの目標達成は困難になりつつある。」と記している。だが、この時点で、誰もが目標達成は無理だとわかっているのだから、「困難である」とか「無理である」と書いたほうが国民はうなづける。

 与謝野馨経済財政担当大臣は2011年のプライマリーバランス(PB)黒字化という旗はあくまで掲げるという。この旗は歳出抑制の意味もあるから、それを撤廃したら、パンドラの箱を開けてしまう可能性があるという大臣の懸念は理解できないではない。しかし、ほとんど実現不可能な旗だとわかっていたら、誰もが無視するだろう。それよりも、目標時点を先に延ばすほうが国民を説得しやすいように思う。

 同じことだが、「経済財政の中長期方針と10年展望」は、「財政健全化目標について」という小見出しのところで、「国・地方の債務残高対GDP比の発散を止め、安定的に引き下げることを確保することは、財政の持続可能性を確保する上で極めて重要な規準である。」、「2010年代半ばまでにこれを達成するとの目標に向けて、適切な経済財政運営を行っていく。」と書いている。

 与謝野大臣は記者会見で「2010年代の半ばには債務残高対GDP比を一定にすると言う目標は崩していない」と述べている。しかし、それも、実現の可能性が非常に小さい。内閣府が何通りものシナリオをつくったが、それをみると、2015年度において、PBさえも黒字にならないケースのほうが圧倒的に多い。

 現在は100年に一度の危機に直面しているのだから、ケインズ経済学の復活がいわれるように、財政による需要喚起も必要である。とすれば、これまでの経済政策の枠組みをご破算にして、今後の景気てこ入れ策と一体的にPB黒字化など財政健全化の達成目標時期を設定するのがいいのではないか。

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2009年1月13日 (火)

100年後の財政破綻確率が90%超との試算

 昨年3月26日のブログで、櫻川昌哉慶応大学教授らの研究成果を掲載した日本経済新聞の「経済教室」を取り上げた。今後100年間の年平均経済成長率が2.5%を下回ると、公的債務残高が増えて「62%の確率で財政は破綻する」という内容。それも、最も楽観的な経済見通しのシナリオを前提としてであった。

 きょう1月13日の日経「経済教室」では、櫻川教授との共同研究にあたった細野薫学習院大学教授が、「その後の財政悪化で、破綻確率はさらに上昇し、90%を超えていると試算される。」と書いている。細かい計算根拠は示していないが。

 そして、「短期の需要刺激策と並行して新たに財政再建の道筋を具体的に明らかにすることが、国債への信認の維持とさらなる信用収縮防止に役立つであろう。」と述べている。

 与党・政府は政権を守るため、野党の民主党は政権を奪取するため、いずれも財政のばらまき政策を打ち出している。だが、細野教授は「現在の経済危機が深刻だからといって、将来を犠牲になりふりかまわぬ政策をとると、危機を長期化させかねない」と指摘している。

 諸外国が従来とはうってかわり、相当、積極的な財政・金融政策を打ち出している。それに負けじと、すでに財政危機状態にある日本政府が、さらに国債を大量に発行して総需要を刺激するのは、すでにある危機をより一層深刻化させるだけなのではないか。そんな不安を感じる。

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2009年1月 8日 (木)

「財政健全化」というぼろの旗

 経済財政諮問会議が1月6日に開催された。テーマは「経済財政の中長期方針と10年展望(仮称)」の原案についてだった。2011年度までにPB(プライマリーバランス)を黒字化するというこれまでの政府の財政健全化目標は、撤回するのではなく、あいまい、かつ持って回った表現で残すことになったようだ。

 原案を読むと、PB(初期的財政収支と言うのが正しい訳だそうだ)の黒字化は持続可能な財政に向けた一里塚であり、「できる限り早期に達成することが必要である。」としながらも、すぐあとに「しかしながら、経済情勢が極めて流動的・不透明な中では、一定の確度をもって見通すことは困難であることから、当面、財政規律の観点から現行の努力目標の下で、景気回復を最優先としつつ、財政健全化の取組を進める。」と書いてある。いかにもお役人らしい書き方で、わかりにくい表現である。

 その点を、記者会見で与謝野経済財政担当大臣はこう語っている。「財政を健全化しようという目標自体は、やはり持っておく必要があるのではないだろうかということで、随分、ぼろの旗になりましたけれども、立てておくと。」、「この旗を取り去ったときの影響というのは非常に大きいので、旗は取り去れない」、「当面、努力目標としては2011を掲げておくと。しかし、その達成は急速に困難になりつつある」と。

 また、PBの黒字化はあくまで「一里塚」にすぎず、健全化の次のステップとして国・地方の債務残高対GDP比の発散を止め、安定的に引き下げることが必要だとされる。原案では、この債務残高対GDP比の引き下げについて「財政の持続可能性を確保する上で極めて重要な規準である。団塊世代がすべて年金受給者となる2010年代半ばまでにこれを達成するとの目標に向けて、適切な経済財政運営を行っていく」と述べている。

 麻生首相の言う「全治3年」として、その直後、つまり2011年度初に消費税の大幅引き上げが実現するなら、フローのものさしであるPBの2011年度黒字化も不可能ではない。しかし、今後の政治・経済・社会状況が消費税の大幅引き上げを許すとはおよそ考えにくい。むしろ、国債の増発が続く可能性が大きい。

 とすると、PB黒字化の達成時期は目標時期より何年か遅れよう。そして、ストックのものさしである債務残高対GDP比の発散を止め、安定的に引き下げることが可能になる時期も当然、先にずれるだろう。

 このように、従来の政府与党のやりかたの延長線上だと、政府は「旗」は掲げるものの、財政健全化は無期延期に近いものとなったように思われる。したがって、短中期の取り組みとして提案したいのは、これまでほとんど手がつけられないままできた個別の歳出の中身を1つひとつ丹念に見直すことだ。そのためには、従来の霞が関の予算編成などのありかたを変える行政改革が欠かせない。 

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2008年12月24日 (水)

社会保障関係費だけで税収の半分占める

 政府は24日の閣議で2009年度予算案を決定した。また、消費税引き上げを軸とする税制抜本改革に向けた「中期プログラム」を決めた。08年度第二次補正予算案でも言えることだが、09年度予算案はとにかく景気対策だということで、あっちこっちの要求を鵜呑みにしたような大盤振る舞いとしか思えない。

 社会保障関係費は14%増の24.8兆円という。その規模は一般歳出51.7兆円の実に48%、つまり約半分を占めるほどに大きい。また、社会保障関係費は税収46.1兆円の54%に相当する。税収の半分超を社会保障に充てるほどの超福祉国家になったと言うべきか、それとも、国民の税負担があまりに少ないと言うべきか。どちらにせよ、極端にアンバランスだという感じがする。

 医療、介護など社会保障分野では国民の不安をかきたてる出来事が多い。したがって、政治がそれに対応するのは当然だが、歳出予算を増やせば解決するという単純な問題ばかりではない。それに、社会保障関係分野の人たちは概して既得権益を守り、改革に強く反対する。高齢化などで、今後も毎年1兆円近い財政支出増が続いたら、日本の国家財政は急速に行き詰まるだろう。負担なくして受益なし、という財政の基本を国民に理解してもらうことが政治の急務である。

 国債の新規発行は33.3兆円という。しかし、財政投融資特別会計から4.2兆円、外国為替資金特別会計から2.4兆円をそれぞれ一般会計に繰り入れるというのは、国債を発行する代わりのやりくりだから、それらを新規発行とみなせば、トータルの実質新規発行は約40兆円ということになる。たったの1年間にである。補正予算を組むようなことにでもなれば、もっと膨らむ。将来世代にそれほどのツケを回すというふうに考えると空恐ろしくなる。

 したがって、「中期プログラム」に2011年度からの消費税率引き上げを書き込んだのは、自民党にもまだ良心があるのだなという評価もできる。もっとも、具体的にどういう経済状況になったらどれだけ引き上げるのかが明確でないから、評価できるといっても、所詮たかが知れている(自民党が政権の座からすべり落ちる可能性が高まる一方だから、同党が1年以上先のことを云々してもほとんど意味がないけれど)。

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2008年12月21日 (日)

中長期の視点に乏しい?経済対策

 政府が今年度第二次補正予算案および09年度予算案をほぼ確定した。日本銀行は政策金利引き下げなどの対策を19日に決定し、実施可能なものは即、実施に移した。世界および日本の経済情勢は、ついこの間までとはうって変わってしまったから、景気のスパイラルな下降を食い止めるために、需要の創出および資金供給の円滑化は欠かせない。

 とはいえ、景気刺激策が十分吟味されたものか、気になる。巨額の財政赤字累積を忘れて、将来の世代に大きなツケを残すことは絶対にまずいからだ。

 日銀は政策金利引き下げやCPの買い取りなどとともに、毎月の国債買い入れ額をこれまでの1兆2千億円から1兆4千億円に増やした。だが、その点について白川日銀総裁の記者会見ではほとんど説明がなかった。記者から突っ込んだ質問もなかったようだ。

 金融市場調節方針の変更として、日銀は月々の国債買い入れ額を2002年10月30日にいまの1兆2千億円に増やした。それまでは1兆円だった。さかのぼると、2001年12月19日にはそれまで月間6千億円だったのを8千億円に引き上げている。時系列でみると、買い入れ額は増加のトレンドを示している。

 今回の変更により、日銀の国債購入は年間16兆8千億円にのぼる。08年度(予算の第二次補正後)、09年度(当初予算)とも、約33兆円の新規国債発行を見込んでいるので、そのほぼ5割に相当する。これまで、日銀は買い取った国債を市場で売ったりしているから、保有残高はことし9月末現在で65兆円余にとどまっているが、売るに売れないような金融情勢にならないか、素人ながら気になる。

 国の予算案は、大雑把に言えば、税収の2倍の歳出を組んでいる。必要不可欠な歳出もあるが、どちらかといえば、目先の景気てこ入れや選挙対策に偏っている。将来の日本財政に一段と重い負荷をかける内容となっている。今後の日本が活力ある持続可能な経済社会となるための先行投資という発想がほとんどないし、歳出のムダを削減するという努力もなかった。

 社会保障と言うと、黄門さまの印籠みたいになっているが、医療にしても介護にしても、もっと節減できる部分がある。それには口をつぐんで、国の負担を増やせば万事うまくゆくというような主張が目立つ。また、それがまかり通る。各論でムダを排除する必要がある。ムダについて個人的な体験をあげれば、医薬分業で、薬局で支払う調剤技術料だとか薬学管理料とかが高いのに驚く。同じ薬を継続して使うときも、薬剤料以外のそうした費用を同じように払わねばならないようになっている。

 国民生活の安心を確保するには、年金、医療、介護、生活保護や雇用などのセーフティネットをきちんとしなければならない。しかし、社会全体としては、自助、共助、公助の三位一体で取り組むのが望ましい。何でも政府におんぶする、要求するというのは社会の公正さ、活力維持などに反するし、大きな政府、高い税負担につながる。財政健全化を図るうえで考えるべき問題点である。 

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2008年12月14日 (日)

自民党税制改正大綱のいい加減さ

 自由民主党が12月12日に発表した平成21年度税制改正大綱を読んでいたら、「第 二  税制抜本改革の全体像」の中で、「われわれは経済活性化と財政健全化の両立を図っていくべき責任を有する与党の矜持として、来るべき税制抜本改革の具体的な道筋を以下のとおり示す。」というくだりにぶつかった。

 そして「税制抜本改革の道筋」として8つのポイントを挙げている。①高所得者の税負担引き上げや低所得者世帯の税負担軽減、金融所得課税の一体化、②法人所得の課税ベース拡大と実効税率引き下げの検討、③社会保障に消費税全額を充てることを明確にし、消費税率引き上げを検討する、④自動車関係諸税の総合的見直し、負担軽減、⑤相続税の課税ベースや税率構造の見直し、⑥納税者番号制度の導入、⑦税源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方税体系の構築、⑧税制全体のグリーン化。

 この「第二 税制抜本改革の全体像」は、通読すると、消費税を持続可能で堅固な社会保障制度の主要な財源とみなし、「制度的準備を整えた上で、経済状況の好転後、速やかに税制抜本改革を実施する必要がある。」という点を最も強調していることが明らかである。

 一方、「第一 平成21年度改正の基本的考え方」のほうは、国民生活を守り、今年度からの3年間のうちに景気回復を最優先で実現するという決意のもと、「大胆かつ柔軟な減税措置を講じる」という。そして住宅取得減税、エコカーの減免税、海外子会社からの利益還流への益金不算入、中小企業の法人税率引き下げなどを実施すべきだとしている。

 ところで、平成20年度の補正予算や21年度の予算で、政府は大規模な景気対策を実行しようとしている。他方で、税収は見込みを大幅に下回る結果になりそうなため、国債発行残高は20年度以降、猛烈な勢いで増えそうだ。財政再建路線は棚上げされたも同然で、金融市場において国債価格が暴落し、金利が急騰するといった危機的な状況が起こるという不安もないではない。

 それだけに、プライマリーバランスの黒字化という目標を常に意識し、それへの実現ステップを国民や市場に明示することが求められる。つまり、増税策等(社会保険料引き上げを含む)の具体的な中身や実施時期を国民に示すことだ。しかし、自民党の税制改正大綱は、どういう経済状況になったときに、消費税を何%にするかなど具体的な数字については全く触れていない。ましてや、財政健全化の第一歩にすぎないプライマリーバランスの黒字化や、GDP比の国債残高の比率の引き下げ目標などにも言及していない。100年に一度の危機とはいえ、将来の日本の経済社会のあるべき姿を想定もせずに、ただカネを使えばいいというものではない。

 大綱が、今後の税収を見積もることもなく、また、ムダな歳出を抑えるよう求めもせずに、お気楽に「大胆かつ柔軟な減税措置」なるものを並べ立てている点にもいい加減さを感じる。選挙での劣勢が色濃くなればなるほど刹那的になり、バラマキに走るということだろう。責任政党なんて言えた義理かと思う。

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2008年11月30日 (日)

地方財政をめぐる見方の対立

 総務省が11月28日、市町村等、都道府県それぞれの07年度普通会計決算、およびそれらを合算した地方公共団体の07年度普通会計決算の概要を発表した。総務省は「財政構造の硬直化が進んでいる」とのコメントを付している。

 だが、「地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担」のデータを見ると、市町村等、都道府県の両方とも07年度末は06年度末に比べわずかながら減っている。地方債など将来の財政負担がいくらか少なくなっているということだ。市町村等と都道府県とを合算した地方公共団体の07年度末の実数は135兆9432億円で、06年度末の137兆7800億円より微減である。

 それなのに、総務省は地方財政が悪化しているとの主張を繰り返している。11月26日に開催された経済財政諮問会議においても、総務省の鳩山邦夫大臣が「地方の財政状況について」という説明資料を提出。その中で、去る9月24日に地方六団体が麻生内閣発足に当たって出した共同声明をそのまま引用している。そのさわりの部分を紹介すると、「危機的な状況にある地方財政を直視し、早急に地方交付税を復元・増額するとともに、地方を活性化するため地方再生対策や景気対策に効果的に取り組むこと」となっている。

 鳩山総務大臣の提出した資料の中には、「我が国の地方の債務残高は「対GDP比」「対『国』比」ともにOECD諸国の中で突出し、その抑制が課題」という指摘もある。日本は国の債務残高が地方の約3倍だが、OECD平均では約8倍という。また、今後の景気の落ち込みを意識して「地方公共団体の安定的な財政運営に必要となる地方税、地方交付税等の一般財源総額の確保が大きな課題」と記述している。

 これに対し、財務省の中川昭一大臣はやはり経済財政諮問会議に09年度予算の編成等に関する財政制度等審議会の建議の要約を提出、総務省に反論している。「三位一体改革以降、地方税と地方交付税等の合計である地方一般財源は増加。地方全体としては、一般財源比率が上昇するなど、むしろ財政体質は改善」している。

 「地方財政の危機的状況は、三位一体改革による税源移譲に伴い、税源偏在が拡大し、地域間格差が拡大したことによる側面が大きい」。したがって、地方の行財政改革を進めて歳出抑制を図るとともに、財政力の弱い自治体の財政状況を改善するため、地域間格差の是正に努めるべきだとしている。

 総務省は馬鹿の一つ覚えみたいに、地方財政にもっとカネを、と唱え、財務省のほうは、地方は甘ったれるな、と突っ放す。白日の下で、国と地方の財政のありかたについて両省が意見をたたかわしたらおもいしろいと思うのだが。

 それはさておき、国の財政状況は、08年度に景気対策をしたり、税収が大幅に予算を下回ったりするため、国債発行の純増が30兆円を超える見込みといわれる。プライマリーバランス云々さえもが霞みつつある政治状況になってきている。とはいえ、非常事態への対応(バラマキはダメ)で、日本の財政危機がさらに深まるにせよ、本来の財政健全化路線に可及的速やかに戻るという基本原則は忘れないでもらいたい。

 

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2008年11月28日 (金)

民間準拠せぬ東京都の技能労務職員の給与

 地方公務員の給与水準は民間準拠を基本とするとされているが、過去、民間よりかなり高かった。近年、各地方公共団体は厳しい財政事情もあり、地方公務員の給与水準を徐々に民間レベルに近づけてきたが、自動車運転手、電話交換手など技能労務職員に関しては民間よりまだかなり高い。このため、財務省の財政制度等審議会の建議や政府の経済財政改革の基本指針2007などにおいて民間水準にまで引き下げるよう求めてきた。

 東京都の人事委員会が7月に行なった技能系従業員(技能労務職員)に関する民間給与実態調査の結果をみると、都内民間事業所の月額給与は33万8915円(平均年齢49.6歳)だった。国家公務員は32万0623円(同48.9歳)。それに対し、都職員は38万9066円(46.1歳)とかなり高い。民間より約15%高いことがわかる。これに基づいて、都の人事委員会は10月16日の勧告で「調査結果を参考とし、見直しを行っていくことが必要」と述べている。

 このため、11月27日付け日本経済新聞によると、都は都労働組合連合会との間で平均8%引き下げることで合意したという。都議会にそれに基づいた条例改正案を提出するそうだ。しかし、驚いたことに、2010年4月の新規採用者から改定後の水準を適用すると書いてある。いまの職員(来年春に都に就職する者を含めて)は8%削減の対象ではないということだ。民間より約15%も高い給与を1円たりとも下げないというわけである。民間準拠なんてどこ吹く風で、既得権益を退職するまで放さないことを意味する。

 そんな合意をした都の幹部たちは、労使関係を良好に保つことを優先し、納税者や都民の利益を二の次にしている。とんでもない輩だ。財政放漫は許しがたい。

 それはさておき、2010年3月までの新規採用者と2010年4月以降の新規採用者との間に賃金レベルの断層ができるが、賃金体系として将来、連続的なものにするのか、しないのか。するとしたら、どうやるのだろうか。2010年4月以降の新規採用者でも民間よりかなり高い給与だから、彼らにしても、さらに民間に近づける必要がある。そのあたり、都は都民に説明する義務がある。

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2008年11月24日 (月)

経済財政諮問会議に提示された消費税上げ率

 11月20日の経済財政諮問会議で、民間議員4氏が中福祉・中負担の社会保障制度を実現するためには、2015年度でいくら公費が必要か、そして、社会保障に投入する公費は現行の消費税を含め、すべて消費税で賄うとしたら、税率は何%になるか試算した結果を提示した。

 2008年度当初予算は27.0兆円(年金8.1兆円、医療12.0兆円、介護3.9兆円、少子化3.0兆円)の公費を投入する。現在の消費税5%による税収は13.2兆円(消費税率1%で2.6兆円の税収)であるから、消費税の税収だけで社会保障費を賄うとしたら、13.8兆円足りない。(社会保障に投入される公費をすべて消費税で賄うと仮定すると、現在の消費税率5%に約5.3%上乗せし、10.3%にしなければならない計算になる)

 2015年度になると、社会保障のために投入する公費は43.5~44.3兆円に達するという。そのためには、08年度に比べ、基礎年金の国庫負担を2分の1に引き上げるために3兆円程度(その時点の消費税率の1%程度に相当)、高齢化の進展や社会保障の強化のために7.6~8.3兆円(同2.3~2.5%)、次世代への負担先送り拡大を止めるために3兆円程度(同1%程度)、これまでも安定財源が確保されないままに給付してきた公費の財源を確保するために13.8兆円(同4.2%)の追加源資が必要になるとしている。

 すなわち、財政を社会保障部門と非社会保障部門とに二分し、社会保障部門の歳入はすべて消費税税収で賄う(消費税の税収はすべて社会保障部門の歳入に充てる)という仕組みを想定する。その場合、2015年度には、消費税1%の税収が3.3兆円に増えるが、それでも、消費税率をいまよりも8.3~8.5%引き上げなければならない。トータルの消費税率は13.3~13.5%となる。食料品などに対して軽減税率を設けるなどを考えると、基本の消費税率は15%ぐらいになるという試算のようだ。

 活力と安心が両立する中福祉・中負担の社会を実現するには、上記のような財政上のステップが必要だというのが民間議員の見解だ。現在の政治・経済・社会状況においてはすぐに実現するとは考えにくいが、国民が給付と負担の両方を真剣に考えることは焦眉の課題である。

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2008年11月15日 (土)

見栄っ張り、日本

 ワシントンで開かれる金融サミットを前に、中川昭一財務・金融担当相がIMFのストロカーン専務理事、世界銀行のゼーリック総裁と相次いで会談した。それぞれの会談において、日本政府は金融危機に対応して、巨額の資金を提供する意向を表明したという。先進国で突出して財政状態がひどいのに、何かあると、すぐ、カネを出しますという日本の悪い癖がまたぞろ出た。

 IMFに対しては、新興国への緊急融資などに充てる原資として、日本の外貨準備から最大1000億ドルを貸し付けるという。1兆ドル弱ある日本の外貨準備高は、それに見合う国債(約100兆円)を発行して得たカネでドルを買った残高である。だから、IMFへの融資の上限1000億ドルというのは、国債約10兆円を発行して得たカネで購入した外貨(実際には米国国債がほとんど)である。しかも、融資とはいえ、返済条件いかんでは、そう簡単には返らない。

 したがって、国の財政状況が日本よりもはるかに健全な西欧主要国でさえ、申し出ないような巨額の融資を日本一国で提供すると言う前に、世界各国に分担してIMFに貸し付けるように働きかけることのほうが、日本国民の利益につながるのではないか。

 英国のブラウン首相は日本がカネを出すのに賛成し、産油国にも出してもらえたらいいとの意向を表明したようだが、英国自身がIMFに融資するとは言わなかった。国益を考えてのことだろう。

 また、中川大臣は世銀との間では「途上国銀行資本増強ファンド」(仮称)を設立することで合意し、国際協力銀行が20億ドル、世銀グループのIFC(国際金融公社)が10億ドル、合わせて30億ドルの資金を3年間に提供することになったという。これも、他の国々と共同ではなく、日本単独でカネを出すという話だ。

 いいことだから、カネを出したらいいというのは、国際社会では、いい鴨にされるだけだ。個人レベルで考えてもすぐわかることだが、やたらカネをばらまく奴は尊敬されない。カネをばらまくことが外交だと勘違いしている外務省は、いまだにODA(政府開発援助)の予算が減ったことに不満を言っているようだ。しかし、財政再建が急務になっている国、日本の外交は、知恵(戦略的思考、構想力、行動力、組織力など)で勝負するしかない。頭の切り替えが日本の政治家、官僚に求められている。

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2008年11月10日 (月)

自治体の監査を機能させよ

 先週、会計検査院が発表した07年度決算検査報告は、中央官庁や地方自治体など公的機関のカネの使い方が不適切な実態を指摘した。地方自治体では今回調査対象にした12道府県で裏金づくりや架空発注などの不正経理が行われていたという。

 8日付け読売新聞朝刊の特集『ずさんな「公金」意識』の中で、増島俊之聖学院大学教授(元総務事務次官)は「監査は当事者自らが組織内の不手際を明らかにするのが筋。今回、自治体の不正が、外部の手でやっと明らかにされたのは、自治体の監査の仕方が、いかに手ぬるいかを物語っている」と論評している。

 監査委員の制度がほとんど機能していないのは、自治体の議会の議員が兼ねるケースが多いという事情に加え、監査委員事務局のメンバーも同じ役所の人間だからである。そうした欠陥のある制度を誰がつくったかといえば、責任の一端は総務省にある。その意味では、増島氏のような“戦犯”が他人事のように論評するのは許せない。

 大企業にも内部監査の組織がある。監査役監査を補佐する事務局はどの会社にもあるが、銀行など一部の大企業には、それとは別に検査部などという、支店などをチェックする組織がある。これらの内部監査組織も社員が配属され、不正経理などに目を光らせている。身内だから適当に見逃すというようなことは皆無ではないだろうが、そうそうはない。カネの面でのでたらめは会社の経営を揺るがしかねないからである。

 これに対し、公金をいくらムダ遣いしても、自治体はつぶれない。カネが足りないといえば、総務省など国が何とかしてくれる。そうした甘えが自治体の議会議員にも職員にもある。住民の多くも、国が何とかしてくれると思っている。そこが企業と自治体との違いだ。そうした自治体の甘えの構造を断ち切る必要があろう。

 ところで、公認会計士が自治体をチェックする包括外部監査が1997年の地方自治法改正で義務付けられ、日本公認会計士協会などでは業務分野の拡大だとして、これを歓迎した。しかし、地方自治体の経営を適正化するうえで、いまの監査委員、監査委員事務局、および包括外部監査の組み合わせが十分か検証する必要がある。会計士協会に課せられた課題の1つではないか。

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2008年11月 4日 (火)

1日に301億円、国・地方の長期債務残高が増える

 財務省が10月31日、ホームページの「日本の財政を考える」を更新した。その中で、国および地方の長期債務残高が1日に301億円、1時間に13億円、1分間に2093万円、1秒間に35万円増加するというデータを載せた。

 07年度末(08年3月末)現在の国・地方の長期債務残高は767兆円だった。これが08年度当初予算によれば08年度末(09年3月末)に778兆円になる見通し。そこで、一定の速度で残高が増えると仮定した場合に、1日、1時間、1分、1秒のそれぞれごとに残高がいくら増加するかを示した。補正予算で建設国債などの発行で長期債務が膨らめば、増え方は急ピッチになる。

 同省は昨年8月初めにデジタルカウンター方式でいわゆる借金時計を公開した。しかし、アクセスが殺到し、すぐにサーバーがパンクしたため、その後はやめていた。今回の開示は、それに代わるものという。しかし、なかなかホームページの中を探しても見つからない。「日本の財政を考える」の中に「財政データ集」があるが、その2つ目の項目「国の借金状況は?」の最後にある「我が国の借金(国及び地方の長期債務残高)について」がそれだった。全く目立たない扱いである。

 いわゆる借金時計は、日本では財部誠一氏がホームページで「日本の借金時計」というデジタルカウンター方式のものを開示しているほか、ネットの「リアルタイム財政赤字カウンタ」がある。東京タワー4階の「感どうする経済舘」には「日本経済の足音時計」というのがある。また、高知県のホームページを見ると、「高知県借金時計」がある。

 米国やドイツにも借金時計がある。いずれも巨大な財政赤字の実態を一般市民に訴えるためのものである。米国の借金時計の一例をあげると、ネット上、「Babylon Today」というホームページの中にある「U.S. National Debt Clock」というデジタルカウンターがある。Babylonというのは、腐敗、堕落の都市という意味かと想像する。

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2008年11月 3日 (月)

医療保険のムダや不正

 「医療崩壊」で、医療費が低いことに原因があるかのような意見が出ている。低医療費犯人説だ。しかし、ことはそう単純ではない。朝日新聞の10月31日朝刊の特集「医療費むしばむ架空請求」は、医療機関の医療保険に対する不正請求が多いことを具体例を挙げて指摘している。

 治療してもいないのに、あたかも治療したかのように政管健保(10月から協会けんぽに組織替え)など保険運営者に不正に治療費を請求する。そうした医療機関による不正は、公金を詐取する行為だから刑事犯罪である。それを防ぐには、政管健保、国民健保などがきちんきちんと保険加入者にどこの医療機関でいくらかかったかの明細を定期的に送り、確認してもらうことが欠かせないし、レセプト(診療報酬明細書)を審査する社会保険診療報酬基金などがもっと厳しくチェックする必要がある。そして、不正が露見したら、刑事罰を課すようにしなければならない。

 しかし、不正が明らかになっても、社会保険事務局や市町村は医療機関に厳しい態度をとらないという。それに、厚生労働省の天下り先である支払基金のレセプト審査はかねてより甘いといわれている。支払基金の審査料はレセプト1枚につき114.20円、調剤57.20円もするが、コンピュータでオンライン化すれば、コストが大幅に下がるはずだし、不正請求を発見しやすくなるが、医師たちの抵抗でいまだに出来上がらない。

 医療機関の間をオンライン化すれば、1人の患者が別の医療機関に行ったとき、すでに受けた検査を繰り返して受けることは要らないだろう。また、医者にかかった経験がある人なら、大抵、飲み残し、使い残しの薬品があるだろう。医療機関は検査も薬も多く出す傾向がある。

 医者の口からは医療費抑制政策への批判が出る。しかし、不正請求などがまかり通り、かつ、検査漬け、薬漬けで診療報酬をかせぐいまの医療および医療保険制度のありかたを反省することなく、あたかも医療費を高くすれば問題が解決するかのような発言は、いわゆる業界エゴでしかない。ムダや不正などをうんと減らせば、病院の医師などの給与をもっと上げることができよう。

 いまは、国家試験で資格を取得することで、特権を得たようなつもりでいる医師たちが多いらしい。だが、本来は、医業を営む免許(一般の人たちには医業をやらせないということ)を国家から付与された見返りに、国民に奉仕する義務が伴うと考えるべきだろう。医は算術ばかりでは免許制をとっている意味がないと思う。

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2008年11月 1日 (土)

「生活対策」等の経済対策で感ずること

 麻生内閣が10月30日、「生活対策」と銘打った新たな総合経済対策を発表した。翌31日には日本銀行が政策金利(無担保コール翌日物金利)の誘導目標を年0.3%程度に引き下げた。「生活対策」は事業費の規模が26.9兆円程度、“真水”の国費は5.0兆円程度という。それらをみて感じたことを書き連ねると――

 バラマキの最たるものである定額給付金は選挙対策としか思えないが、霞が関の各省庁も予算(カネ)が得られるというので、よくまあ、あれこれ総花的に対策を書き連ねていることか。世界的な経済危機が日本経済のどこにどう響いてきているのか、そこをきちんと詰めて検討した結果出てきた対策もあるが、そうでないものがたくさんある。

 円高というと、すぐ大変だという声が上がる。しかし、流通業界や旅行業界では円高メリットを還元するセールなどを始めている。また、原油値下がりなどでガソリンなどが安くなってきており、ひところ石油製品高騰で悲鳴をあげていた産業やマイカー利用者の負担は減る傾向にある。世界経済をおおっていた過剰な投機が急速に縮小した結果、ついこの間まで各種輸入品の価格高騰に苦しんでいた産業や消費者も一息つき始めているわけだ。経済対策はそうした経済情勢の変化を踏まえた内容になっていない。バージョンが1つ古いのである。高速道路料金の値下げなんぞはその1つだ。

 国・地方とも財政は危機的な状態が続いている。したがって、100年に一度の危機だからといって、いい加減なカネの使い方をしては困る。追加予算を組むとしても、今後の日本経済が直面する社会保障など中長期的な課題の解決に役立つことを優先すべきである。そして、規制の撤廃・緩和や地方分権の徹底などの構造改革、つまり中央省庁の役人がいやがる改革を実行すべきである。この国をどういう社会にしたいかの理念に裏付けられていない個別政策は国費のムダ遣いである。

 麻生首相は30日の記者会見で「大胆な行政改革の後、経済状況を見た上で3年後に消費税引き上げをお願いしたい」と述べた。しかし、「大胆な行政改革」とは具体的には何かわからない。消費税引き上げが必要なことを国民に言明したのは評価するが、いくつかの条件が付いた表現なので、増税が先送りになり、財政悪化状態がより深刻さを増すだけにならないか心配だ。

 「生活対策」の財源は赤字国債に依存しないという。しかし、財政投融資特別会計から国債整理基金特別会計に繰り入れて国債償還に充てるカネを使ったりするのだから、国の財政全体でみれば赤字国債の発行と実質は同じだ。そうまでして、政府が財政健全化にこだわっているという見方もできるが、それは多分に市場向けのポーズだろう。21世紀に入ってからの長い好景気の間、政府はプライマリーバランスの黒字化を一度も達成しなかったし、それ以前も、ずっと国債残高を積み上げてきた。ついでに言えば、08年度の税収が予算を5兆円程度下回ることになれば、赤字国債を発行せざるをえない。財政健全化とはおよそ逆のコースをひた走っているのだ。

 日本銀行はバブル崩壊後に史上かつてない超低金利を維持してきた。上記の好景気のときでさえ、デフレから脱却していないとの理由で、超低金利状態を当然視していた。このため、景気が悪化しても、政策金利を下げる余地がほとんどないままだった。日銀が市場金利をせめて2%か3%ぐらいにまで戻していれば、景気の調整弁として金利機能を使うことができただろうし、国民の金融資産の利息がもっと増えて、消費を促し、内需主導型経済に移行するきっかけを用意できたかもしれない。米欧の投資銀行や各種ファンド等が日本で調達した超低利資金をもとに不動産、株式、商品先物の投機を行なっていたといわれるだけに、日銀の硬直的な金融政策の罪は重い。 

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2008年10月22日 (水)

麻生首相「当面は景気対策、中期的には財政再建、‥‥」

 麻生太郎首相になって初めての経済財政諮問会議が10月17日に開催された。その議事要旨が22日に公表された。会議の冒頭の挨拶の中で、首相は「この試練を乗り切るためには、当面は景気対策、中期的には財政再建、そして中長期的には改革による経済成長という3段階を踏んで日本経済の立て直しに臨んでいきたいと私は考える」と述べた。

 また、会議の途中の発言では、消費税の引き上げについては「多分、国民の理解は進んでいる」、「ただ、今ではない。景気がこうなっているので、全治3年と申し上げたのはそれなのだが‥‥」と言い、3年後、2011年頃に消費税引き上げができる道筋を考えておいてほしいと述べた。「景気対策をやって、財源の裏付けは何だと聞かれたときに、きちんとこうした道筋をつけるということを言わなければならない」、「それだけは覚悟しないと、やはり責任政党としてはいかがなものかという感じがする」とも発言している。

 首相は中福祉・中負担が国民的合意かなと思っているという趣旨の発言をしたあと、「中福祉・中負担を目指すなら、基本的にそれだけの腹(消費税を引き上げること)は覚悟しないといけない。国民が、我々がちゃんと真面目にやる気があると見るかどうかという境目に来ている」とも語っている。

 こうした麻生内閣の姿勢に対して、岩田一政議員(内閣府経済社会総合研究所長)は「新たな景気対策としては、単なる短期的な総需要政策ではなくて「中期的な財政再建、中長期的な改革による経済成長」と整合的なものにすべきである。これは極めて重要な視点ではないか、と私は考えている」と発言した。また、吉川洋議員(東京大学教授)も「そういう下でも、やはり財政規律は大切である」とクギを刺した。

 これまで経済財政諮問会議では、議長でもある総理大臣の発言は冒頭の挨拶などごく限られていた。小泉首相のときは、これはというところで議長が発言し、方向を決めたが、それ以外はもっぱら聞き役だった。これに対し、麻生議長はけっこう発言するし、質問もする。それゆえ、会議が活気があるように思える。こうした運営が吉と出るか、凶と出るか、しばらくは見守りたい。

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2008年10月21日 (火)

会計検査院が頑張っている?

 岩手県、愛知県などが裏金づくりをしていたなどの問題が会計検査院の検査で明らかになった。そればかりではない。最近、とみに会計検査院が国や政府機関などの税金の無駄づかいなどを指摘する報道が目に付く。

 こうした会計検査院の“活躍”をどうみたらいいのか。同院のホームページでは10月20日に「平成21年次会計監査の基本方針」を掲載した。どういうわけか9月5日に同院の検査官会議(3人の検査官で構成する最高意思決定機関)で決定したものをいまごろになって出していることへの疑問はあるが、それはさておき、この「基本方針」を読むと、同院の今日的な意義が理解できる。

 国の財政が悪化し、経済、財政、行政等の各分野の改革が求められている。また、決算結果を次の予算に反映させるために決算審査の早期化が要請されたこともあり、会計検査機能への国民の期待は大きくなっている。

 したがって、社会保障、公共事業など9分野に重点を置き、かつ複数の府省等にまたがる施策などの検査に力を入れ、社会的関心の強い事項等にも機動的、弾力的に検査をするようにしているという。

 また、不正不当な事態の検査だけでなく、行政の業績評価を指向した検査を行い、「必要な場合には、制度そのものの要否も視野に入れて検査を行っていく」としている。検査は、基本は正確性や合規性の観点で行うが、経済性、効率性、有効性の3Eの観点を重視するという。そのほか、契約の競争性、透明性にも十分留意するとしている。

 会計検査院といえば、天下り先を他の省庁にお願いしているため、検査に基づく指摘はいま一つ歯切れがよいものではないといわれていた。それは公正取引委員会についてもいわれていたことである。しかし、最近の会計検査院の検査に基づく指摘はもっと鋭いものになっている。それだけ霞が関の省庁など公的組織の腐敗がひどくなったということだろうか。

 ところで、社会保険庁の年金不正については、10年以上も前からその一端が表面化することがあった。だが、会計検査院もその問題を発見できなかった。同院の仕事の領域ではないという見方もあろうが、では、どこが担うのか。年金不正のような行政による構造的な巨悪を早期に摘発することができる特別の公的機関を議会の下に設けるというのはたわごとだろうか。 

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2008年10月 2日 (木)

経団連の消費税引き上げ案

 「税・財政・社会保障制度の一体改革に関する提言~安心で活力ある経済社会の実現に向けて~」を日本経済団体連合会が2日発表した。イギリスやドイツのような「中福祉・中負担」型の国家が日本の目指すべき道としており、2010~11年度に消費税を最低でも5%引き上げるよう求めている。

 基礎年金については、「広く国民が負担する税方式に移行することが有力な選択肢として考えられる」とし、高齢者医療に対しては「公費投入割合を増やし、国民全体で支えていく仕組みへと包括的・抜本的に見直していくことが必要となる」と述べている。介護保険制度も「公費投入割合を引き上げていく必要があろう」という。

 そして、「社会保障費用を消費税で賄うことが不可欠である」、この場合、「中長期的には消費税率が欧州主要国並みの水準になることは不可避である」としている。

 そして消費税は「国内消費に対する課税であり、基本的に輸出コストに反映されないため、国際競争力低下の懸念が無く、‥‥」と、経済界にとっては好ましい税制であることをさらりと付け加えている。

 この提言は2009~11年度の第1フェーズと、2012年度以降の10~20年程度にわたる第2フェーズとを想定して、もっぱら第1フェーズに関する各論を述べている。消費税の最低5%の引き上げと合わせて、消費税率1%相当程度の定額減税(期間5年程度)を行なうよう求めている。また、道州制の導入を見据え、消費税を引き上げたら、消費税10%の配分を国7%、地方3%とすることが適当だと述べている。

 以上が提言のポイントだが、どうも上記の計算が合わないのではないかと気になった。現在、消費税のうち国の懐に入るのは4%である。上記の増税後の国の7%から定額減税分1%を引くと、実際には6%しか国に入らない。とすると、いまより2%分(約5兆円)増えるだけだ。しかも2009年度には、基礎年金で国が3分の1の負担を2分の1に引き上げる約束になっているから、それだけで消費税1%分に相当する。ということで、残りはたったの1%分、約2.5兆円である。

 それなのに、さらに基礎年金を全額税方式に切り替え、高齢者医療にも介護保険にも税投入を増やすとしたら、約2.5兆円では全く勘定が合わない。年金の保険料積み立てが要らなくなる分を税で取るということかもしれないが、それはそれで相当の増税が必要である。「改革は増減税一体」で説明が足りているつもりかもしれないが、消費税か所得税か法人税か、何らかの増税が必要ではないか。

 もう1つ問題なのは、2011年度のプライマリーバランスの黒字化など財政健全化へ回す財源が、この一体改革の提言には何も提示されていないことだ。世界各国に比べてかなり高い法人への課税税率の引き下げが必要なことをさりげなく書いている割に、提言全体がラフだという印象が強い。経団連といえば、かつては、もうちょっときちんとした提言を出していたのに、と思ってしまう。

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2008年9月29日 (月)

若い世代に視点を移せ、という財政審での発言

 9月3日に開かれた財政制度等審議会の会合(財政制度分科会財政構造改革部会及び法制・公会計部会合同会議)は、伊吹文明財務大臣(当時)の話や数人の委員の自由な意見表明があった。議事録を読むと、彼らがいまの財政運営に対して、どんな問題意識を持っているかがわかる。

 富田俊基中央大学教授=今の経済は名目ではゼロ成長。皆さん、金利は低いと言うが、年1.4%。税収と利払費はどちらが大きくなるかを考えれば、ばらまきのように朝四暮三的なことを国民のためだなどと考えていると問題は大きい。

 田近栄治一橋大学教授=もう少し視点を若い人のほうにも置かないとバランスがとれない。それに、高齢者の間での助け合いというのも前面に出すべきではないか。

 宮本勝浩関西大学教授=かつて財政危機に直面したカナダやスウェーデンがどれだけ大変な努力をして歳出削減したかをきちんと調べて、国民、さらには国会議員にきちんと提示してほしい。そのために政府に、研究チームというか、報告書を書くチームを設けてもいいのではないか。

 土居丈朗慶応大学准教授=あまりにも将来世代、ないしは若い世代の人たちのことを軽くみているのではないか。

 伊吹大臣の冒頭あいさつ、および委員の意見表明に対する大臣の意見は率直な内容だった。即ち、①財政の問題と環境の問題は極めてよく似ている。いまの人が矜持を忘れて安易に暮らすことによって、次の世代に問題を先送りしている。これは極めて世代間のモラルに反する。②長寿医療制度は、もう少し若い方々のためにやったのだということを当初に明確に説明すべきだった。③私が一生涯、納めた保険料は、80歳まで生きるとして受益するだろう年金・医療・介護の総額の多分、7分の1くらい。残りは現役世代にかぶせているのだ―と。

 旧大蔵省の出身で政治家になった伊吹氏は、この会議の席上、財政改革について持論の2つの玉手箱を開けないという話を披露したあと、「2歩進んで1歩退き、1歩退きながら2歩進む、10年たてば必ず恒久財源の下で少なくとも財政再建の道を歩めるという政治的なシナリオを念頭に置きながらやっていきたい」と語った。

 自民党政治の過去をみると、残念ながら伊吹氏の見解とは異なる。2歩退き1歩進むという繰り返しではなかったか。そして、いままた、さらに1歩後退しつつあるのではないか。

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2008年9月25日 (木)

経済財政諮問会議に対する伊藤隆敏氏の感想

 福田内閣最後の経済諮問会議が去る9月17日に開催された。その議事録によれば、有識者議員として2年間、参加してきた伊藤隆敏東京大学教授は「生かすも殺すも基本的には総理の決意と実行力にかかっている」、議長役の総理大臣がこの会議を利用しようと決意すれば、諮問会議が「様々な圧力に抗する盾のような役割を果たせる」と存在意義を説明している。

 そして、「各省それぞれが打ち出す選択肢よりは、より国益全体を考えた選択肢を提示する、あるいはその実行がきちんとされているか、工程表どおりに実行されているかを適宜モニターすることについては、諮問会議が得意とするところ」と語っている。

 伊藤氏は霞が関の問題点にもついても感想を述べた。「霞が関が世界一のシンクタンクであることはよく言われる。各省の官僚は、調査能力・分析能力には非常に優れたものがある」。「ただし、その優秀さゆえに、これはいつもではないが、時として、国益ではなく省益を優先させる議論を組み立ててしまうことがあり、一旦、組み立ててしまって、こういうことはできませんという議論を展開し始め、官邸や国会議員を説得して回ると、これをひっくり返すのは非常に容易ではない。したがって、その省の利益が必ずしも国の利益にならないことが生じることはしばしばあるわけで、そういった過去の政策の誤りをなかなか認めないことも官僚組織の世界的なパターンである」。

 さらに、「官僚の世界では、各省の管轄に横断的にまたがる政策課題をパッケージとして解くことは非常に不得意とするところだから、このようなときに官邸が力を発揮すべきであり、そのために諮問会議を使っていくことは非常に有効なことではないか。勿論、実際の政策を立法化することが必要であれば、これは国会であり、国会議員が政策を理解してサポートしてくれることが必要だが、政策はあくまでも政府が立案して実行していくことが重要である」と指摘している。

 もう1つ、伊藤氏はタイム・インコンシステンシー(時間の不整合性)という経済政策の理論を取り上げて、「将来のどの時点から政策立案をやり直したとしても、やはり同じ経路の上に乗っているという政策を立てなければいけない」と述べた。すなわち、今年は景気対策をしたい、来年からは絶対財政秩序は守る、というようなことを毎年、繰り返したら、いつまで経っても財政はよくならないというわけだ。伊藤氏は「財政に関してもルールをきちんと決め、そのルールはどの時点から始めても守ることができるといったようなルールを、是非つくり上げ、抜本改革に結び付けていただきたい」と発言している。

 おそらく、これは麻生内閣の誕生を予想しての発言だったろう。麻生首相は、最近、前提条件が変わったと言って、プライマリーバランスの2011年度黒字化という政府の目標を取り下げる発言をしている。財政改革の前途は危うい。

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2008年9月19日 (金)

特別会計改革についての八代氏の提案

 福田内閣のもとでの最後の経済財政諮問会議が17日に開催された。テーマはいろいろあったが、議論は当然のことながら盛り上がらなかった。八代尚宏民間議員の「特別会計改革の方向性について」のペーパーが配られたが、八代氏の説明もなく、議論の対象にされなかったという。

 しかし、このペーパーで指摘している問題点は無視すべきものではない。議論の余地はあるにせよ、特別会計に関する改革が不十分なことがよくわかる。問題点を網羅的に紹介するのではなく、私が関心を抱くいくつかの指摘を取り上げると――

 外国為替資金特別会計は外貨準備資産が約1兆ドルに達し、その大部分を米国債で運用している。この外貨準備と見合う形で国内で外国為替資金証券(短期国債)を発行して、利子を払っている。さらにドルベースの運用益に見合う外為証券を発行し、外為特会に預託している。しかし、外為特会の資産、負債の両建てにせず、外貨資産だけを保有して、外為証券の発行をしない場合、何か問題が起きるのか。

 空港整備勘定は全部の空港の収入をプールしている。いわゆる、どんぶり勘定である。歳出面でも、国管理の空港の空港整備費についてだけ4つの地域別区分があるにとどまる。今後、独立行政法人化が検討されているというが、個別空港の損益計算書、貸借対照表などの情報公開とそれによるガバナンスは言うに及ばず、滑走路・管制塔、ターミナルビル、周辺の駐車場を含めた財務報告書や政策コスト分析の適用が必要ではないか。

 特別会計の積立金の適正規模に関する基準が明確でない。歳出を合理化しても、積立金が膨らむだけで、財政の負担軽減につながりにくい。

 また、大口の積立金については、財政融資資金特別会計に預託して、その統一的な運用にゆだねることになっているが、運用成果は低い。例外的に自主運用を認められている年金保険特別会計のように、労働保険特別会計などについては自主運用を認めるべきではないか。

 特別会計の積立金・剰余金を“埋蔵金”として景気対策などの財源に充てるのは、「追加的な国債発行を伴わないものの、純計ベースでの債務が増える点では、隠れた国債発行と同じ」。必要額以上の積立金等は財政健全化のため、直接、国債整理基金に繰り入れるとか、保険料等の引き下げに充てることが考えられる。

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2008年9月14日 (日)

「国の財務書類」を眺めると

 先頃、財務省が一般会計と特別会計とを合わせた国の06年度末のバランスシート(貸借対照表)等を発表した。「国の財務書類」と題するこの発表資料によると、民間企業を見るのと同じ感覚で国の財政を一覧できるという触れ込みで、バランスシートによると、資産の合計は703.9兆円、負債の合計は981.2兆円で、債務超過額は277.3兆円である。(ちなみに一般会計単独では335.4兆円の債務超過である。)

 バランスシートの注には、「資産への計上額には道路や河川等といった売却が考えられない資産が相当程度含まれ」ているので、「将来の国民の負担になる債務としては、基本的に将来世代が税負担により償還することとなる普通国債残高(06年度末は約534兆円)が1つの目安」と書いている。

 日本の財政状況はさほど悪くないと言う論者が挙げる根拠の1つが、このバランスシートの債務超過額である。一般会計単独にせよ、一般会計・特別会計一体にせよ、対GDP比で6割強か5割強にすぎないじゃないかというわけだが、財務省はそうした見解を注記で否定しているわけだ。

 一般会計・特別会計の06年度末バランスシートに日本郵政公社(当時)、年金積立金管理運用独立行政法人、住宅金融公庫(当時)など政府系220法人を連結させたものも発表された。それによると、資産832.3兆円、負債1093.5兆円で、債務超過額は261.2兆円である。

 一方、フローを示す行政コスト(業務費用計算書)も発表しており、06年度の一般会計・特別会計の業務費用は122.2兆円だった。財源は107.4兆円なので、当期純損失相当額(資産・負債差額増減計算書)は14.8兆円となっている。企業決算と似たやりかたなので、国債などの債務償還費(06年度211.6兆円)は計上していない。利払費8.8兆円は計上している。

 一般会計・特別会計の業務費用の内訳は、年金・政管健保給付費等が47.1兆円、補助金等が27.7兆円、地方交付税交付金等が20.5兆円で、これら3つだけで78%に達した。

 また、220法人を連結すると、業務費用が23.9兆円増大して146.0兆円になった。当期純損失相当額は6.3兆円である。

 こうした開示情報をどう料理し、活用するか。それが私たちの課題である。

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2008年9月11日 (木)

財務省の“借金時計”が来月にも再スタートへ

 国の借金が時々刻々増えるさまを目に見えるようにする“借金時計”。財務省は昨年8月にアクセスが集中してサーバーがパンクしたため、掲載を停止していたが、早ければ10月中に違う様式で再開する意向。デジタル・カウンターではなく、1秒間にいくら増える、1分間にいくら増える‥‥といった簡単な式を表示するらしい。

 ことし8月に財務省が発表した「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」(IMF公表基準)によると、6月末現在の国債及び借入金残高は848兆4424億円となる。政府保証債務46兆9844億円を加えると895兆4268億円にも達する。このほかにも地方自治体の債務など国民にツケが回ってくる公的な債務がいろいろある。それらを足していけば、おそらく1200兆円をゆうに超える。国民1人あたり1000万円近い。

 自民党の次の総裁の座を争う党内選挙が始まった。与謝野馨氏が基礎年金の安定財源として消費税の増税を唱えているほかは、誰もこうした深刻な国家財政状況を踏まえて発言していない。与謝野氏にしても、選挙では受けないという判断からだろう、財政危機の実情をはっきりと説明することは避けている。麻生太郎氏は現在の景気後退に対する対策を財政に求める意向を示している。

 しかし、“良薬は口に苦し”ということで、財政の厳しい実態をいつまでも国民に訴えなければ、多くの国民は政府に「もっともっと」と要求を続けるに違いない。それをあおっている政党が目に付く。経済構造を改革しないままで、高度成長時代の政治のやりかたをいまも続ける古~い政治家、政党を国民はいつまで支持するのか。

 一方で、財政健全化が必要と考える人たちも少なくないし、彼らは消費拡大には慎重だろう。そうした人たちの代弁をする政治家、政党よ出でよ。本当のことを国民にはっきりと言わない限り、従来型のどの政党が政権を握ろうと、いずれ日本国は財政破綻に追い込まれる可能性が大だ。

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2008年8月30日 (土)

国債の利子だけで10兆円超に

 国債を発行すれば、当然、利子を払う。09年度には、財務省の国債費概算要求によれば、「公債利子等」が10兆475億円と、初めて年度間支払額が10兆円の大台に乗せる。「借入金利子」、「財務省証券利子」を足した「利子割引料」全体では10兆6724億円に達する。08年度よりも1兆3318億円も増える。

 また、「利子割引料」と並ぶ項目の「債務償還費」は11兆7039億円で、08年度より9768億円多い。この「債務償還費」の大半を占める「公債費償還」も、10兆8195億円と初めて10兆円を突破する。08年度よりも8210億円増加する。

 もう1つの項目である「国債事務取扱費」654億円(08年度比301億円減)を含めた国債費全体の概算要求額は22兆4417億円(同2兆2785億円)にも及ぶ。

 国の税収が50兆円ちょっとにすぎない。それと比較して、国債の元利金支払いが22兆円に達するというのは驚きではないか。これは換言すれば、国債の発行残高がいかに大きいかということである。税金をはるかに上回る歳出を長い間続けてきた、つまり“麻薬”を打ち続けてきて、“麻薬”から離れられなくなった、そういう異常さを表している。

 小泉改革では、この“ヤク依存”から脱すべく、歳出カットを進めて国債発行を減らしてきたが、増税までは行かず。そして、いまや再び、“ヤク依存”を強めそうな気配。政治家や官僚は自分の財布から1円も出すわけではないから、歳出膨張も、国債増発も気にしない(財務省は立場上、財政健全化の姿勢)。財政再建を主張してきた与謝野馨経済財政担当相らもカラダを張って自らの意見を貫くわけでもなさそう。骨のある保守政治家が党・政府の要職にはとんと見当たりませんね。 

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2008年8月19日 (火)

交付税頼みの自治体は7割

 総務省が先週発表した08年度の普通交付税交付金の地域別データによると、交付税交付金を受けない地方公共団体は179。都道府県では東京都と愛知県のみ。市町村では177だった。交付を受けない市区町村の人口は3770万人で全市区町村の29.5%だった。1年前は3460万人で27.1%だった。

 基準財政需要額が基準財政収入額の2倍以上、すなわち、税収などの収入の倍以上、カネを使っている都道府県は25にのぼる。北から挙げると、北海道、青森、岩手、秋田、山形、福島、新潟、冨山、福井、山梨、奈良、和歌山、島根、山口、徳島、香川、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄。

 各市町村の基準財政需要額と基準財政収入額とを都道府県ごとに集計したデータによると、基準財政需要額が基準財政収入額の2倍以上だった都道府県は、北海道、青森、岩手、秋田、山形、鳥取、島根、徳島、高知、長崎、熊本、宮崎、鹿児島の13である。東北・北海道、九州、四国などに偏っている。

 以上のデータは、地方債などの発行による資金(言うなれば借金)も、税収などと並んで基準財政収入額に含むという総務省版“粉飾”をしたうえでの数値である。基準財政収入額では基準財政需要額を満たせない分は、ほぼ国からもらう地方交付税交付金でカバーしているわけだ。この交付金を配る総務省と、そのカネをいただく地方公共団体とでは、とても対等な関係は成立しない。収入の半分以上を交付金に頼る自治体がこれほど多くては、口では地方自治だとか地方分権だとか言う首長さんの言葉にも迫力がないわけだ。

 したがって、地方にもっと税財源を移譲せよという地方公共団体のかねてからの主張はもっともである。だが、地域間の格差をなくすために必要だから、地方交付税交付金を減らさないようにという地方公共団体の意見には納得できない。国に地域間格差の是正をお願いするのではなく、移譲された(奪い取った)税財源をもとに、地方公共団体の間で、自ら配分調整をするのが地方主権だろう。

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2008年8月11日 (月)

よくもここまで放っておいたものだ――滋賀県の造林公社の債務1千億円

 8月11日付け日本経済新聞は「造林公社債務で滋賀県ピンチ  一括返済へ迫る期限」という囲み記事を載せている。(社)滋賀県造林公社および(財)びわ湖造林公社の農林漁業金融公庫に対する利息支払いが昨年春以来、滞るようになり、同年10月に、全額(480億円余)繰り上げ償還請求の通知を受けた。そこで、県は債務返済計画を立てるとともに、県造林公社に資金を出した大阪府、兵庫県、大阪市など下流8団体にも債務圧縮などを求めて特定調停を申し立てた。しかし、こうした県の打ち出した対策が頓挫している実情を記事は報じている。

 確かに深刻な問題であり、県が窮地に立たされているという見方もありえよう。だが、関係者にとっては、問題ははるか以前にわかっていたことである。森林の果たす役割は重要であるが、それにしても、よくもここまで放っていたものだというのが私の感想である。

 造林公社は山の所有者に代わってスギ、ヒノキなどを植林し、将来、伐採したときに販売収入のある割合をいただく。しかし、伐採して初めて収入を得るというビジネスなので、農林漁業金融公庫から融資を受けたほか、県や下流の府県市などから資金を提供してもらった。無収入なのに、公庫や県に利息を支払わねばならないので、債務残高が膨らむ一方である。近年は県の出した資金(07年度末現在、県公社に83億円、びわ湖公社に343億円)を無利息にしている。

 しかも、スギやヒノキの市況は安い外材の輸入により、1990年ごろから一本調子で下がっている。実に4分の1前後にまでだ。県がこうしたピンチになってから試算したところによれば、県公社は負債総額365億円に対し、将来の収入見込みが約122億円にすぎない。びわ湖公社も負債702億円に対し、約281億円の収入しか見込めない。

 植林は1990年以前に終わっており、あとは保育管理をしているだけだから、経営の悪化は10年以上前にわかっていたことだ。第三セクターだから放ってあったのかもしれないが、県の幹部や県議会・議員、地元住民はどこまでこの問題を真面目に考え、取り組んだのかと思う。国の機関である公庫にしても、延滞が起きるまで何もしなかったのではなかろうか。そうだとすれば、無責任きわまる。

 公庫に対する債務に対して県は返済保証をしている。だが、嘉田県知事は県財政が厳しいので、公庫から一括返済を求められても支払う余力はないと言っている。本来は、放置していた関係者(県の職員、議員、住民)から相当のカネを召し上げるぐらいが当然ではないか。さもないと、財政ゆるふんの地方自治体の甘えがいつまでも続く。

 夕張市もそうだが、破綻すれば、当事者だけでは始末できないから、結局、国の支援などが行われる。つまり、ほかの地域へのつけ回しである。今回も、同じようなことが起きる可能性がある。これでは国・地方を合わせた財政健全化はなかなか進まない。

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2008年8月 7日 (木)

年金の地域経済に占める役割の大きさ

 ことしの厚生労働白書のうち、社会保障関係の部分を読んでいたら、「地域の生活を支える公的年金」と題する記述があった。2005年度の県民所得が1996年度のそれより低い都道府県は43都道府県に達する。そして、すべての都道府県において、2005年度の年金総額が1996年度のそれより大きい。その結果、県民所得に対する公的年金総額の割合は高まり、2005年度に10.1%に達した。1996年度には6.3%だった。

 「年金総額と地域経済の指標」というコラムを読むと、全国を10ブロックに分け、公的年金総額を農林水産業および製造業の域内総生産額と比べたデータを表にしている。それによると、すべてのブロックで年金総額>農林水産業域内総生産となっており、その倍率は最大29.3倍(近畿Ⅰ)、最小2.3倍(南九州)。全体の平均では6.5倍になる。農業の影が薄いのを改めて感じる。

 同様に、ブロック別に、年金総額を製造業の域内総生産額と比較したデータでは、すべてのブロックで年金総額<製造業となっているが、年金総額/製造業の倍率は0.2(関東Ⅱ、東海)~0.9(北海道)である。北海道は年金総額が製造業生産額に近い。これにはちょっとびっくり。全体の平均では0.4、すなわち、年金が製造業総生産額の約4割に相当する。

 異質の数値の比較に過ぎないとはいえ、公的年金の給付額が地域経済、ひいては日本経済全体にかなりの影響を与える規模になっているということだけは理解できよう。

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2008年8月 5日 (火)

いっこうに変わらぬ天下りのひどさ

 2006年12月16日付けのブログで「「天下り」のひどさに唖然」と書いた。そこで取り上げた某公益法人の理事長が最近替わった。今度の人は見るからによぼよぼしていて、意欲、気力は全くなさそう。前任者は新たな天下り先に移ったという。どうやら某中央官庁は80歳近くまで老後の面倒をみているらしい。

 この法人は職員を次々に減らしてきて、いまはほとんど非正規雇用の人たちばかりになっている。今度の理事長交替をみて、同法人で働く非正規雇用のXさんは「ああいう人たちがうらやましいですね」と語っていた。若い人たちを不安定な雇用形態で雇い、自らは高給を食んで渡り歩くというこの不公正さ。こんなことが、お天道さまのもとでいつまでも続くのなら、この日本には明るい未来はないだろう。

 古巣の某中央官庁があっせんしてくれる限り、70歳を大幅に過ぎても、平然と天下りのうまい汁を吸い続けるのをおかしいと思わないのにはあきれる。OBの就職あっせんをしている某中央官庁の官房の連中についても、これだけ天下り批判が強いのに、それを無視する異常さには驚く。狂っているのは厚生省・社会保険庁だけではないのである。

 マンホールに潜って工事をしていた人たちが豪雨で急増した下水道の水流に流されて亡くなった。リスク対応の甘さが原因だと思うが、縁の下の力持ちのように、社会を支えている無名の人々が非業の死をとげるのはあまりに痛ましい。それと対比して、天下りにみられる官僚たちの組織的なエゴに腹が立ってならない。 

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2008年7月31日 (木)

政策論争に一石を投じる『「歳出の無駄」の研究』(井堀利宏著)

 いま政治の1つの焦点は、「ムダ・ゼロ」とか政策の棚卸による歳出の見直しである。国民に負担を強いる消費税などの増税をせずに、財政健全化と新たな重要政策課題への対応とを両立させるためである。しかし、歳出の無駄をなくすだけで増税をしないですむのだろうか。財政危機から脱却できるのだろうか。

 民主党は歳出の見直しで農家戸別所得保障などの財源を確保できるとの主張だし、自民党も、増税派がいることはいるが、次の衆議院総選挙を控えて、まずは無駄の排除を優先すべきだという主張が支配的になっている。こうした政治の最もホットなテーマについて、財政学者が歳出の中身ごとに具体的に金額を示しつつ、歳出の無駄だけでは財政健全化は無理だと言う結論に達している。

 さわりを紹介すると、日本の政府全体(地方自治体や独立行政法人など政府関連の公共部門を含む)で、「絶対的な無駄」が年間4兆~6兆円程度(民主党の言う13兆円程度よりはるかに少ない)、「相対的な無駄」が10兆~15兆円程度、「結果としての(過剰な)無駄」が1兆~3兆円程度あるという。「相対的な無駄」というのは、便益の大きさがコスト(歳出)より小さいものを指す。「相対的な無駄」の内訳は、公共事業3兆~5兆円程度、社会保障8兆~10兆円程度だろうという。

 「これらをすべて削減するのは困難であるが、できるだけ削減するように努力すべきだろう。」。しかし、「こうした無駄の削減だけで増税なしに財政危機が解消するほど、日本の財政赤字状況は甘くない。無駄を完全になくすのが最優先という非現実的な主張にこだわると、財政再建が不確実になり、市場での信頼も損なわれる。財政再建のためには、歳出削減と増税の両方の選択肢を活用するしかない。」

 今後10年程度で財政再建を果たすとした場合、目標とすべきプライマリーバランスの黒字幅がGDP比ほぼ3%から4%程度とすると、社会保障費を中心に歳出は対GDP比3~4%伸びるから、GDP比で7~9%ポイントほどの財政赤字削減が必要となる。歳出規模は上記の削減努力によってGDP比で3~5%程度削減できるとして、差し引き、必要な増税は、GDP比4%ポイント(年20兆円余)が1つのメドになるだろうという。改めて財政赤字の数値の大きさと問題の深刻さに思い至る。

 無駄をなくすにはどうしたらいいか。「わが国で歳出に無駄が多い原因は選挙制度の欠陥にある。」したがって、著者が第1に挙げているのが議員定数の公平さの実現である。「特に、有権者の選好を性格に反映すべき衆議院では、定数が完全に是正された小選挙区制度を早急に確率すべきである。」

 そして、年齢別の小選挙区をつくったらどうかと提案する。20歳代と30歳代の有権者を母集団とする「青年区」、40歳代と50歳代を「中年区」、60歳代以上を「老年区」と、3つの年齢別選挙区を導入することによって、青年世代の選好を政治の場に反映できるようにしようというわけだ。興味深い提案である。紹介し切れないが、本書には、こうした啓発される内容がいくつも盛り込まれている。(もっとも、網羅性を重んじたせいか、細かすぎる記述もみられるのはどうかと思った。)

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2008年7月28日 (月)

諮問会議の「平成21年度予算の全体像」

 7月28日の経済財政諮問会議は「平成21年度予算の全体像」をまとめた。予算編成に当たっての基本的方針であると同時に、国民に対する説明責任を果たすものという。成長力の強化と財政健全化を両立させるとか、財政健全化と重要課題への対応を両立させるといったうたい文句が書いてある。そして、ムダ・ゼロおよび政策の徹底した棚卸で捻出した財源(約3千億円)を重点化ワク(総理特別ワク)として重要課題実現の政策経費に充てるという。

 また、「5.税体系の抜本的改革に向けて」ということで、「経済財政諮問会議、税制調査会等を中心に、税制改革の議論を進め、消費税を含む税体系の抜本的な改革の早期実現を図る」としている。そして「その際、以下の課題を踏まえ検討する」ということで、5つ挙げている。すなわち、「成長力の強化」、「世代間・世代内の公平の確保」、「社会保障を支える安定的な財源の確保」、「低炭素化促進の観点からの税制全般の見直し」、「納税者番号の導入に向けて検討」である。これらの論点を踏まえた税制改革の早期実現は望ましい。

 ただし、よくみると、「早期実現を図る」と書いてあるが、いつまでにという期限を切っていない。どうも逃げがある。論点として、「世代間・世代内の公平の確保」を明示したことは適切である。政治家は、もっと国民に対して、そうした視点での取り組みが必要であることを訴えるべきだろう。それと、「納税者番号の導入に向けて検討」という論点を掲げたのも一応評価したい。「導入を検討」という書き方になっていないところからすると、腰が引けているようだが‥‥。

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2008年7月26日 (土)

2011年度の基礎的財政収支悪化の見通し

 財政健全化をめざす第一歩として、政府は2011年度に国・地方の基礎的財政収支(PB)を黒字にしようとの旗を掲げてきた。しかし、内閣府は22日の経済財政諮問会議で、「進路と戦略」の参考試算を改定し、GDP比マイナス0.7%程度、金額にして3.9兆円程度の赤字になりそうとの試算結果を示した。

 ことし1月の試算では、0.1%程度、金額で7千億円程度の赤字だった。こうした数字は経済運営がうまくいった場合の「成長シナリオ」に基づくもの。しかし、生産性があまり上がらないなどの「リスクシナリオ」だと、今回発表の試算では、PBはGDP比マイナス1.1%程度(1月試算より0.5ポイント程度拡大)にも達する。

 赤字が拡大したのは、1つには税収減によるという。2007年度一般会計決算で国の税収が補正後見込みより1.5兆円程度少なかった。地方の税収も計画ベースを0.8兆円程度下回った。それで、08年度の国・地方税収を2.3兆円程度下げた。いま1つは、2011年度にかけての名目経済成長率を下方改定したためという。諮問会議で、伊藤隆敏民間議員は、見通し改定は①外的ショックによる成長率の低下、②日本が自らつまづいた、すなわち「例の建築基準の改定の影響が非常に大きかった」と指摘している。

 諮問会議の議長として、福田首相は「成長力の強化と財政健全化の両立は容易なことではないが、日本はこの道を追求していくしかない。狭い道だけれども、この狭い道を追求していくしかない」と述べた。もっとも、諮問会議に同席していた町村官房長官は、もっと国民に明るい展望を示す必要があるという意味の発言をしていた。財政健全化の旗を下ろしかねない与党の雰囲気を感じさせる発言である。

 ちなみに、民間議員のペーパーによれば、07年度のPBはGDP比マイナス1.1%程度。国・地方の利払いを含む財政収支はGDP比マイナス2.7%程度。GDPに対する政府債務残高の割合は07年度末で142%程度である。これほど財政危機が深刻だから、新たな財政需要に対しては、諮問会議で民間議員がペイ・アズ・ユー・ゴー(既存の予算を削り、新たな歳出に充てる)や消費税引き上げを求めるのは当然である。

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2008年7月22日 (火)

社会保障の給付と負担のありかたへの選好

 22日発表の経済財政白書には、中長期の社会保障の選択肢について行なったアンケート調査の結果が載っている。(A)給付維持・負担上昇と(B)給付削減・負担維持のどちらを支持するか、の質問に対し、全体としては(A)よりも(B)への支持のほうが多いという。

 回答全体のうち、(A)は4.7%、どちらかといえば(A)が19.3%なのに対し、(B)は14.7%、どちらかといえば(B)が33.6%である。(A)と(B)の中間という回答は27.6%だという。(A)派(4.7%+19.3%)と(B)派(14.7%+33.6%)の割合をみると、ほぼ1対2になっている。

 (B)というのは、1人当たり負担を維持する場合で、①給付を3割程度削減することが必要である、②潜在的国民負担率は45~46%程度に抑えられる、③さらに、合計で年間にして8~24兆円程度の増税が必要となる、というケース。一方の(A)は、1人当たり給付を維持する場合で、①国民の負担は年に11~12兆円程度増加する、②潜在的国民負担率は49~51%程度にまで高まる、③さらに、合計で年間にして14~29兆円程度の増税が必要となるケースである。

 社会保障の将来について、国民が給付の維持のために負担増を受け入れるのか、それとも、負担増を嫌い、給付の削減を受け入れるのか、そのどちらなのかをアンケートは尋ねたわけである。といっても、(B)のように負担維持のケースであっても、財政悪化を止めるための増税は避けられない。日本の財政危機は深刻だから、社会保障を考えるときにも、全体の財政状況を常に踏まえなければならないのだ。

 このアンケート結果を年齢ごとにみると、年齢が上がるほど、(A)派の割合が増え、(B)派の割合が減っている。まあ、常識的な結果と言える。ただ、おもしろいことに、(A)派は55~59歳が一番多く、なぜか60~64歳、65~69歳と段々下がっている。(B)派は55~59歳が最も低いパーセンテージだ。ついでにいうと、(B)派が一番、比率が高い年齢層は25~29歳、(A)派が最も低いのは30~34歳である。

 このように、年齢別にみた選好度合の違いが顕著だと、今後の社会保障制度のありかたに関して老対青という世代間の対立を招きやすいのではないか。衆院選挙が近づくにつれ、老人に一段と配慮する政策をという傾向がみられるが、それは世代間の対立をあおることになりかねない。

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2008年7月21日 (月)

地方財政の危機を訴えた全国知事会

 先週末に終わった全国知事会は、真の地方自治確立に向けた地方分権改革をめざし、「地方への税源移譲を含む税財政構造の改革や、二重行政を解消するための組織改革」を政治主導で推進するよう福田総理大臣に要望した。

 知事会の「地方財政の展望と地方消費税特別委員会」の中間取りまとめによると、地方財政は今後とも深刻な財源不足状態が続く。内閣府の成長シナリオに基づく試算をもとに全国地方自治体の財政を推計した場合、義務的経費や社会保障関係費の増加で、財源不足額は2008年度6.7兆円、09年度7.2兆円、10年度7.5兆円、11年度7.8兆円と膨らむ。これに伴って、財源不足を補填する基金残高は08年度4.1兆円、09年度1.8兆円、10年度0.3兆円と減り、11年度には枯渇する。都道府県・市町村とも11年度には財政破綻するという。

 このため、知事会は地方税財源の充実強化を図ることが必要不可欠としている。まずは国と地方の税源配分を5:5にすべきだと主張。税源の偏在性が少なく、税収の安定性を備えた地方税体系構築のため、地方消費税の充実等、端的に言えば、地方消費税率の引き上げを求めている。また、三位一体改革で削減された地方交付税の総額を復元・増額するよう要求している。地方交付税を「地方共有税」に変更し、国の一般会計を通さず地方共有税特別会計に直接繰り入れるという提案もしている。

 そして、地方自治体は「懸命に行財政改革に取り組み、国を上回るペースで歳出削減努力を行なってきた」のに、国は地方支分部局(出先機関)の廃止・縮小などを進めていないとして、遅れている国自身の行財政改革を断行すべきだと主張した。

 こうした地方分権をより進めるための提案には賛成するものが少なくない。地方消費税引き上げの要求をはっきりとうたったのは、国民に対する問題提起として評価したい。ただし、知事会の要望は地方自治体に都合がいいことばかり書いているという面もある。道路予算については、知事会内部に意見対立もあり、「充実」とか「重点的に配分」という表現しかなく、「削減」という言葉がない。

 また、知事会は歳出削減努力を誇っているが、いまだに、地方自治体では年度末に道路工事などで予算を無理矢理、消化している(片山慶応大学教授)。それに、国が繰り返し求めているが、民間の給与水準を大幅に上回る職員の給与引き下げがなかなか進まない。それらに示されるように、地方自治体の行財政改革は生ぬるい。そのツケが地方交付税交付金などで、国の財政に回っているという面があることは否定できない。

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2008年7月 6日 (日)

“上げ潮派”の提案

 自由民主党の清和政策研究会政策委員会が4日に発表した『「増税論議」の前になすべきこと―「改革の配当」の国民への還元―』を読んだ。①.08年度中の対応(最大6.8兆円)、②.09年度予算での対応(10兆円以上)、③.「歴史的合意のための3年」に使うべき「改革の配当」、④.増税の前に実行・決定すべき3年間の政策課題、の4つに分けて提案し、3つ目は3年以内の「改革の配当」の国民還元(9.2兆円超)、3年以内に合意形成をめざすべきもの(最大31兆円)に分けて提案している。

  「無駄を残したままの増税は国民に許されるものではない」。「政府が抱える膨大な債務だけを強調する議論は日本経済の将来について国民の間に過度の悲観論を誘発している。しかし、資産もまた膨大であり債務は圧縮できる。公の固定経費の無駄はまだ削れる。その分を国民の能力開発や公共サービスに配分すれば経済は成長する」。いわゆる“上げ潮派”の主張がそこに展開されている。

 それらの提案はいわゆる“埋蔵金”といわれるものが中心になっている。これまで、あまり議論されなかったため、国民も気付かない部分が大半だ。しかし、こうした問題提起を真正面から受け止め、大阪府の財政再建のステップのように、制度の1つ1つについて、ゼロベースで見直す契機にすれば、いまの財政論議に大きく貢献することは間違いない。

 この政策委員会をリードする中川秀直氏は、先日の記者会見で、人間力を発揮することができれば、日本も欧米並みの経済成長ができるはずだと言い、上げ潮路線は英国のブレア前首相の考えと全く同じだと語った。そして「夢と希望は普通の政策をとれば、すぐ実現できる」と述べた。ことはそう簡単ではないと思うが、党内での政策論議が活発になるのは、自民党の柔軟性を表す。選挙を意識し過ぎて、半年も1年も党内論議を抑え込むのは、愚の骨頂ではないか。

 そう言えば、中川氏は先日の記者会見で「日本では、エリートのほうが劣化している」、「官僚が優秀だから、日本経済が成長した、なんて全く思わない」、「官の世界に専門人材はいない。ヒューザー関係で、1人もいないことがはっきりした」、「いまは総合性と専門性の両方を兼ね備えることが必要。官から民へ、民から官への人の移動があるべきだ」と官僚に厳しい見解を述べた。政策委員会提案においても、「まず、国会議員が自ら身を削り、公務員も身を削ることが求められる」と書いている。

 ということで、一読をお勧めする(中川氏のホームページ)。 

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2008年6月28日 (土)

「骨太方針2008」は骨太か?

 政府は6月27日に経済財政改革の基本方針2008(いわゆる骨太方針2008)を決定した。その4日前に開催された経済財政諮問会議(骨太方針の原案を審議)の要旨を読むと、骨太方針がどのように決定されているかがわかるやりとりが示されている。

 御手洗冨士夫議員(日本経団連会長)が「EUとのEPA(経済連携協定)は本当に喫緊の課題である」のに、骨太方針のEPA工程表には「将来の課題」とされていることに不満を表明。例えば、「できるだけ早く」というように、もう少し現実的な表現に変えてほしいと述べた。

 それに対し、大田弘子経済財政政策担当大臣は、それを次のように拒否した。「諮問会議で民間議員にご提案いただき、それを受けて私どもは最初の打出しはやって、各省や党と協議しながら、今、ここに落ち着いているというところはご理解いただきたい」と。

 大田大臣は、同じことをもっと率直に27日の記者会見で述べている。「まず、諮問会議で高目の球といいますか、あるべき姿が書かれて、そして、それが各省折衝で少し落ち着いて、また与党調整があるということですね」と。

 これでは、過去の政府や各省庁の審議会のやってきたこととさして変わらない。いまの経済財政諮問会議が小泉首相―竹中大臣の頃とは明らかに変質していることがわかる。

 小泉首相―竹中大臣のコンビのときは、2人のリーダーシップが明確で、諮問会議の準備を官僚任せにはしなかった。また、重要なテーマについては2人の事前の打ち合わせを行なっており、会議の要所で小泉首相の“裁断”が下された。所管官庁の意見を聞いたり、与党の了解をとりつけたりすることは必要であり、譲歩するところはするが、改革の基本は絶対に譲らないという構えがあった。

 それに対し、いまの福田首相は諮問会議に出席してはいるが、大田大臣との連係プレーはほとんどない。政局の難しさはあるにしても、経済財政改革についてリーダーシップを発揮しようという意気込みはあまり感じられない。大田大臣のほうも、よく「取りまとめ」という言葉を用いて、自分を進行係か司会役みたいに思っているらしい。骨太方針2008といっても、実際は政府・与党の結論待ちの部分が多いので“骨細方針”と言うべきかもしれない。

 八代尚宏議員(国際基督教大学教授)が23日の諮問会議で、次のように批判していた。従来は「原則としてどの省が、何を、いつまでに行なうという3つのポイントが示されていた。しかし、前回の諮問会議の素案から本日の原案の過程で、いろんな政策が盛り込まれているが、これらの中には「何々を推進する」というだけで、政策のPDCAが明確でないものが多く見られる。これでは国民にきちっと説明できる予算の基本方針には必ずしもならないのではないか」と。この懸念は決定された骨太方針2008にもそっくりあてはまると思う。

 もっとも、大田大臣は、諮問会議においては、いきなり落としどころで議論するのではなく、まず、しっかりした提案が行なわれ、それが議論され、素案、原案、最後の決定という過程が国民にはっきりわかるところがいいと言う。それは私も評価する。

 財政改革については、歳出・歳入一体改革の路線を引き継いでいるようにみえるが、2009年度予算案の編成にあたって政府・与党からの歳出増圧力をかわせるか怪しい。もっと国民に財政実態を説明し、フリーランチはないことをわかってもらうべきだろう。そこに、首相のリーダーシップのなさを感じてしまう。

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2008年6月24日 (火)

竹中平蔵著『闘う経済学』から

 小泉内閣のもとで郵政民営化などを推進した竹中平蔵氏(慶応大学教授)が『闘う経済学』(08年5月)を出版した。経済財政政策担当大臣や郵政民営化担当大臣などとして小泉改革にたずさわった体験を、「未来をつくる「公共政策論」入門」という副題を付けて学生向けに書いたものである。

 小泉改革については、竹中氏の著書を含め、いろいろ書かれている。ここでは、『闘う経済学』の中で興味をひかれた個所を紹介してみたい。

 1.「ジャーナリズムの多くが、依然として官僚をニュースソースにしている」=不良債権処理のために打ち出した金融再生プログラムへの批判は、「政策批判というよりも、担当大臣である私(竹中氏)に対する個人的なバッシングの形をとった」。竹中氏はその理由の1つとして、このことを挙げている。

 2.「民主主義社会にあって複雑な制度は悪い制度なのである」=自治体の財政破綻などを招く原因を追及した竹中氏は、地方財政制度の問題点の1つに、「複雑でわかりにくい」点があると言う。わかっているのは担当の官僚だけであり、その結果、「彼らの都合のいいような運営をされてしまい、民主主義のチェック機能がまったく働かないことになる」と指摘している。

 3.「経済財政諮問会議の場が、政治のリーダーシップから霞が関的ボトムアップ型に変化している」=小泉改革のもと、政府系金融機関改革などのドラスティックな改革ができたのは、「総理の前で、民間議員が入って、利害調整ではなく政策論の正論をオープンに議論するという経済財政諮問会議の場があればこそだった」。だが、「2007年以降、経済財政諮問会議では、民間議員よりも各省庁側から出されるプランが圧倒的に多くなっているように見える」という。竹中氏はこれを「政策決定のプロセスは生き物のように変化しているということなのである」と淡々と記述している。

 4.「閣僚が官僚のいいなりになる最大の要因は国会審議にあると言う側面がある」=日本では国会の審議時間がかなり長く、「閣僚が国会に拘束されている時間は異常に長い」。「その間の法律審議等々では、大臣は法律についての細かい質問に対して答弁しなければならない。それを支えるのは官僚であり、彼らが想定問答を作成する関係上、官僚との良好な関係を保つことができなければ、国会審議を乗り切ることはほとんど不可能である」。したがって、「国会のシステムを変えない限り政治主導はむずかしい」という。

 5.「「特殊な」総理大臣のもとで、特殊な大臣が数名出てこないと、日本の政策決定プロセスはなかなか改革できないだろう」=政府与党一体で閣議決定する現在の政策決定プロセスだと、大臣に就任してから新しい法律案をつくって国会に提出し、成立するまでに2年かかるという。一方、「実は残念ながら、日本では大臣が2年の期間在職するのはむずかしい」。だから、大臣になって「1年間役所のいうことをよく聞いて無難に過ごすことができればいいということになる」。それは役所の望みとも合致するが、「日本の閣僚が大きな政治的な力を持ちえない1つの理由がここにある」。

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2008年6月21日 (土)

社会保障需要による波及効果

 6月19日に社会保障国民会議が中間報告をまとめ、発表したが、その参考資料を見ていたら、我が国経済において、社会保障分野の影響力が高まっていることを示すデータがあった。

 産業別に国内生産額(実質)を見ると、データは古いが、1990年から2000年の間に、全産業平均で11.1%増えたのに対し、社会保障分野は56.1%増えた。この間、社会保障分野を超える伸びを示したのは通信・放送(130%程度増)だけだった。

 ある産業の最終需要が原材料調達などを通じてさまざまな産業の生産を誘発する。さらにこれらの生産増が所得増を呼び、その所得増が消費を通じてさらに生産を誘発する。それらに基づく総波及効果を見ると、社会保障分野は全産業平均(4.0671)より少し高い。社会福祉が4.2889、医療(医療法人等)4.2635、介護(居宅)4.2332などである。ちなみに、輸送機械産業の総波及効果はもっと高く、4.7741である。

 また、雇用誘発係数を56の産業部門別に見ると、介護は1位で、0.24786、社会福祉が3位で0.18609、保健衛生が8位で0.12209、医療は15位で0.10572だという。社会保障分野は労働集約型のサービスであることを反映しているのだろう。ちなみに公共事業は22位である。

 そして、2002年から2007年までの産業別就業者数の動向を見ると、多くの産業で減っているのに対し、医療・福祉分野に従事する就業者数は474万人から579万人へと、105万人、22%増えた。情報通信業は24%増えたが、38万人増である。

 少子高齢化で社会保障を充実すれば、国内経済の発展につながるというインプリケーションがこれらのデータを通じてうかがえる。ただし、誰がどのように負担するのかの問題が残る。

 資料には、「社会保障給付費の推移」のデータがある。給付費総額は1990年に47.2兆円、2000年に78.1兆円、2008年(予算ベース)に95.7兆円と急速に増大している。しかし、国民所得額のほうは1990年に348.3兆円、2000年に371.6兆円、2008年(同)は384.4兆円と低い伸びにとどまっている。そして「OECD諸国の潜在的国民負担率及び高齢化率」のデータにおいて、「高齢化が最も進んでいる日本の潜在的国民負担率はOECD諸国の中でも低い」と説明している。

 興味を引かれたデータ「地域経済に占める公的年金給付」によれば、県民所得に占める年金総額の割合は1996年度→2005年度に相当、大きくなった。都道府県別に多いほうから、2005年度では、高知県15.2%、島根県15.0%、鳥取県14.4%、愛媛県14.3%、長崎県14.0%となっている。1996年度は高知県が9%台、島根県10%弱、鳥取県8%台、愛媛県8%台、長崎県9%台だった。

 県別に見た65歳以上人口割合の折れ線グラフと、同じく県別に見た県民所得に占める年金総額の折れ線グラフとは一見しただけで相関関係が強いことがわかる。「私の田舎は、若い人はおらず、年金暮らしの老人ばかりだ」と、東北の農村出身の知人が言っていたのを思い出した。

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2008年6月19日 (木)

公共投資改革に関する首相発言

 6月17日の経済財政諮問会議は歳出・歳入一体改革のうちの公共投資改革を取り上げた。冬柴国土交通大臣が馬鹿の一つ覚えのように、ここでも「削減はもはや限界に来ている」と役人の代弁をしていたが、福田首相の意見は割合、明確だった。

  「道路特定財源を見直すに当たっては、地方の発展に欠かせない道路をつくることと同時に、生活者の目線で使い方を見直し、生活者が真に求める重要施策に予算配分を変えていくことが重要な課題である。
 生活者が真に求める重要施策に予算配分を変え、医師不足問題や救急医療など社会保障等の充実を求める国民の声に応えるため、徹底したムダ・ゼロに加え、道路特定財源の生活者目線での見直しなど、政策の棚卸しを活用して対応していきたい」と。

 「その上で、改めて、福田内閣において、財政健全化と社会保障を中心とした国民の安心・安全を両立させる道筋について申し上げたい」として、次の通り語った。

 「まず、これまでの制度を前提とした既定経費については、効率化の徹底など、「基本方針2006」に則った削減を継続する。
 内閣として、国民の期待に応えるために取り組んでいる医師不足問題や救急医療など、社会保障を中心とした重要施策に必要となる歳出については、効率化を徹底した上で、以下の順で財源を捻出して対応したい。
 第1は、これまでの延長上にない徹底したムダ・ゼロであります。
 第2は、生活者目線での道路特定財源の見直しなど、政策の棚卸しである。
 それでも賄い切れないものについては、負担と合わせて国民に選択していただく必要がある。
 21年度予算に向けて、まずはムダ・ゼロと政策の棚卸しによって財源を捻出し、福田内閣の社会保障関係等の生活者が真に求める重点課題に充てることとしたい」。

 そして、福田首相は「最後に、(諮問会議の)民間議員には、公共投資に限らず特別会計全般について目を光らせる必要があるので、ムダ・ゼロ、政策の棚卸しに向けた提案をいただくようお願いしたい」と言った。

 これを読むと、福田首相の基本的な考え方がうかがえる。今後、各論で妥協の連続ということがないよう強く望む。小泉首相時代、諮問会議を政策決定の場としてフルに活用したが、福田首相も、国民に自分の考えを明確に発信し、政府・与党を引っ張っていくなら、国民の支持率が上がるのではないか。

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2008年6月15日 (日)

やらねばならない医療制度効率化

 6月10日に開催された経済財政諮問会議のあとの記者会見で、大田弘子経済財政担当大臣が、「基本方針2006」で社会保障費を毎年2200億円削減するといっているのは、「毎年で言うと1兆円伸びているところを8000億円に抑えるということですので」誤解をしないでもらいたいと発言している。

 確かに、報道記事を読んでいると、社会保障費が毎年2200億円ずつ減少していくと受け取られかねない書き方をしていることがある。おそらく、国民の中には、そうした誤解をしている人もいるような気がする。また、最近、政治家からは、もはや効率化の余地はない、逆に、医療などで起きている問題を解決するためには、むしろ歳出増が必要であり、したがって基本方針2006にこだわる必要はないという意見が出てきている。大田大臣の発言は、そうした情勢を踏まえてのことだろう。

 ところで、10日の諮問会議では、民間議員4氏が「社会保障の徹底した効率化努力を」というペーパーを提出し、「現行制度の効率化にはまだまだ努力の余地があるのではないか」(八代尚宏議員)と言っている。

 そこで具体的に挙げているのは、まず、過剰投薬、重複検査や、保険の不正請求といった現行制度の問題点である。コンタクトレンズ処方の診療や、柔道整復の療養費などの不正・不適切な保険請求を是正することも必要である。また、手術前の検査入院が長過ぎるので、入院期間を半分以下に短縮すべきだという。

 第二に、医療のIT化(レセプト・オンライン等)の推進である。400床以上の病院は08年度からオンライン化を義務付けられたが、これを早くほかにも広げ、レセプト審査費用削減だけでなく、データ解析による検査・投薬の重複をなくす必要がある。

 第三に、後発医薬品の使用率引き上げである。フランスでは、後発薬にしか保険を適用しないという。日本でも、それをやれば、40%まで引き上げられるという。

 第四に、開業医の再診料のほうが病院よりも高いという説明のつかない診療報酬体系を改めるべきである(この格差をどう見直すべきかについては触れていない)。また、公立病院の人件費割合が高過ぎるなどの公立病院の問題点を改めるべきだという。

 以上のような対策を本気になって実施すれば、医療費を抑制可能だろう。私の見解を付け加えれば、医薬分業で処方箋専門の医薬販売店がたくさん生まれたが、それは調剤基本料、調剤料、指導管理料などで高い点数を稼げるからだ。そこにメスを入れたら、医療費を減らせると思う。

 このペーパーでは、医療人材の確保策についても、いくつかの対策を提示している。それはさておき、厚生労働省も、与党の厚生族議員も、国の財政の危機的な状態を考えずに、相変わらず高成長時代の感覚で考え、行動しているのには呆れ果てる。

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2008年6月14日 (土)

「恐るべき外務省の賃金体系」

 中央政府や地方自治体の予算をつくるとき、新規の歳出(支出)については簡単には認められないが、継続部分についてはほとんどチェックされない。国の一般会計については、財務省が査定するが、継続部分に関してはほとんどフリーパスだといわれる。

 すべての予算項目についてゼロベースで見直したら、相当、削減が可能だという意見があるのも、そういう事情があるからだろう。

 田中森一氏と佐藤優氏の対談『正義の招待』(08年3月刊)を読んでいたら、「恐るべき外務省の賃金体系」などの小見出しのついた個所で、外務省の給与体系がベラボーに高いことを佐藤氏が述べている。「外務省の最大の問題は派閥などよりもっと別の次元にあって、その一番のガンはおそらく給与体系だと思います。(中略)外務官僚の生涯賃金って、たとえ高卒のノンキャリであったとしても普通の検事さんなんかよりも遥かに多いと思いますよ。」、「最終的には他の公務員の3倍ぐらいはもらえる仕組みができているんです。」という。

 給与のもらいすぎという甘い蜜を「外務省の場合、下の下にまで、隅々にそれが行き渡っているという構造ですよ。これが外務省の凄みというか、犯罪的な部分だと思うんです。一部の人間だけが蜜を吸っているのなら、かならず下克上や内部告発という動きが起きて、それなりの自浄作用が生まれる可能性があります。しかし、外務省すべての人間が上から下まで甘い蜜を吸える構造になっているからこそ、そうしたことは起きない。完全に「一家一門」の意識ができあがっている。一種の犯罪組織だと言っても過言ではない。」

 「外務省なんていうのは人間を半分に減らしたって十分やっていけるんじゃないかな。だって、半分以上の人間はほとんどたいした仕事していないんですから。でも、そういう人間に対してすら手厚い保証をしているので、問題点がなかなか表に現れてこないんです。」

 佐藤氏によると、外務省は、人事院で決める公務員給与とは別に、外務人事審議会というところで海外勤務手当をすべて決める。海外赴任中に私たちが驚くほどお金を沢山貯めることができるのはそのせいだ。「いちおう外部の有識者から構成されているんですが、要するに外務省自身のお手盛りなんですよ。」。もっとも、鈴木宗男氏が国会で追及したので、「今はどんどん下がってきている」というが。

 「出世コースから外れて課長になれなかったキャリアの連中と、45歳以上のノンキャリアというのは、実質上、退職するまでの二十数年間はずっと窓際なんですよ。しかし、かりにそいなったとしても、給料だけはずっと良いままなんです。(中略)プライドさえ捨てれば、お金は溜まるし、仕事はないしで、最高の職場なんですよ。」

 この『正義の正体』という本、たまたま、目にして読み始めたのだが、おもしろかった。刑務所と拘置所の違いなんてことも、初めて教わった。 

 

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2008年6月 8日 (日)

大阪府・橋下知事の言やよし

 大阪府は「大阪維新」プログラムを5日に発表したが、橋下徹知事のコメントは立派だった。国がもっとカネをくれないとやっていけないと愚痴る他地域の知事に、橋下さんの爪のあかを煎じて飲ませたいとすら思う。

 知事のコメントで感心したのは、第1に、住民に対し、行政の収入の範囲を超えたサービスを求めるな、と言い切ったことである。行政の収入の範囲を超えるサービスが欲しいなら、それに見合って税金を多く納めるか、さもなければ、行政に頼らず、住民自らが汗をかきなさいと言っている。行政の収入が減ったら、行政サービスもいままで通りというわけにはいかない、減るのを覚悟してもらいたい、と言う。

 第2に、崩壊したといわれる地域コミュニティを再生し、従来、もっぱら行政に依存していた地域での互助活動を、財政難で行政が手をひいたあとは、住民同士で経費を負担してでも続けようとか、住民同士が汗をかいて協力して続けようというように思ってほしい、と住民に求めたことである。

 第3に、従来、行政は必要な事業経費を積み上げ、収入が足りなければ、起債(借金)で賄ってきたが、この発想を根本から転換し、収入の範囲内で予算を組むという原則に徹した。それで、借換債の増発および減債基金からの借り入れという禁じ手に頼らず予算を編成した、と言う。もっとも、退職手当債85億円~185億円を発行するから、完璧ではない。

 第4に、大阪を変えたいという思いを府民と共有することが大切だと述べている。そして、「高い経済力と歴史文化の蓄積」、「個々の地域が持つ主体性と先見性」、「自主自立の精神に裏打ちされた人々のバイタリティ」の3つこそが大阪本来の強みだと指摘し、府民のみんなの力を結集していこうと呼びかけている。

 コメントを読むと、知事は、泣き言を言わないし、改革のけわしい道のりを述べて府民に覚悟を迫っているなど、リーダーシップを発揮しているように思える。福田首相ら現内閣も、これぐらいにはっきりと国民に財政危機の実態を説明し、財政健全化のために何をしなければならないかを明確に言うべきだろう。

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2008年6月 4日 (水)

歳出増の圧力が高まる季節

 6月3日、財務省の財政制度等審議会財政制度分科会が「平成21年度予算編成の基本的考え方について」という建議を額賀財務相に出した。同審議会は財務省の意見を代弁しているようなものだが、景気にかげりがみえ、いまでも深刻な国家の財政状態がさらに悪化するので、建議の本文には危機感がみなぎっている。

 「膨大な債務残高を抱え、金利上昇に脆弱な状態が続いている」、「政治のつけを国民に回すことなく、将来世代への責任を果たし得る規律ある財政運営を行うよう強く求めたい」、「最近の歳出圧力の増大には大いに懸念を持つものであり、現在進められている財政健全化に向けた取組の手綱を緩めてはならない」、「ひとたび財政の健全性に対する市場の信認が揺らげば、リスクプレミアムの拡大という形によっても、国債金利の急激な上昇が懸念される」等々と。

 いま、世の中は後期高齢者医療制度や救急医療体制、産科医不足など医療問題、介護サービスの担い手不足など介護保険制度問題、年金制度の抜本改革、少子化対策など、社会保障制度をめぐる問題が次々に噴出。市民が安心して暮らせるように保障を充実すべきだという歳出拡大要求の大合唱。学校教育のありかたについても、文部科学省が予算の大幅拡充を求めている。

 これに対し、与党の中で財政健全化を唱える政治家や財務省は、小泉内閣のとき、「骨太の方針2006」で掲げた2011年度の国・地方のプライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化の目標を下ろさないようにと必死だ。それが上記の財政審建議につながっている。

 民主党との対抗上、与党・政府の多数はばらまきでプライマリーバランス黒字化の目標を一時、棚上げしようとしているようにみえる。しかし、建議にもあるように、日本が財政健全化の努力を放棄したとみなされたら、日本の長期金利が上がる(国債が値下がりする)のではないか。長期金利上昇は国債・地方債の利払費増を招き、国・地方の財政が一層悪化する。

 したがって、国と地方で800兆円近い長期債務を抱えていて、いまなお債務が増え続けている現実を踏まえて、政治は、そしてメディアもだが、無い袖は振れない、フリーランチはないということを国民にはっきりと言わなければならない。財政支出を増やしてほしいなら、それに見合う増税を受け入れることを覚悟してもらわねばならない。あるいは、いままでの支出を見直して、優先度の低い支出項目から順次、削減して財源を捻出するしかない。

 日本経済は長かった景気上昇局面が終わったようだ。資源エネルギーの猛烈な値上げで、日本から所得がどんどん資源国に流出していて、日本国民は貧しくなりつつある。しかも、少子高齢化対策で国・地方の財政支出は増大基調にある。そうした厳しい実態を国民にきちんと知ってもらうことが必要である。

 と同時に、戦後の経済成長時代にできあがった仕組みや制度を、木に竹を接ぐような改正を繰り返して今日に至っているから、制度はどこかに無理があるし、国民にはわかりにくい。それゆえに、官僚が好き勝手に制度を運用してきたのだとも言える。できれば、それをご破算にして、日本社会の新たな将来ビジョンをもとに、社会保障制度、税制などを、国民にわかりやすい、公平で、簡素な、そして活力あるものに抜本改革していかねばならないように思う。

 6月3日に、日本記者クラブで、厚生労働省の江利川毅事務次官が「我が国の医療政策 特に、長寿医療制度について」というテーマで話をした。あとで、そっちの分野には疎い高齢の某氏が「聞いていて何にもわからなかった」と言っていた。制度がややこしいだけでなく、論理的ではないせいだ。私もよくわからないほうの1人だが、政府はこれまで、制度ごとに、その時々の微縫策でごまかしてきたため、社会保障制度全体のあるべき姿という観点が弱くなっているのではないか。

 これまで、国会などの議会が役所に依存し、国民も政治家や役所に依存してきたが、民主主義国家にふさわしく、政、官、民が一緒になって医療、年金などの制度をつくりかえるようにしたい。政治がその音頭をとるべし。

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2008年5月25日 (日)

公的年金基金運用体制のありかた

 経済財政諮問会議のグローバル化改革専門調査会(伊藤隆敏会長)が5月23日、「公的年金基金運用の改革に向けて」と題する第二次報告を公表した。副題は「世界の経済成長を生活の豊かさに」である。

 この報告書のうしろのほうに、市場運用をしている外国の公的年金基金がどんな資産に投資しているか、その構成割合を示すグラフ・表がある。その中からいくつか取り上げると、オランダの公務員総合年金基金は海外債券36%、海外株式35%、国内債券7%、国内株式1%、その他21%。フランスの社会保障基金は海外株式53%、債券26%、国内株式9%、その他12%。カナダの所得比例年金は海外株式33%、債券25%、国内株式24%、その他17%。ノルウェーの政府年金基金-グローバルは海外債券59%、海外株式41%。

 これらの年金の平均収益率は7%前後~10%台である。これに対し、日本はどうか。国民年金・厚生年金保険は平均収益率(直近5年)が3.5%と半分以下である。運用資産の構成は国内債券64%、国内株式17%、海外株式11%、海外債券8%である。ほかの国と違うのは、国内資産のウエートが大きいこと、株式の割合が低いことなどの点だ。成長率の高い国に投資するほうが大きなリターンを得られる可能性が強いのに、低成長、低金利の日本の有価証券を主体にしているのである。これでは150兆円もの巨額の運用資産を抱えている国民年金・厚生年金保険の加入者は浮かばれない。

 政府が財政投融資などの特別会計に年金積立金を注ぎ込む仕組みを長年、続けてきたため、年金を預かる厚生労働省は資金の運用なんてことは真面目に考えてこなかった。それどころか、自分たちの利権として、せっせと積立金を流用してきた。というわけで、リスクとリターンの関係をきちんと踏まえた最適の運用とはほど遠い状態にある。

 西欧の国々並みに運用成果が上がれば、年金の保険料率を引き下げるとか、年金給付額を増やすということが可能になるはずだ。今回の第二次報告は、そのための改革を提案している。すなわち、政府が中期計画で運用の基本的枠組みをガチガチにしばってしまう現在の硬直的な運用体制を改め、機動的な運用が可能になるようにすること、国際的に通用する人材を雇用できるようにすること、150兆円を分割してベビーファンドをつくり、それぞれ別々に運用可能にすること、などだ。

 日本では相変わらず預貯金が一番、安心だという人が多い。しかし、日本経済の成長率は低く、財政危機だし、少子高齢化が進む。日本国内での資金運用をめぐる環境はきびしくなる一方だ。それにインフレのおそれもなしとしない。したがって、年金を含め、資金の運用については、もっと世界に目を向けるほうがいい。経済オンチの厚生労働省に年金を任せておくのは危険きわまりない。

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2008年5月21日 (水)

納税者番号の導入に向けての動き

 5月20日の経済財政諮問会議は歳出・歳入一体改革をテーマの1つにし、税制改革も取り上げた。その中で、民間議員(4名)は議論すべき6つの論点を挙げたが、6つ目は「納税者番号の導入に向けて、社会保障番号との関係の整理等を含め具体的な検討を進める」というものだった。

 大田弘子経済財政担当大臣によると、民間議員から「納税者番号の導入が信頼を獲得するためには不可欠であるし、税の公平・公正にも不可欠。電子政府の工程表を作ろうとしているが、あわせて納税者番号も工程表をつくって取り組むべき」という意見があったという。同じく民間議員から「納税者番号も過去いろいろな経緯はあるが、それにこだわらず導入すべき」との意見もあったとのことだ。

 財務省などの資料によると、先進国の多くが納税者番号の制度を持っている。社会保障番号を基本にしている国、住民登録番号を基本にしている国、税務番号を基本にしている国、とさまざまだが、大体は税務と社会保険と年金に共通して使っている。一方で、英国、ドイツ、フランスには納税者番号制度がない。

 日本では、セキュリティの面や、プライバシー保護について不安があるとの見方から、納税者番号制度の導入についての積極的な支持はほとんどない。政府が相当のカネを投じて導入した住民票コードの制度にしても、全く機能していない。

 ただ、統一的な番号が使われていたら、所得の把握がしやすくなるので、クロヨンなどと言われるような課税の極端な不公平などは多少なりとも是正されるだろう。また、各種の社会保障制度とリンクして、本当に助けを必要としている人たちに支援の手をさしのべやすくなるだろう。それよりも何よりも行政経費を減らすことが可能になる。危機に瀕している日本財政にとっては、のどから手が出るほどに導入したいものだろうと思う。

 現実には、政府の望みは全くといっていいほど国民に相手にされていない。だが、メリット、デメリットを冷静に議論する土俵を常に用意しておくことは必要である。

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2008年5月18日 (日)

80兆円を4等分して考えると―

 5月3日のブログで与謝野馨衆議院議員(前内閣官房長官)の「割り勘」論を紹介した。政治家には国民にわかりやすく説明する能力が必要だが、5月16日(金)の記者会見で、同氏のその能力を改めて実感した。

 いまの政治は「迷路のように小さいところにどんどん入り込んでいる。政治は大きな柱の部分を論じなければならない」と言って、与謝野氏は柱となる4つの問題を取り上げた。その1つ目が財政再建である。

 これについて、同氏は「国の収入(税収)は約50兆円、支出は約80兆円。民主党は15.5兆円の支出カットができると言う。しかし、支出の80兆円を4等分すると、最初の20兆円は借金の利息(返済)に充てる。次の20兆円は地方(自治体)に渡す。これはいまでも少ないと地方から叱られる。そしてもう1つの20兆円は社会福祉に充てている。これは放っておくと、あっという間に増える。最後の20兆円が、公共事業、教育、自衛隊、公務員給与など、我々が関与している予算です」と言う。

 つまり、国の一般会計の歳出は、事実上4分の3は使途が決まっていて、国会で使途を議論できるのは、たったの20兆円しかないと説明する。なんともわかりやすい説明の仕方だと感心した。(民主党がわかりやすい反論をすることを期待する)

 その説明の前段階として、財政危機の実態について「国は550兆円もの借金がある。いま金利は1.5%前後だが、金利が1%上がれば、550兆円×0.01(=5.5兆円)、金利支払が増える」ということも言っていた。

 以上の話に対して、特別会計があるのに、それを無視しているではないかなど、与謝野氏の話に問題があるという批判は可能だ。しかし、国の財政がいかに危機的な状況にあるかということを国民に知ってもらうために、わかりやすくおおまかに説明するという点で、同氏はすぐれている。それに比べて、福田首相は説明責任能力(アカウンタビリティ)が無さ過ぎる。

 与謝野氏は財政再建のほかに、経済、資源エネルギー、環境の問題も取り上げていたが、経済については「まだ日本経済は一流だと思っているが、少しずつボロになっている」、「このままだと日本経済は劣化する。このままではいけないという認識を国民が共有する必要がある」とし、「日本の社会が貧しくなることを私は一番おそれる」と抽象的な表現だが、強い危機感を表明した。氏が日本の政治の現状を憂えるゆえんの1つである。

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2008年5月16日 (金)

いまも多い大阪市職員の処分者数

 サンケイ新聞のニュースによると、大阪市の職員の不正による処分者数は相変わらず多い。04年度(平成16年度)は6645人、05年度は2180人、06年度は321人、07年度は1382人、そして始まって間もない08年度はすでに1ヵ月半の間に132人だという。08年度は出退勤のタイムカードの不正記録で懲戒免職1人を含めて121人にのぼるそうだ。カラ残業、組合活動がらみ、飛鳥会事件、学歴詐称などが処分の理由である。

 04年度以降の合計で1万人を超す。市職員が約4万人だから、いかに処分者が多いかがわかる。

 大阪市が税金をどれほどムダづかいしてきたかは、吉冨有治著『大阪破産』(光文社、05年10月)に詳しい。ハコモノや第三セクターにカネを注ぎ込み、職員にはお手盛り手当などの極端な厚遇をして、財政を危機的状況まで追い込んだ。カラ残業など、職員の腐敗ぶりもひどかった。

 このため、市は06年2月に「市政改革マニフェスト」を発表し、「これまでの慣行、先例と決別し、行財政規模を現在の人口や税収に見合った「身の丈」サイズに改めるとともに‥‥」と改革の決意を表明した。マニフェストの改革がどこまで進んだかを情報公開しており、それを読む限り、改革は進んでいる。平松邦夫市長に代わって半年たったばかりなので、平松カラーはまだ感じられないが、処分者数をみると、職員の意識改革は日暮れて道遠しのようだ。

 中央省庁でも、社会保険庁や国土交通省などの腐敗ぶりをみると、個々の職員および組織の意識改革がどこまで進んだかと疑問に思う。大阪市もそうだが、市民がもっと批判の声をあげ、監視の目を強めることが大事だ。メディアの役割はきわめて大きい。

 『大阪破産』の著者は「大阪市の不正はなにも昨日今日の話ではないはずだ。もう何年も、10数年も前から行われていた不祥事のはず。むろん、多くは秘密裏に行われ、オモテに出ることはなかったろう。それでもウラの悪事を暴くのが本来のマスコミの仕事ではないのか。役所の発表資料を書き写すことだけが記者の仕事ではない」と書いている。

 マスメディアは、国の政治についても、地方自治体の行政・議会についても、本質的な問題をどんどん取り上げていかないと、存在価値が薄れる。特に新聞はいま読者が減っているだけに、市民の生活に直結した政治、行政に切り込む報道こそが新聞が生き残る道の1つであることを自覚すべきだろう。 

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2008年5月14日 (水)

高齢化を社会保障給付の面から見ると

 5月13日の財政制度等審議会のナントカ部会は数字(金額)面から社会保障制度の実態を示す資料を出している。膨大な資料のうち、一番、興味を抱いたのは、吉川洋東大教授のプレゼンテーションの中の「1人の生涯から見た社会保障給付の姿」という図である。生まれてから死ぬまでの生涯に、平均1人が毎年、どんな種類の給付をいくら受けるかが5年刻みで色分けしてある。

 生まれてから20歳過ぎまでは、児童手当、保育所・幼稚園、義務教育、高校、大学といろいろ給付がある。小学校以降、高校までは毎年、100万円前後の給付を受ける。そのほとんどが学校教育であり、わずかだが医療の給付がある。

 社会に出たあとは、60歳まで給付は非常に少ない。ただ、年齢が上がるにつれて、医療費が増えている。それでも、55~60歳では雇用保険を足して年間30万円程度である。

 しかし、60歳を過ぎると、老齢年金の給付が加わるので、60~65歳の給付年額は55~60歳に比べ2倍強に増える。そして、65~70歳は老齢年金がフルに給付されるうえに、医療費も多くなるし、介護保険の給付もあるので、給付額が年180万円ぐらいに達する。うち医療・介護の給付は年50万円程度である。

 70~75歳は年200万円ぐらいの給付である。年金が約130万円、医療・介護がおよそ70万円だ。

 そして、評判の悪い「後期高齢者」となると75~80歳で給付は年220万円ぐらいになる。そのうち、医療・介護が年90万円ほどである。80歳以上になると、さらに増えて年260万円ぐらいである。80歳以上の給付の内訳は、年金と医療・介護とがほぼ半々。すなわち、医療・介護の給付が年間130万円ぐらいということだ。

 以下は、この図を見ての感想。

 上記の金額は、介護サービスを受けない高齢者とか、医者にあまり行かない高齢者を含めての平均である。したがって、当然、中にはケタが違うほど巨額の医療・介護サービスを受けている人もいる。いずれにせよ、社会保障は世代間の助け合いの色彩が濃いから、こうしたデータを見る限り、少子高齢化によって現役世代の負担がどんどん重くなることは明白である。

 社会保障の給付金額は高齢化に伴い、今後も増え続ける。06年度89.8兆円だったのが、15年度には116兆円に達するという試算(厚生労働省)もある。では、そのカネをどうやって調達するかが最大の課題である。

 従来、医療・介護のムダをなくせという意見もあったが、最近は、医療危機ということで逆に医療にもっとカネをかけろという声が強い。医療費を効率化するために始まったばかりの後期高齢者医療制度についても修正すべきだという“バックスピン”が強いし、介護サービスにしても、サービス報酬を引き上げるべきだという要望が多い。

 だが、政府は08年度予算でも歳入の約3割を国債発行でまかなうほど借金に依存している。財政危機に瀕している。だから、増税か、医療・介護保険の保険料引き上げないし自己負担率引き上げか、という話になる。しかし、いまの政局では与野党とも、それらに触れたがらない。

 経済成長で税収増をという主張も一部にあるが、成長をはかるには、規制改革や法人税率の大幅引き下げなどが必要。しかし、それらを本気で実施する動きはみられない。

 また、世論調査からは、道路特定財源を一般財源にして、社会保障の充実に振り向けるべきだという国民が多いことがわかる。だが、与党も知事たちも、いまだに道路建設を優先しようとしている。

 このように、いまの日本は真剣に国の将来を考えるリーダーがほとんどいない。これでは、国の明るい展望はない。若い世代を絶望させるばかりだ。

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2008年5月 2日 (金)

経済がわからない「厚生」官僚

 厚生労働省の旧労働省系幹部OBがいつぞや「旧厚生省の人はおよそ経済がわかっていない。厚労省内で議論すると、話にならない」とあきれていた。旧労働省の人にしても、私から見る限り、経済がわかっているとは思えないが、その人たちがひどいと言うのだから、想像を絶するひどさだと推察する。

 厚生行政は年金保険、医療(医療、薬事、医療保険)、介護保険、保育など多岐にわたる。しかも、少子高齢化や日本経済の活力低下などで、それらに対する国民のニーズが増大しているので、提供するサービスの経済規模も増える一方である。しかし、厚生官僚には、国民が必要とする社会保障サービスは、政府が直接に関与してサービスの内容を決定し、かつ提供すべきものであり、カネもうけをする民間にはなじまない仕事であるという意識が強い。

 その結果、財政支出が許す範囲でしか、社会保障関連のサービスを提供しない。そして、無い袖は振れない、と平然としている。また、縦割り行政も強固なので、他省と一体で問題を解決するということも起こらない。というわけで、例えば、保育所が足りないために働くことができない子育て中の母親をなくすという「新待機児童ゼロ作戦」にしても、国家財政の予算が将来、いつか増えるのを漫然と待っているだけである。

 国民がどんなサービスを求めているか、それを供給するために、官民がこぞって衆知を集めて、どんな仕組みをつくったら、コストおよび満足度の点で一番よいか。そうした思考が情けないことに、厚生官僚にはみられない。社会保険庁の仕事ぶりが典型的であるが、厚生行政は相変わらず、経済学の考えや、お客さま志向が欠如したままなのである。

 5月1日付け日本経済新聞朝刊の「経済教室」に、学習院大学の鈴木亘准教授が「待機児童対策、市場原理で」を書いている。認可保育所に入っている子供の家庭だけが運営費(約2兆6千億円)のおよそ4分の3の補助金をもらっているようなもの。バウチャー(利用券)を全部の家庭に与えるほうが、すべての保育希望に応えることができるうえに、財政負担も少なくてすむという。

 国の財政は社会保障関連を担う厚生行政の分が突出して大きい。そして、まだ年々ウエートが上がる。経済学や市場競争原理などを知らない厚生官僚に任せておくと、財政の健全化どころでなくなる。  

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2008年4月21日 (月)

「上げ潮派」高橋洋一氏の見解

 昨日のグログで高橋洋一著『さらば財務省!~官僚すべてを敵にした男の告白』を取り上げた。日本の財政を危機と見るか、どうすべきか、といった点について、同氏はいわゆる「上げ潮派」に属する。「財政タカ派」とは真っ向から対立する考え方である。

 そもそも、財政危機に対する認識が両派は全く違う。高橋氏によれば、政府の抱えるグロスの「粗債務」は大きいが、金融資産を差し引くと、「純債務」は約300兆円まで減る。だから、同書は、「実は、日本が財政危機ではないことは、財務省自身がよく知っている」と書いている。その例示として、財務省の国内向けと海外向けのアナウンスはまるで違うという。2002年、アメリカの格付け会社が日本国債の格付けを引き下げたとき、財務省は純債務でみれば財政危機などではないと主張したのだという。もっとも、高橋氏は、そのすぐあとで、「私は、財務省のいう財政危機は大げさだと思うが、さりとて安心していいとも思えない」と述べている。

 「上げ潮派」は、財政再建には、まずデフレ脱却をめざす。次に政府資産の圧縮を、そして3番目が歳出削減、4番目が制度改革、そして最後に増税という順番を唱える。そして、高橋氏によれば、日本がデフレ基調から脱却できないのは、日銀がハイパワードマネーの供給をしぼっているからだという。「ハイパワードマネーを増やすには日銀が国債を購入しなくてはならない」が、それは戦前の軍備拡張路線を支えた国債引き受けという屈辱の歴史を踏まえると、「日銀にとっては大蔵省(財務省)への屈服、敗北を意味する」。それは日銀エリートの矜持が許さないという。

 だが、「もし、日銀が適切な金融政策をとって2%程度の緩やかなインフレになり、デフレ脱却をしていれば、現在の実質成長率2%に加えて、上げ潮派が目標とした名目成長率が達成されていた」と述べている。そうなれば、財政健全化しやすいというわけである。

 高橋氏はまた、「経済成長こそが、財政再建への近道であるという事実は疑いようもない」として、目先の財政収支の均衡しか頭にない財務省の「財政原理主義」を批判する。とともに、「財政タカ派にとって財政再建は二の次、彼らはどうあっても増税が必要だという結論を導き、消費税率をアップしたいのだ」と批判している。

 そのほか、日本政府は公務員などの人員は先進国では少ないものの、政府資産の規模で見れば大きな政府であると指摘する。「少ない官僚が大きな金融資産を抱えているということは、官僚1人あたりの権限が他の先進国より何倍も大きいのだといえるかもしれない」とおもしろい解釈をしている。

 上げ潮派の代表的な人物、中川秀直自民党元幹事長が提起した霞が関埋蔵金論争にも陰で関わっていたようだが、高橋氏が財政改革を進めるための方策を次々と提起した功績は大きい。「財政タカ派」に対する氏の解釈は極端すぎるし、日銀への解釈も同様だと思うが、財政健全化をめぐって経済論争だけでなく政治的論争が起きるのはいいことだ。 

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2008年4月18日 (金)

経団連の国家予算制度改革提言

 日本経団連が4月15日に提言「財政健全化に向けた予算制度改革」を発表した。財政健全化は待ったなしの課題だが、それを達成するためには、立法府および行政府における予算制度にまで踏み込んで改革をする必要があるという問題意識に基づく。

 提言では、「当面の措置」として、立法府に「財政健全化に係る中期的コミットメントの形成」を求めている。5年間程度の財政構造改革目標を設定し、「歳出歳入改革法」制定などで一定のコミットメントを行なうことを求めている。その内容には、一般会計ベースの基礎的財政収支(PB)黒字化に加え、国債残高対GDP比の安定的低下も盛り込む。さらに、財政再建と経済成長を車の両輪ととらえ、経済成長の維持、国際競争力の強化に必要な施策を盛り込むとしている。

 中長期的観点から、衆議院および参議院の事務局、特に予算議決の優越的権限を付与されている衆議院の事務局の情報収集・分析機能拡充が必要だとしている。財務省や内閣府に判断の前提となる情報を全面的に依存している状態は望ましくないからだ。

 また「将来的課題」として、一般会計のPB黒字化を達成したあとは、財政構造改革の目標を「債務の利払費までをカバーする財政収支の改善に向けた赤字縮減とすることが考えられる」としている。

 衆議院事務局の企画・調査能力を強化し、「必要に応じて外部の研究機関なども活用して、行政府の想定するマクロ経済や財政収支見通しについて多角的観点から検証を行なう」ようにし、国会のコミットメントと政府の施策との整合性を確保するという。参議院事務局については、決算審査をより実効性のあるものにするためのサポート体制を強化すべきだと述べている。

 行政府に対しても、当面、政策評価制度を充実すること、それと予算との連携を強化することと、将来的課題としては、「予算編成担当部局への政策評価担当部局の統合も検討すること」を求めている。

 「はじめに」で、「政治情勢などにかかわらず、長期的な観点から財政規律の回復に向けて着実に取り組むための仕組みが必要であり、そのためには、立法府および行政府における予算制度のあり方にまで踏み込んだ改革が求められよう」と、問題意識を書いている。現下の“ねじれ国会”を思えば、経済界がこうした提言をした理由が納得できる。

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2008年4月15日 (火)

野口悠紀雄『戦後日本経済史』から

 野口悠紀雄著『戦後日本経済史』(2008年1月刊)はあれこれエピソードが盛り込まれていて、興味深い。田中角栄をめぐる話は、現在の政治テーマである道路特定財源にも触れている。

 大蔵大臣になって「大蔵省を掌握した政治家はきわめて少ない。田中の前に池田勇人、後に竹下登がいるだけと言ってよい。ただし、竹下は、大蔵省の望む政策(とりわけ消費税の導入)を実現するために、自民党に対する防波堤となった。つまり、彼は大蔵官僚のために働いたわけだ。それに対して田中は、大蔵省の方針に反して自らの意思を通した。このような大蔵大臣は空前であり、(財務大臣を含めても)絶後であろう」と書いている。情けない話だが、その通り、“官主政従”だと私も思う。

 1953年に議員立法で揮発油税収を道路財源にした田中は1963年に、45歳で大蔵大臣になった。1971年、自民党幹事長のときに道路財源として自動車重量税を創設した。大蔵省は特定財源を嫌うが、にもかかわらず、実現したのは、「大蔵省を意のままに動かせたからだ」という。特定財源措置は「自民党道路族にとって重要な権力基盤となった。そして、この利権構造は、小泉構造改革によっても少しも揺らがず、現在まで続いている」。

 1973年10月、田中首相は参議院選挙を控えて給与所得控除を1974年度に大幅に拡充する方針を打ち出し、オイルショックが起きたにもかかわらず、実施した。また、1973年に公的年金の給付額の大幅引き上げ・物価スライド制導入、老人医療の無料化を行い、「福祉元年」と呼ばれた。同書ではこれらを「開闢以来」のバラマキと評価し、「その後の財政構造に大きな後遺症を残した。現在に至るまで、財政問題の基本は、この2つで規定されている。「財政再建」と言われるが、この2つが残る限り不可能なことだ」と断定している。

 同書でもう1つ注目したのは、金融危機に関する記述。金融機関の貸出先が破綻しなければ、税務当局は損金処理、つまり無税償却を認めないのだが、バブルの後始末のため、破綻していなくても無税償却を認める例外措置をとった。それは「銀行に対する補助金とみなすことができる」。それらによる納税者の負担は約49兆円。「これだけの額を、銀行の放漫融資の尻拭いのために納税者が負担させられたのである。しかも、それは、きわめて分かりにくい形で生じている。だから、多くの人は、負担を課されたこと自体を認識していない」。

 「そして、得をした人がいる。銀行から融資を受けて返済しなかった企業だ。しかし、それが誰なのかは、分からない。これほど不合理なことがまかり通る国は、世界広しといえども、日本だけだろう」という。

 著者がこだわるのは、「われわれは、バブルの教訓を汲み取っておらず、日本の金融機関の基本的な体質は変わっていないからだ」。バブルはいずれ再発するが、このままだと、国民はまた負担を押し付けられるだろうという指摘に私は100%賛同する。

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「必要な道路」とは?

 道路特定財源のガソリン税に上乗せされていた暫定税率が期限切れとなった。それを機に、政府・与党は道路特定財源の一般財源化に取り組む姿勢をみせている。しかし、「一般財源化後も必要な道路はきちっと造らねばならない」(伊吹文明自由民主党幹事長)という条件が付いている。伊吹氏も「必ず要る」という意味で「必要な道路」と言っているようだ。

 しかし、「必要」だから必ず予算を付けなければならないとしたら、政府の歳出は際限なく膨れ上がるだろう。官僚社会では沢山の予算を獲得することが有能な証拠とされるので、屁理屈を付けてでも、官僚たちは予算要求をするからだ。国民のほうからも、国に対してあれをしてほしい、これをしてほしいという要求が際限なく出るから、それを背景に、官僚たちは歳出増を実現すべく知恵(悪知恵?)をしぼる。

 では、その予算(カネ)は誰が出すのか。どこからひねり出すのか。「そんなことは考えなくてもいい、歳出すると決めれば、カネはあとからついてくる」というのでは、いずれ国家財政は破綻する。すでに、そうしたツケが積もり積もって、およそ800兆円もの借金になっているのである。借金返済を含めて歳出予算全体を税収の範囲にとどめること。それを国家予算編成の出発点にするよう政府・与党にも、国民にも求めたい。「良薬は口に苦し」――歳出を増やすには、それに見合った増税を行うこと、この基本を忘れないでほしい。

 ところで、道路特定財源を一般財源化することに国民の支持が多いのは、①全国の道路整備がかなり進んだ、②にもかかわらず、特定財源を維持し、それ使い切るため、必要性の薄い道路まで造ったり、税収を道路以外に流用しているのはおかしい、③国全体としては、少子高齢化などを背景とする社会保障政策の整備などが喫緊の課題となっている、④世界でも突出した財政危機にあり、特別会計の放漫財政を容認すべきではない、といった理由からだと思う。

 そうした国民、納税者の意向を念頭に、一般財源化および適切な使途決定をするのが政治家の役目である。好意的に見れば、福田首相は、限られた税収の中で、最適な解を出そうという方向に転換し始めたようだし、それを支持する自民党議員が少なからずいる。だが、まだ道路族の強い自民党が党の方針として道路建設に執着すればするほど、国民の利益に反する。ここはどっちになるか、政界再編にもつながる大きな注目点ではないか。

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2008年4月 8日 (火)

OECDから見た日本経済の問題点

 4月7日、OECDが2008年版の対日経済審査報告書を発表した。アンヘル・グリア事務総長は「日本が改善をしなければ、日本経済は世界でのランクがどんどん下がる。困窮を招く。この報告書で、我々は、世界ではこうやっていると言うだけ。それが最良の慣行ですよと」と語った。

 日本経済がとるべき施策として指摘されていることは4つ。①デフレの完全な終息、②財政健全化の進展、③包括的な税制改革の実施、④サービス部門の生産性向上、である。

 財政改革については、公的債務残高が増加し続けており、「長期金利が上昇した場合の日本経済の脆弱性が強まっているため、財政再建の推進は緊急の課題」と指摘。「政府支出のさらなる削減を優先的に行うべきである」という。社会保障費の抑制は不可欠とし、そのために、年金受給資格年齢の引き上げ、年金資産の運用利回り向上や、医療の質向上と効率性引き上げのために民間部門の関与の度合いを高めることが重要だという。

 基礎的財政収支を黒字にするにはGDP比6%に相当する歳入増が必要であり、政府債務比率を引き下げるにはそれ以上の歳入の増加が求められる。それには包括的な税制改革を実施すべきだとする。

 日本の法人税率は世界で最も高い。しかし、法人税を納付している企業は3分の1にすぎない。租税特別措置が多いなどのせいである。個人所得税も給与所得控除が大きいなどのせいで、課税最低限が高すぎる。したがって、課税ベースを拡大すべきだという。そして増税が経済成長に及ぼす悪影響を最低限に抑えるため、間接税である消費税をOECD諸国中、最も低い5%からもっと高くすべきだと勧めている。一方で、現在40%の法人税率をOECD平均の29%近い水準まで下げれば、経済成長を後押しするという。

 長期的経済成長にとって重要な労働生産性の改善についても詳しく述べている。ひどく劣っているサービス部門の生産性を引き上げるには、規制改革、競争政策、門戸開放によって競争を促進するよう求めている。とともに、非正規労働者の増大で二極化している労働市場を改善すべきだと述べている。

 報告書の内容は、日本政府がやろうとしてきた路線におおむね沿った内容である。外野席から日本政府をサポートしているような気がしないでもない。もっとも、事務総長は「日本政府から要請されたということでは全然ない。私どもが最良と思ったことを書いた。事務局の草案を委員会で30の加盟国と議論して決めている」と述べている。

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2008年4月 3日 (木)

額賀財務相の発言はおかしい

 4月1日に財務省で行われた額賀財務大臣の記者会見録を読んだ。会見録の公開(4月2日)にあたって、これはエイプリル・フールだったから真に受けては困るという注書きが付いているのかなと思ったが無かった。本当に、こんなことを言っているのなら、頭がおかしいのではないかとすら思う。

 会見において、記者はガソリン税などの暫定税率が期限切れになった件で、「(福田総理大臣や額賀財務大臣が)今の状態では歳入に穴が開いてしまって、将来世代に負担をツケ回すことにもなりかねないということを訴えている」のに、国民にあまり理解されていないようにみえるがどうかと、大臣の所見をたずねている。

 これに対し、額賀大臣は暫定税率維持など政府の改正法案の提出理由について、「一つに、必要な道路を整備していくことが地域の活性化や将来の日本国土全体のバランスのとれた発展基盤を作っていくことになる」、もう一つは、欧米諸国では環境問題に対処するためガソリン税を上げていく手法を採るという共通の認識があり、日本も同じ意識を持つことが大事である、と答えている。そして、「我々の時代のツケ、借金は我々の時代に解消していくこと」が将来世代のために必要だと述べている。

 しかし、この大臣の認識はおかしい。暫定税率の延長、つまり歳入が決まってもいないのに、予め勝手に決まったことにして組んだ歳出予算を無理矢理、実施しようとすれば、穴があくのは当たり前である。

 田中角栄さん(といっても、いまの若い人たちは知らないだろう)がつくった道路特定財源―道路特別会計や、暫定税率はとっくに役目を終えている。社会保障制度の整備や財政健全化などが重要な課題となっている今日、道路優先の歳出構造は改める必要があるのは言うまでもない。いまだに土建国家の発想を持っているとはあきれる。

 西欧では環境対策としてガソリンなどに相当な税をかけているが、税収を道路整備のための財源に特定しているような国はない。環境対策だけに充てるというような目的税でもない。一般財源にするか、社会保障関係の費用に充てている。日本では、道路をつくることが先にあって、そのために、特定財源としてガソリン税などをかけるという発想である。だが、西欧ではガソリンなどの消費を抑制するために税金をかけることが先で、税収を何に使うかは後の話である。順序が逆である。

 今回、ガソリン税などの暫定税率がなくなり、ガソリンなどの消費を抑制するというのとは逆になった。その点は、道路特定財源を一般財源化するという改革のパッケージの中で、ガソリン税などの関係諸税を基本的には環境税に改めればいい。無論、これは消費抑制による温室効果ガス排出抑制のためであって、税収は当然、一般財源にすべきである。

 そうなれば、大臣が言う「我々の時代のツケ、借金」を減らすことにも充てることが可能になる。道路だけに税収を振り向けるこれまでの道路特別財源をさらに継続したら、それこそ、道路あって国民生活なし、のようなとんでもない国になってしまう。もっと緊急性、重要性の高い歳出をまかなうために国債を増発することになり、もっと財政悪化が進む。

 福田総理が一般財源化などを言い出しているのに、まだ額賀大臣が時代感覚を欠いた発言をしているとはあきれはてる。まして財務大臣なのに。 

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2008年3月26日 (水)

100年後の財政破綻確率は62%とか

 日本政府の財政健全化努力は足りない。日本経済新聞の3月26日付け「経済教室」は、財政維持可能性を試算した櫻川昌哉慶応大学教授らの研究結果を載せている。

 それによると、07年1月に政府が発表した見通しのうち、望ましい成長・歳出削減ケースをもとに試算すると、平均経済成長率が11年度の目標である2.5%を100年間保てば、財政は維持可能であるという。しかし、不況が続いて、2.5%を下回り、「公的債務残高が増えて財政が破綻する可能性(確率)は、我々の試算では44%ある」としている。

 今年1月発表の見通しをもとに試算すると、公的債務残高は現状の1.12倍に増え、「62%の確率で財政は破綻する」という。それでも、これらの試算は経済見通しのシナリオの中で最も楽観的なケースを前提にしたものである。

 この試算結果をどう受け止めるべきか。日本経済が100年までの間にどうなるかは全く予測がつかない。その意味では、もっと近い将来を対象に、破綻リスクを試算して、その結果を公表してもらうと、国民は実感をもって受け止めるのではないかと思う。

 この記事では、国債利回りが低位安定していることについて、「市場は財政危機を楽観的に見てきた、(中略)債券相場はバブルということになる」、「日銀は買いオペを通じ、大量発行による値崩れを防ぐ「大口の買い手」として行動してきた側面が強い」、「いざとなったら、日銀が引き受けるので国債は安全だという認識を投資家は明らかに共有している」などと指摘している。

 「財政再建努力を怠ると、何かのきっかけで海外のファンドが売りを仕掛けてくるかもしれない」、「日銀は国債買いオペで支えるだろうが、機動的に対応できるか疑問」とも書いている。

 いまの政府・与党はこうした危機感を持っているとは思えない。持っているのは、ごく一部の政治家、一部の官庁だけである。

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2008年3月23日 (日)

石弘光前政府税調会長の本から

 日本は中福祉低負担などといわれる。社会保障などに対する国民の要求は「もっと、もっと」だが、税や社会保険料の負担増は国民の抵抗が強くなかなか進まない。そのギャップが国債発行残高の拡大など国の借金増につながっている大きな理由だとみられている。

 前政府税制調査会会長だった石弘光放送大学長が1月に出版した『税制改革の渦中にあって』を読んだ。同氏は「むすびに代えて」で、同書で最も強調したかったことを3点挙げている。

 「第一に、税制は社会的インフラだという事実である」。税制における公平・中立・簡素の原則が重要だという。特定の政策目標で優遇税制を実施するのは既得権益化をもたらし、税制への国民の信頼を失うと指摘する。読者は道路特定財源を思い浮かべよう。

 「第二は、減税・低税負担方式からの訣別である」。「戦後一貫して、税制改革は増税が企てられても必ず減税とセットになり、ネット減税かあるいは悪くても税収中立の枠で進められてきた」と指摘して、本格的な財政再建にはネット増税の税制改革を「試みるしかない」という。

 「第三に強調したいことは、これから国民皆で「広く」、「公平に」税負担をすべきだという点である」。もうけている企業や高所得層への増税や行政のムダな歳出のカットだけでは財政再建は不可能であることを本文で説明している。

 少子高齢化社会に不可欠な費用の負担は「国民皆でつまりオールジャパンで支えるべきである。とするとすべての国民に「広く」、「公平に」負担してもらう消費税に、今後の税制改革はより多く依存するのが当然の帰結と言えよう」。政治公約には増税反対など「とかく安易な国民に迎合する甘口のメニューが登場する」が、「国民は目前の甘い選択肢に惑わされずに、将来真に必要なものを見抜く眼力が求められる」。そう述べる石氏は「子供の頃からしっかりした租税教育を受ける必要がある」という文で締めくくる。

 本書で「第3章 国民の理解とマスコミ報道――どう改善しうるか――」でマスコミのあり方を問題にしているのは、広く、公平に税負担する税制改革を実現するには、「マスコミが事柄の本質を客観的に正確に報道してくれること」がきわめて大事だと著者が考えているからだろう。

 政府税調の発表文書が意図に反して報道された苦い経験から、著者は「報道の責任とは何か」と言って、「客観的に内容を紹介し、必要ならば解説で批判をすればよい」、そして「目先の現象のみではなく、もっと中長期的な視点から、日本のあるべき姿に関し建設的な国民的議論を深めるような報道が不可欠」と書いている。メディアの報道姿勢で正すべき点の1つである。

 財政再建の目標について、石氏は「公債残高の対GDP比率を2010年代後半から年2%引き下げることを目標にすべきである。具体的には、基礎的収支で年約10兆円の黒字が必要となろう」と記している。「プライマリーバランスは財政再建として、余りに甘すぎる目標といえる」という。

 政府税調会長の立場を離れたので、同氏は自らの意見をはっきりと述べている。ほかにも参考になる内容が多々ある。

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2008年3月11日 (火)

津島自民党税調会長が“思考停止”を批判

 3月10日、日本記者クラブに招かれた津島雄二自民党税調会長の講演は、1929年恐慌の教訓を引用して、現在の国会やメディアの議論に対して抱く危機感を強調した。

 津島氏の話を要約すると、1928年、大統領選に勝った直後のフーバーは「政府は無駄と腐敗を増やすような仕事をする」として民間活力第一主義を言明した。しかし、1933年3月、全米の銀行が取り引き停止した翌日に大統領に就任したルーズベルトは、市場のrulerたちが無能だったから、国民に不安が広がった、とし、「この国はいま行動を求めている。まず人々に仕事を与えねばならない」と演説した。この2つの考え方にはそれぞれの理由、合理性があるが、その一方の考え方だけで、いまの日本経済を運営していけるなんてことはありえないと指摘する。

 そして、氏は「国会やメディアの議論を見ていると、ムダがキーワードになっている。まれなケースを示して、まずムダを排してから財政の議論をしようという。そこで思考停止している。それに、まず市場が大事だという。しかし、市場に任せておくとうまくいくというのとは逆の現象が起きている。ある種の公的な関与が必要だ。これが歴史の教訓である」という趣旨のことを述べた。

 「いまの政治状況では、政府は何もできないから、高齢者は不安だ。しかし、我々、政治家はその不安を除かねばならない。いまこそ、税財政の機能を取り戻すことが必要である。2011年にプライマリー・バランスを達成するということだけではこの国は回復できない」とし、社会保障の持続性保障や地域格差の是正などのために歳入改革は避けて通れないと語った。

 確かに、津島氏にも一理ある。いまの国会やメディアをみていると、国民にとってもっともっと本質的な、大事な問題を忘れているように思えるからだ。とはいえ、自民党があまりにも長く政権与党の座にいたために問題が次々に噴出しているという反省が津島氏には欠けているように思えるが‥‥。

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2008年3月 7日 (金)

データが示す地方自治体の財政状況

 総務省が平成20年版「地方財政の状況」、いわゆる地方財政白書を3月4日に発表した。06年度(平成18年度)の全地方自治体の決算を集計したものだが、同省が発表した概要版の主見出しは「厳しい財政状況の中、大幅な歳出削減(7年連続の減少)」である。

 社会保障関係の歳出が増えているのに、職員給1.9%減、投資的経費6.5%減などの「大幅な削減」努力で、普通会計の歳出総額が89兆2106億円と前年度を1.6%下回った。一方、歳入総額は91兆5283億円で1.5%減だった。地方税、地方譲与税などが大きく伸び、結果として、地方交付税、国庫支出金などがかなり減った。税収に地方交付税などを加えた一般財源が歳入総額に占める割合は景気の回復で62.3%となり、前年度より3.0ポイント上昇した。税収増のおかげで、地方債発行による歳入(9兆6223億円)は、歳入総額の10.5%となり、前年度比0.7ポイント下がった。

 普通会計が負担すべき借入金残高(年度末、推計)は、200兆1561億円で、前年度に比べ1兆2606億円減った。内訳は、地方債残高139兆0593億円、交付税特別会計借入金残高(地方負担分)33兆6173億円、企業債現在高(普通会計負担分)27兆4795億円である。

 歳出総額は過去10年、徐々に減ってきた。それだけに都道府県、市町村とも歳出のカットに苦労してきたわけだが、一番減ったのは性質別構成比でみると普通建設事業費である。1996年度に30.2%を占めていたのが02年度には22.0%に、そして06年度は16.0%である。そのかわり、ほかの経費の構成比は増加か横ばいである。人件費も構成比は02年度27.8%から06年度28.2%へと微増だ。財政危機にもかかわらず、地方自治体の歳出カットの取り組みは不十分だ。放漫財政のツケを残した公務員にはそれなりに責任をとってもらいたいのに、自治体は公務員の退職金カットもしたがらない。

 地方自立政策研究所(穂坂邦夫理事長)が昨年11月末に発表した試算によれば、地方自治体の行政経費のうち、節減可能な額は14兆0953億円にのぼるという(昨年12月18日のブログ「地方自立政策研の検証結果」参照)。自治体がろくに努力してもいないのに、総務省が冒頭の見出しのように「大幅な歳出削減」なんて甘っちょろい評価をしているようでは困る。

 ところで、7日付け日本経済新聞朝刊に住民1人当たりの一般財源の47都道府県、782市データ(06年度決算)が一部紹介されている。それによると、都道府県では少ない順に、神奈川県が16.4万円で47位、埼玉県が17.2万円で46位、千葉県が17.4万円で45位。多い順だと、1位が東京都の47.4万円、2位島根県の44.2万円(1人当たり税収9.3万円)、3位鳥取県の41.5万円(同9.4万円)である。地方の県は1人当たり税収は少ないけれど、交付税を手厚く配分されるので、都市部よりもはるかに1人当たり一般財源が多いのである。

 同様な傾向が782市についてもみられる。1人当たり一般財源が多いのは、1位夕張で136.9万円(1人当たり税収は7.4万円)、2位歌志内で72.4万円(同5.0万円)、3位三笠63.4万円(同8.7万円)で、地方の小都市が上位にある。下位は大都市周辺の人口密度の高いベッドタウンが多いという。

 住民が分散して住むため、地方は行政コストがかかるというが、国が地方を過度に保護してきた実態がデータに示されている。そうした甘えが地方の自治体行政を肥大させてきたし、地方の県や市町村のほとんどはまだその甘えから脱していない。「格差」論は彼らにとって都合のいい言い訳になっている面があることは否定できない。甘やかしてきた総務省(旧自治省)はグルである。

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2008年2月29日 (金)

埋蔵金論議もいいけど、フローの財政改革が必要

 自民党の財政改革研究会(与謝野馨会長)が2月27日に「霞が関の埋蔵金」に関する報告を発表した。特別会計や独立行政法人などの積立金、剰余金などは将来の給付に備えて積み立てたり、経済変動に備えて積み立てているもので、これまでも必要以上に増えた場合には一般会計に繰り入れたり、国債の償還に充てたりしているという。これらは一過性の財源で、毎年の安定財源として期待できるものではないとのことだ。

 特別会計などが過剰に余裕資金を抱え込んでいるのは、無駄づかいを誘発しかねないから、財政効率の観点上、好ましくない。中川秀直自民党元幹事長が4、50兆円と言っていた「埋蔵金」が事実なら、それを財政事情の厳しい国の一般会計予算に取り込むというのも意味のないことではない。とはいえ、バランスシートの資産と負債の勘定に両建てになっているものだから、目の色変えて議論する問題ではないとも言える。

 そんなことよりも大事なのはフローの改革である。つまり、歳出・支出の中身の徹底した見直し、削減が求められる。一般会計、特別会計、それにつながる独立行政法人、特殊法人などに関して、歳出・支出をゼロ・ベースから洗い直すことがとても大事だ。従来、予算が付いていたから、来年度も付くものだという思い込みを排し、歳出・支出の優先度をつけて限られた予算を配分するという当たり前のことをやってもらいたい。

 税金と借金を基本とする歳入・収入については、財政赤字の累積を考えると、増税をという意見もあるが、まずは歳出・支出総額をいかに削るかが先である。増税はその成果が出てからのことだ。

 最近、2011年度にプライマリー・バランス(PB)を実現することは難しいという声が聞かれる。それと裏腹の関係で、08年度補正予算で農業関係などのばらまき予算が復活したり、社会保障予算の増加抑制を撤廃すべきだという意見が出てきている。道路特定財源の10年延長とそれによる道路建設の推進も、同じ流れにある。これらフローの歳出・支出放漫を抑制するための改革が「埋蔵金」なんかよりはるかに重要な課題である。

 国も地方自治体もだが、歳出で大きいのは役人、職員の人件費である。彼らは給与をもらっているのだから、まず自分の頭や身体を仕事にフルに使ってほしい。ともすれば、彼らはほかに予算をもらわないと、仕事をしないきらいがあるが、それは誤った先入観によるものである。 

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2008年2月26日 (火)

増え続ける国の借金と道路特定財源とは関係ないのか

 国の借金である国債・借入金・政府短期証券の合計が昨年12月末で838兆50億円になったという。それとは別に、政府保証債務残高が47兆9214億円ある。厳密に言えば、国が保有する資産を差し引いて考えないと財政悪化の実態はわからないし、特別会計などの抱える資産・債務なども合わせて考えなければ国の本当の財政状態はつかめない。

 それはそれとして、国の借金が景気の良し悪しに関わらず増え続けているのは異常事態である。危機のアラームが何年も前から鳴っていて、財政破綻に一歩一歩近づいている。自民党の一部には財政再建のために消費税引き上げに正面きって取り組もうという動きもあるが、大半は無関心と見受けられる。

 そして、彼らに共通する欠陥は、一般会計も特別会計も同じ国の財政であることを理解していない点だ。一般会計で借金が増え、危機的な財政状況であるのに、道路特別会計で入ってくる税金を一般会計に回そうとはしないで、あくまで道路建設に使うと頑張っているのである。国土交通省の道路屋さんは道路をつくることしか頭にない。それに、天下りを保障する仕組みを維持するのに懸命だ。だからといって、国の将来を左右する政治家が道路屋官僚の掌で踊っている姿は醜い。それにしても、冬柴国土交通省大臣はひどすぎる。公明党がそんな政党だったとは驚きだ。

 全国知事会などが暫定税率の廃止などに反対している。道路好きの首長もいるが、各自治体とも年度予算案を昨年末までに組んでしまっているので、暫定税率を廃止されると歳入が減って歳入欠陥が生じるからである。民主党がいまだに説得力のある代案を提示していないこともあって、各首長は政府・与党案を支持している。

 したがって、民主党が取るべき道は、暫定税率を1年間だけ延長することである。それで自治体を安心させ、これから1年間かけて道路特別会計・道路特定財源の仕組みを抜本的に見直したらいい。首長の多くは一般財源化し、自治体が自由に使える財源が増えることには賛成だし、それでこそ真の地方自治に近づくからだ。

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2008年2月 9日 (土)

税金のむだづかいはやめてくれ

 道路整備特別会計―道路特定財源を従来の仕組みのままさらに10年延長しようとする政府・与党と民主党など野党との国会論戦は、福田首相らが問題点の指摘をまともに受け止めようとしないので、全然盛り上がらない。

 国土交通省は道路特定財源を使って職員の宿舎を建設してきたことを指摘されて、7日、07年度予算で建設する2ヵ所の建設を凍結すると発表した。社会保険庁が年金積立金を年金以外の支出に流用していたのと同じで、これらの官庁の職員は、道路財源だろうと、年金だろうと、本来の目的に限定して使うという節度がなくて、自分たちが好きに使える財源だと思っているようだ。

 宮崎県の東国原英夫知事が政府・与党案を全面的に支持して街頭演説までしているのには驚いた。つい最近、「せんたく」の発起人になり、地方主権を推進する政治改革の新しい旗手になるのかなと思わせたのに、現在の時点で広い視野から道路特会―道路特定財源の意味を問い直すという重要な問題意識が欠けている人物だったとは。

 北海道滝川市の住民で、生活保護を受けている夫婦が介護タクシーを利用して札幌市の病院に往復通院したように装い、1年間にわたり、計2億円余を市からだましとっていたとして9日逮捕されたという。80kmも毎日往復できるのは相当に健康でなければ無理だ。1ヵ月に31日とか30日、通院したことになっているが、土、日も診察するなんてまずありえない。誰が考えてもそうしたおかしなことが多いのに、市は請求されたカネを払い続けていた。

 男が元暴力団員だから、市の職員は黙認していたのだろう。かつて瀬戸内海の豊島に産業廃棄物を大量に捨てるのを、香川県の職員が違法行為と知っていながら黙認していたのを思い出した。豊島のケースでは、県職員は暴力で脅されていた。そのしりぬぐいに何百億円もの税金や企業の寄付金が使われている。

 滝川市は人口4万5千人弱で、06年度の決算をみると、一般会計の歳出総額は207億円。民生費が36億円余。介護保険の支出は38億円である。だましとられた2億円がいかに大きな金額であるかがわかる。地方交付税だけでも67億円ももらっているのだから、市長以下、役職員に対し、税金をむだづかいしないよう、もっとまじめに行政に取り組んでくれよと言いたい。都会に住む納税者としては腹立たしい限りだ。 

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2008年2月 6日 (水)

金利変動による国債費の増え方

 金利が上がったら、国の財政の国債費はいくら増えるか。そんな試算を財務省が5日の財政制度等審議会財政制度分科会の合同部会で示した。1月にまとめた「日本経済の進路と戦略」をもとに、2008年度予算(案)の制度・施策が2011年度までの歳出・歳入に与える影響を試算した中に含まれている。

 名目経済成長率が1%台後半あるいはそれ以下だと前提して歳出と税収等を計算した[試算2]は国債金利を2%と仮定している。だが、もし国債金利が1%ポイント上がって3%だと2011年度の国債費は3.8兆円増えて27.1兆円になるという。2%ポイント上がって4%であると7.8兆円増えて31.1兆円になるし、3%ポイント上がって5%であるとすると、何と11.9兆円(消費税にして4~5%引き上げに相当する)も上乗せになり、35.2兆円となるとのこと。

 [試算2]の2011年度歳出は93.0兆円で、うち一般歳出が52.7兆円、ほかに国債費23.3兆円、地方交付税等16.9兆円である。それらと、上記の金利増による国債費の数値を比べてみれば、巨額の国債を抱える日本財政のひずみがいかに大きいか、がわかるだろう。金利が上がり始めたら、財政危機が表面化するのは必至だ。

 [試算2]の平均の名目経済成長率1.7%よりも高い成長率の場合、税収はいくら増えるかという試算もある。2011年度でみて、1%ポイント上乗せ、つまり2.7%成長だと税収は1.9兆円増の58.7兆円になる、2%ポイント上乗せだと3.8兆円増になり、3%ポイント上乗せだと5.7兆円増になる。名目経済成長率が上がることによる税収増加はそれほどでもないのである。

 サブプライムローン問題で尻に火がついた米国は、財政の大赤字もやむなしと財政出動に踏み切った。金融も大幅な金利引き下げ、金融緩和を実施した。したがって、日本でも超低金利の是正は目先なくなった。財政の国債費負担の点では、超低金利の継続は歓迎ということになろうが、政府も与党も、財政規律が締まらず、いまだに国債残高が膨らみ続ける現実を直視する必要がある。

 道路整備特別会計―道路特定財源なんてものが存続していること自体が狂気のさたなのである。

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2008年1月30日 (水)

本質はそっちのけの与野党対立

 「つなぎ法案」をめぐる与野党対立は、1月30日、衆参両院議長のあっせんで一旦、冷静さを取り戻した。しかし、問題の本質に迫り、国民に納得されるような結論をめざしてほしいものだ。 

 与党は暫定税率をさらに10年間延ばして道路特別会計―道路特定財源の仕組みを維持しようとしている。これに対し、民主党はガソリンにかかる暫定税率をやめさせて値下げを実現しようとする方針をとり、真っ向から対決する形となった。しかし、どっちもおかしい。

 本質的な問題は、税収を特定目的にだけ充てるという特別会計を廃止して一般会計に統合すること、そして、歳出全体の中で社会保障その他の必要度に応じて支出内容を決めるようにすることである。これに反して、道路特別会計―道路特定財源の仕組みは税収をほぼすべて道路建設に優先的に振り向けるというものだから、そのまま存続してはならない。与党の法案はこの仕組みをさらに10年続けようとしているのだから賛成できない。

 いまの仕組みだと、すべて廃止するとした場合、道路建設のための特定財源である揮発油税などの税もやめなければならないことになる。しかし、財政危機のもとにある日本で、税収が大幅に減るのは問題がある。それに地球温暖化対策上、エネルギーへの課税を上げることはあっても下げるという政策選択はありえない。したがって、環境税などの名目で課税を続けるのが望ましい。民主党のガソリン引き下げという政策はおおかたの理解を得られない。

 税収はできるだけ急速に増大する社会保障関連などの支出に充てるのがいい。社会保障は具体的には身近な自治体が担うのだから、税収を地方自治体が自由に使える財源に振り向けるべきである。道路にしか使えないのと、自由に使えるのとでは、後者がいいに決まっている。そして、地方自治体は行政需要に応じて使える財源が増えることで真の地域自治に近づくことができる。

 たまたま30日に話を聞いたモルガン・スタンレー・日本証券のロバート・アラン・フェルドマン経済研究主席は「(揮発油などへの)課税は残すべきだが、(道路建設に充てるという)特定財源は毒だ。国を悪くするからやめるべきだ。民主党は福祉に充てる(特定財源)というが、これも毒だ。特定財源は腐敗(のもと)。それをメディアが言わないのはおかしい」と言っていた。正論である。

 現実には、道路特別会計―道路特定財源を擁護したり、地方分権に逆行する動きが目に付く。全国知事会などは、道路建設はまだまだ必要だと言っている(地元の圧力で言わされている面もあるようだ)。そして、つなぎ法案を支持した。また、地方の味方のふりをする総務省は、自治体が減収補填債を発行しやすくなる法改正を進めている。税収が予算で見積もった額を大きく下回ったら、穴埋めのために補填債を発行していいことにする。地方に財政自立を求めるのではなく、甘やかし、その結果、自治体が困ったときは国が面倒みますよという総務省の自治体支配術だ。

 これではフェルドマン氏に「米欧の投資家からみて、日本は存在しない、つまり不在。文化財です」と言われても反論しにくい。 

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2008年1月27日 (日)

国民所得が11年前の水準に回復へ

 最近、財務省が国民負担率(対国民所得比)の推移データを発表した。1970年度から2008年度までの毎年度の数値を眺めていると、日本経済の変化が読み取れる。

 国民負担率(租税負担率と社会保障負担率の合計)は2007年度実績見込みで40.0%と初めて40%台に乗る。08年度は40.1%の見通しだ。1970年度は24.3%だった。30%台に乗ったのが1979年、35%を超えたのが1986年。以後20年余、30%台後半で上がったり下がったりし、2004年度以降はゆっくりとだが上がり続けている。

 内訳を見ると、租税負担率は07、08年度とも25.1%と十数年ぶりの高さだが、バブル景気だった1991年までの数年間よりは低い。他方、保険料負担を示す社会保障負担率は07、08年度とも15.0%と過去最高だが、こちらは1970年度の5.4%からあと一貫して上昇してきた。途中、1982年度に10%台に乗った。

 実際には、負担を将来世代にツケ回しする財政赤字がある。その年度のツケ回し額、つまり財政赤字を国民所得で割った比率は、第一次石油ショック後の5年間、8%台だったし、バブル後遺症の1998、1999年度や2002、2003年度には2ケタだった。

 財政赤字を加えた潜在的国民負担率では、07年度、08年度とも43.5%。過去のピークである1999年度の48.9%から見れば、改善してきているが、その間にも累積債務が積み上がっていることを見落とすわけにはいかない。

 ところで、国民所得自体は、07年度377.3兆円、08年度384.4兆円となっている。02年度355.8兆円を底に景気回復してきたことがわかる。しかし、08年度見通しが達成されれば、1997年度の382.0兆円をようやく追い越し、過去最高となる。バブルの最後の1991年度が371.1兆円だから、十数年かけて、やっと元の水準を少し上回るところに到達するということだ。富の配分に血眼になるのもいいが、富を増やすことのほうが日本経済の主要な課題だといわれる理由がよくわかる。

 ちなみに、2005年の主要国の国民負担率は米34.5%(潜在的負担率39.6%)、ドイツ51.7%(同56.0%)、スウェーデン70.7%(同70.7%)だそうだ。スウェーデンは租税負担率が51.5%と重い。ドイツは社会保障負担率が23.7%と大きい。時に、マクロ的な視点で日本経済を見るのは大事ではないか。

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2008年1月20日 (日)

祝詞化?する「日本経済の進路と戦略」

 1人当たりのGDP(ドル表示)で、1993年にOECD諸国中第2位(世界では第2位)だった日本は2006年に第18位(世界では第20位)に下がった。このデータを見て驚くのは、絶対額が3万5008ドルから3万4252ドルに下がっているのは日本だけだということだ。

 1993年に日本より1割ほど多かった世界第1位のルクセンブルグは2006年に8万9840ドルと日本の2.5倍余にまで成長した。製造業のウエートが大きいドイツは伸びが低いが、それでも、この間に4割強増え、3万5368ドルと日本を抜いた。1993年に2万5374ドルで第6位だった米国は、2006年に4万3801ドルとなり第7位だった。

 ドル換算でだが、日本経済は13年間にひとり縮んだ。それが異常なことは世界経済の中で見れば一目瞭然である。これでは、最近の株式市場の大幅下落が外国人投資家に見放されたせいだとする説を否定しがたい。

 1月17日の経済財政諮問会議で決まり、18日の閣議で承認された「日本経済の進路と戦略ーー開かれた国、全員参加の成長、環境との共生ーー」は、こうした日本経済の低迷から抜け出すための成長力強化を打ち出すとともに、地方の自立・再生や歳出・歳入一体改革、社会保障制度の改革などの政策課題を取り上げている。

 しかし、政策課題を書き連ねてはいるものの、それらを何が何でも実現するぞ、という気迫が感じられない。それどころか、祝詞を読んでいるような気持ちにさえなってくる。連立政権が実際にやっていることと、ここに書いてあることとが遊離しているからだ。

 「財政については、将来に負担を先送りしない構造を実現していかなければならない。また、それに向けた取組を着実に進めていくとともに、長期的な財政健全化の道筋を明確にしていくことで、将来の負担増に対する国民の不安感を取り除くことも重要である。それは、グローバルな金融市場で全世界がつながっている今日において、海外からの信頼を確保することにもつながる。」

 おっしゃる通りである。また、「2011年度(平成23年度)には、国・地方の基礎的財政収支の黒字化を確実に達成する。」とも言う。だが、そのための具体策には触れていない。一方で、内閣府が参考試算として提示した経済見通しによれば、楽観的なケースでも、2011年度の基礎的収支は7千億円程度の赤字、対GDP比0.1%の赤字になる。これでは、上記の引用文にある「長期的な財政健全化の道筋を明確にしていくこと」にはなっていないし、いたずらに国民を不安に陥れるだけではなかろうか。

 いまの日本はどっちを向いても不安、不満があふれている。しかし、それは冒頭の1人当たりGDPの数字が示すように、配分すべき果実が減っているのに、皆が高成長時代の意識のまま、利益をもっとよこせと主張しているからだ。負担そっちのけで。

 医療問題1つとっても、日本医師会はじめ関係諸団体は医療費の引き上げを求める一方で、患者の医療費負担増には反対している。しかし、そこには、誰がどういう形でその費用増を負担するのかが欠けている。彼らは日本全体としての整合的な処方箋を書くのではなく、自分たちの利益を主張しているだけである。

 この「日本経済の進路と戦略」は、日本が直面しているそうしたさまざまな問題に対して整合的で、かつ明確な指針を示していない。小泉内閣の竹中経済財政担当大臣が作成していたときと比べ、心に訴えてくるものが乏しいように思う。

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2008年1月11日 (金)

地方自治体の歳出削減は甘い、総務省も甘い

 前岩手県知事で、いま総務大臣の増田寛也氏が11日、日本記者クラブでの会見で、地方自治体の歳出削減が甘いこと、そして、総務省のほうにも、地方自治体の努力不足にもかかわらず地方交付税交付金の増額などで面倒を見る甘さがあることを認めた。

 増田総務相は地方自治体の歳出削減、人員削減が甘いことに関連して、「職員の賃金が高すぎる自治体は引き下げるべきだし、その実態を公開すべきだ。そして、住民の批判を受けるようにすべきだ」と述べた。「自治体は歳出カットというと、まず学校の図書費を削る。文句を言われないところからカットを始め、最後に職員の賃金をカットする」と批判し、そうした自治体のやりかたをチェックすべき立場にある議会がその役目を果たしていないことを指摘した。

 現実には、地方議会のほとんどは県や市町村の行政をチェックするどころか、議会での質問まで役人につくってもらっているようなていたらくで、とても行政をチェックする能力はない。それを念頭に置いてか、同総務相は「議会の活動を監視するNPOが主として都市部にできてきた。こうしたNPOが増えてくるといい」とNPOの活躍に期待する考えを表明した。

 同総務相は、総務省が自治体を甘えさせるべきではないとの認識を示したが、それ以上の言及はなかった。言いたくなかったのか、あるいは単に時間切れだったのか。

 会見で、同総務相は地方自治体および総務省に甘えの構造を認めた。しかし、それに加えて、地域住民の中央依存という半ば構造化した甘えもあることを忘れてはなるまい。「財政再建を早くなしとげねば、早晩この国は行き詰まる」という問題意識を持つ同総務相に、ぜひともメスを入れてもらいたい。

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2007年12月28日 (金)

岐阜県の「ゼロ予算」に右ならえしてほしい

 「何かしようと思うと、すぐ予算要求をする。そうではなくて、職員がみずから汗をかけ。みずから汗をかいたり工夫をしたりして、職員が働くことによって、予算を使わないでもできる政策は幾らでもある。そういうものを一生懸命考えようじゃないか」。古田肇岐阜県知事が県庁職員にそう語っている(言論NPOのホームページ。「知事の主張(2)」より)。

 梶原拓前知事の時代の1995年に、岐阜県は情報公開基本条例を定めたが、県庁ぐるみの裏金はずっと隠してきた。また、同知事時代にやたら投資し、借金を積み上げてきたため、財政は窮迫している。固定費増大で、自由に使える財源はわずかだ。そこで、後任の古田知事は職員の意識改革に努めるとともに、2010年度に借金残高をピークアウトする、すなわち、2011年度から減らす計画を打ち出している。その一環として、「ゼロ予算」を掲げ、励行しているというわけだ。

 そもそも岐阜県の予算の31%が人件費だという。これにはちょっとビックリするが、そうであれば、知事が職員に対して「最大限のリターンを出さなければならない」と要求するのは当然だろう。

 古田知事の話をもう少し引用すると、「政策というと、すぐお金とくるけれど、そうではなく、お金を使わない、しかも意味のある、例えばルールをつくる、規制緩和もする、やめるものはやめる、余計なことはしない、いろいろあるじゃないですか。あるいは見取り図をつくるとか、みずから体を使って汗をかくとか、あるでしょう。パンフレットをすぐ外注というのでなく、自分でつくればいい」。

 他の地方自治体も、そして国も、この古田知事の「ゼロ予算」に右ならえしてほしい。模倣しても、知的財産権の侵害にはあたらないのでは。

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2007年12月24日 (月)

予算政府案はいいことづくめなのか

 24日に08年度国家予算の政府案が決まった。「平成20年度予算のポイント」には、「基本方針2006」に定められた歳出改革を2年目においても確実に実施、と書いてある。また、新規国債発行額を4年連続で減額、とも書いている。そして「成長力強化、地域活性化、生活の安全・安心といった重要な政策課題にきめ細かく配慮し、予算配分を重点化」と記述してある。いいことづくめだ。それを言っちゃ、おしめえよ、と言いたくなる。

 事情を知らない国民が読んだら、真に受けてしまうだろう。07年度補正予算(案)とパッケージで、相当のバラマキをしていることや、サラリーマン層や大都市自治体などからカネをむしりとるあこぎなことをしているなどとは、おくびにも出さない。財政投融資特別会計の準備金を取り崩して国債の償還に充てることで国債発行残高が減るが、それは歳出削減などといったものではなく、単にカネを右の懐から左の懐に移すだけのことにすぎない。そういうトリックだらけの予算(案)である。官僚は頭がいいのかもしれないが、政治家に無理を言われた苦衷を少しも表面に出さず、平気で国民にうそをつく、悪知恵にたけた人種であるとは。

 政府・与党は2011年度に国と地方のプライマリーバランスを黒字に転換することを政策の柱に掲げてきた。それが内閣府の見通しでは、成長率の低下で達成できないという。税収が伸び悩むからだそうだ。そうした厳しい経済情勢にあるのに、財政健全化路線に逆行する予算(案)を組んで、しかも上記のようにいいことづくめみたいな話をするのは、よほど国民を阿呆と思っているのだろう。国民はなめられているのである。

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2007年12月22日 (土)

利払は1分あたり約1777万円

 財務省で08年度(平成20年度)国家予算財務省原案の公表資料をもらってきた。それらをパラパラめくっていたら、目につくデータがあった。「我が国の財政事情」という資料の中の「利払費及び利払費率の推移」である。一般会計の利払費は約9.3兆円だという。これを1日あたりにすると、約256億円になる。さらに1時間あたりでみると約11億円、1分あたりでは約1777万円である。ここまで来て、やっと私たちの生活感覚に近づいた金額となる。

 一般会計歳出に占める利払費の割合は11.2%。05年度の8.2%を底に年々上がっている。それでも、低金利のおかげでまだ低いほう。1986年度は19.1%だった。金利が上昇したら、歳入が増えない限り、財政は窮迫するだろう。

 「公債残高の累増」というところを見ると、1990年代前半から急激に増加している。08年度末の公債残高は約553兆円になる見込みだという。国民1人あたり約433万円(4人家族なら約1732万円)。勤労者世帯の平均年間可処分所得は約530万円だから、いかに巨額の公債を抱えていることか。

 だが、「国及び地方の長期債務残高」のページを見ると、約553兆円というのは普通国債の残高であり、ほかに(注)で、財政投融資特別会計国債残高が133兆円程度あると書いてある。

 国の長期債務残高は08年度末に612兆円程度、地方のそれは197兆円程度。国と地方の長期債務残高合計は重複分を除いて776兆円程度と過去最高に。地方自治体の財政状況は改善し、国は悪化するという構図である。 

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国民に展望を与えない08年度予算財務省案

 国の08年度予算の財務省原案や07年度補正予算などが提示された。新聞が詳しく報道しているように、参議院選挙で敗北した自民党があわてふためき、既得権益層にバラマキに走った姿が浮き彫りになっている。無理が通れば道理引っ込む予算だ。

 それでも、財政健全化の路線は変わらないという印象を国民に与えるために補正予算を利用するなど、目くらましが復活した。予算編成作業にあたる財務省の悪知恵と言えなくもないが、好意的に解釈すれば、変な予算を組むよう政治家に強要されたものの、財務省としては財政健全化の旗は降ろしたくないという意思の表れだろう。この国で、財政再建を言い続けている勢力は財務省しかいないのである(ただし、財務大臣は政治家だから、ポストを離れたら、どう言うかわからない)。

 谷垣禎一自民党政調会長はついこの間まで財務大臣として財政再建を重視する発言をしていた。それが、今度は地方を視察したりした結果とはいえ、バラマキを積極的に求める発言をしている。芝居の役者のように、役によって発言が百八十度異なるというのはいかがなものか。政治家はきちんとした信念がなければ、単なる政治屋である。まして派閥のボスともなれば、それなりの見識がなくては困る。

 自民党に族議員がはびこっていた時代は、それぞれの族議員が国全体のことなんか考えず、勝手な要求をしても、それに応じられる税収などカネがかなりあった。カネがなくなっても、国債を発行して、応じていた。それが限界に来たから、小泉内閣が族議員を抑え、財政改革に着手したのである。しかし、小泉内閣以降、景気がいいときも財政健全化は大して進まなかった。そして、今度の予算原案づくりでは族議員が勢いづき、歳出削減努力のタガが緩んだ。国債発行残高はまだまだ増えていく。憂うべき事態だ。

 国家予算というのは、時の政権がこういう社会を実現したい、と思って資金をどこにどれだけ配分するかというものである。政党が選挙公約(マニフェスト)を掲げ、政権を握ったら、国民との約束である公約を忠実に実現するのに、予算はきわめて重要だ。それなのに、与党は勝手に公約をご破算にしている。これでは、内閣の支持率が落ちて当然である。もっとも、民主党にしても、いまになって税制について党の政策をとりまとめているように、政権を担当したときに税財政などをどうするか、体系立って考えてきたわけではない。

 主に増税で財政再建をというのが財務省の本音だろう。それとは違って、歳出削減、行政改革、規制改革などと増税とを組み合わせて財政健全化を推進する政党が出現してほしい。 

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2007年12月18日 (火)

地方自立政策研の検証結果

 興味深いデータの発表を見落としていた。穂坂邦夫氏が率いるNPO法人 地方自立政策研究所が11月末に発表したところによると、地方自治体の行政経費のうち、節減可能な額を算定したら総額14兆953億円に達したという。「全自治体の行政経費総額97兆円の14%にあたる」(12月18日付け朝日新聞夕刊)そうだ。

 この算定は、自治体職員を中心とするボランティアで研究会を立ち上げ、県と市の全事務・事業と地方関係の国庫補助金を対象に経費節減が可能なものを積み上げたものだという。その結果、「過度な行政サービス廃止と民間開放で8兆7038億円」、「実施主体への事業移管(重複投資の排除)と地方に対する補助金の一括交付金化で5兆3915億円」だった。

 また、地方向け国庫支出金(総額18兆7295億円)のうち、廃止対象補助事業に対するものが7兆8261億円だった。

 試算は、スリムな行財政運営をしていて、情報開示が進んでいる県(埼玉県)と市(草加市)の各1つをモデルにして事務・事業などの分類基準を作成し、つぶさに検証していったもので、「政治性を排除した現場の実務者による検証結果」だとしている。

 14兆円については、個人的には、「その程度ではすまない。もっと節減できるのでは」という感想を抱く。また、地方自立政策研には、なぜムダな経費を自治体がなくそうとしないのか、という構造問題の分析をしてもらいたいと思う。

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