2016年12月11日 (日)

「エコプロ2016」を見て

 毎年、いまごろ東京ビッグサイトで「エコプロダクツ展」が開催される。ことしは「エコプロ~環境とエネルギーの未来像」と変化し、今月8日から10日まで行われた。

 最終日に見て回ったが、一部の大企業のブースを除いて、さほど混んではいなかった。クイズに回答して景品をもらうため、子供や大人が並んでいるブースを結構見かけたが、説明員が手持無沙汰というところも多かった。

 ざっと見て回った感想を記すと、①ナノセルロースのように、企業が特定の新分野に焦点を絞る展示が目に付く、②展示テーマに関する自社製品を総まくりに展示するやりかたはみられない、③展示の多くは、写真・映像と説明文から成る、④自動車は、各社とも一番力を入れている車種(未発売も含む)1台を展示するだけ、⑤以前に出展したビッグビジネスでも、今回、出展しないところがかなりある、⑥中小企業(団体を含む)および地方自治体の出展がさかんであるetc.――。日本の企業に革新的な製品および技術が乏しい、収益状況を踏まえ出展にあまり経費をかけたくない、などの事情を反映しているのだろうと推察する。

 ところで、日本生活協同組合連合会のある説明員は「ここ(エコプロ展)に来て、皆がこんなに環境対策に熱心だということを知りました」と語っていた。出展関係者がお互いに啓発し合うという意義に気付かされた。東京ビッグサイトの東1~6のホールを埋め尽くすだけの出展があるのは、上記の問題点があるにしても、本当にすごいとしか言いようがない。

 ことしは中国の紹興市が地元企業3社と共同で出展していた。説明員の話を聞くと、出展に意欲的だった。エコプロ展がアジアを代表する環境・エネルギーの総合展示会に飛躍する第一歩なのかもしれない。

 第1回からエコプロ展を見てきたが、ことしも、去年も、大半のブースがいささか平板な感じに終わっている。主催者にとっても、来年は一工夫も二工夫もすべきチャレンジの年ではないかと思う。

 

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2016年7月29日 (金)

都内住民に航空機騒音を振りまく羽田増便案

 羽田空港の発着便数を年間3.9万回増やす案が28日、国土交通省から東京都や埼玉県などの関係自治体に示され、自治体側が了承したという。いまある4本の滑走路を効率的に運用して発着回数を増やすには、飛行ルートを変えて、現在の海の上を飛ぶのをやめて品川区、大田区、目黒区など陸の上を飛ぶほうがいい、という発想に基づく。

 当然、飛行ルート直下や飛行ルートに近い地域の何十万人どころか、それ以上の住民が騒音などの公害を受ける。1時間に90回(1分に1.5機)も離着陸して飛行機の騒音をまき散らすというのを、関係自治体が了解したというのは、どうかしている。

 大気汚染や自動車公害などで、日本人は”外部不経済”といわれる概念を学んだ。企業などが収益を上げるために、廃棄物、騒音などを外部に放出し、被害、その処理費用を社会に負わせることを言う。羽田空港の増便対策は、そうした環境問題の典型的な元凶とも言うべきものだ。メディアは、東京オリンピックに備える、空港の発着回数競争に対応するなどといった政府の説明に踊らされている。

 今回の発着便増案は、沖縄の米軍普天間基地に匹敵する騒音等公害を東京の上空から大量に振りまくのに等しい。国交省は低騒音機の導入を促進するとか、騒音被害が大きいところには防音工事の助成制度を用意するなど、というが、年間発着枠が約45万回から約49万回と1割弱増えるだけのために、東京の人口密集地域を騒音公害づけにするのは大間違いだ。

 環境立国日本と言っていたのはウソだったのか。おりからの都知事選で、きちんと問題点を指摘する候補者がいたらうれしい。

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2016年5月22日 (日)

温暖化もたらす大気のCO2濃度が400ppm超える

 日本の温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」が観測する地球大気全体の月別二酸化炭素平均濃度が、昨年12月に400.2ppmとなり、初めて400ppmを超えた。ことし1月までの暫定的な解析の結果だが、地球温暖化の進行速度が落ちていないことを示すものだろう。

 これは宇宙航空研究開発機構(JAXA)や環境省などが発表したもので、21日の日本経済新聞夕刊によると、「今の増加ペースでは、あと20~30年で450ppmに達してしまう」(横田達也国立環境研究所フェロー)という。そんなスピードで濃度が上がり続けたら、人類や社会は危機に直面することが必至だ。

 世界は昨年12月、温暖化防止のためのパリ協定をまとめることができた。批准はまだだが、そこには、21世紀末までの気温上昇を1.5度までに抑えるという意欲的な目標を盛り込んだ。しかし、参加各国がそれぞれ自主的に削減目標や実施方法を掲げ、その実現に努めるという緩やかな排出削減策にとどまっている。

 しかし、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の報告によれば、18世紀の産業革命以前と比べた気温上昇を2度以内にとどめるためには、大気中の二酸化炭素の濃度を450ppm以下にとどめる必要があるという。一度、450ppmを突き抜けると、温暖化が加速して、元に戻ることは難しく、人類の生存は困難になる可能性が大きいと思われる。

 21世紀の末まで、人類が平和に存続できるか、疑わしい。400ppm突破は、そうした悪夢が現実化する可能性が大きいことを教えているように思う。

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2015年7月14日 (火)

レスター・ブラウンの研究所閉鎖

 レスター・ブラウン氏と言えば、「ワールドウオッチ・インスティチュート」、21世紀に入ってからは「アース・ポリシー・インスティチュート」を拠点に、地球環境問題について広い視野と先見性に富んだ研究をし、国際的に啓蒙活動を行なってきたことで知られる。日本に来たとき、講演会場にスポーツシューズを履いてきたのを見て、親しみを覚えたのを思い出す。その彼が81歳となり、主宰する研究所を6月30日で閉鎖した。

 研究所での最後の”成果”は、レスター・ブラウン氏の自伝と、『The Great Transition:Shifting from Fossil Fuel to Solar and Wind Energy』の2冊。後者は翻訳書が出たばかりだ。まだ、読んではいないが、エネルギーの主役が資源量に限りのある化石燃料から、太陽光や風力といった再生可能な自然エネルギーにシフトしていく大きな移行期にあることを書いているのだろう。

 レスター・ブラウン氏は米農商務省出身であり、地球環境の変化と世界の食料事情を踏まえ、すぐれた見識と展望、および具体的な処方箋を示してきた。『Who Will Feed China?』は、人口急増の中国が食料をどうやって確保するか、と疑問を投げかけ、中国政府に大きな衝撃を与えたといわれる。

 彼の著書やニューズレターは世界のあちこちで読まれ、翻訳書も数多くの国で出版されてきた。彼の”予言”通りに事態が悪化することが多かったが、彼の”処方箋”には、まだ希望があるという明るさがあったように思う。彼は稀有の語り部であった。

 ひるがえって日本を見れば、政府は化石燃料である石油、天然ガス、石炭をエネルギー供給の柱に据え、原子力発電にも2割余、依存するという供給構造を想定している。原発にいたっては、”フクシマ”の巨大事故の教訓を十分に踏まえることなく、もっぱら”経済性”の観点から再稼働を求める声が経済界において聞かれる。

 わが国は公害対策や省エネなどではきわめて先進的であるが、他方で、化石燃料・原発依存から抜け出せないように、にっちもさっちもいかないのである。日本にも、レスター・ブラウン氏のように、環境問題を広く、深くとらえ、世論を動かすような優れた人物が出現することを望みたい。

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2015年4月15日 (水)

環境汚染で高まる中国国民の不満

 中国の内陸部にある四川省で、コークス工場の異臭が激しく、怒った大勢の住民が警官隊と衝突したと伝えられる。また、つい先日、広東省で廃棄物焼却工場の建設計画に反対する沢山の住民が警官隊などとぶつかり、工場建設計画がとりやめになったという報道があった。中国では、経済が急成長し、国民生活も豊かになったが、それと引き換えに、大気、水、土壌などの汚染がすさまじい勢いで進行している。

 北京をはじめ中国本土のあちこちで、大気中のPM2.5の濃度が頻繁に健康を害するレベルになっている。濃霧のような大気汚染の日がしばしばで、外を歩く人たちがマスクをしている報道写真にもよくお目にかかる。

 環境汚染以外にも、食品などで有害物質が使われていることがあるので、国民の身体を害する危険がある。多少の知識がある国民であれば、政府や企業が環境汚染防止対策を実施することを内心望んでいるだろう。

 そして、ロイター通信によれば、中国政府の環境保護省のシンクタンクは、環境汚染対策への取り組みが十分に成果をあげないと、国民の不満が高まり、社会不安が広がりかねないと警告したという。異例なことだと思うが、それだけ、国民の不満がうっ積しているということではないか。

 中国中央テレビの女性キャスターだった柴静が2月末に中国の環境問題を取り上げたドキュメンタリー「穹頂之下」(Under the    Dome)をネットで公開し、大反響を呼んだ。数日して政府のストップがかかり、中国内ではネットでアクセスすることができなくなったが、1日で2億回もアクセスがあったということは、国民の関心の高さを表している。出演者の顔ぶれや協力した大学などの組織を見れば、党や政府の要人の一部にせよ、環境政策の必要性を理解していることは明らかである。

 中国では政策の変更の是非が権力抗争と密接に関わる国である。そして、環境汚染の元凶である鉄、化学、石油などの重化学工業や自動車などと結び付きの深い党幹部が環境保全重視の政策に転換しない限り、環境汚染は深刻なレベルが続く。シンクタンクの警告や柴静のドキュメンタリーは、そうした状況を打開するための一歩前進のようだ。 

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2015年1月 9日 (金)

ダイオキシンの”元凶”の濡れ衣が晴れた塩ビ

 ダイオキシンは「史上最強の猛毒」で、「塩化ビニルなどの焼却で発生」、「新生児の死亡率が上がっている」などと騒がれたのは1990年代後半。このため、国会でもダイオキシン類対策特別措置法が1999年に成立、翌年に施行された。テレビ、新聞などで「所沢産ホウレンソウに高濃度のダイオキシン検出」などと大きく取り上げられたことを覚えている人も少なくないだろう。その塩ビの濡れ衣が晴れたという。

 塩ビと環境のメールマガジン(塩ビ工業・環境協会発行)最新号がそのいきさつを記している。第1に、PRTR法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)で優先評価化学物質に指定されていたクロロエチレン(塩ビ)について、昨年12月、政府は指定を取り消し、一般化学物質として扱うことにした。第2に、民間のグリーン購入ネットワーク(GPN)が、これまで塩ビをダイオキシン発生の一因だという情報を提供してきたのをやめると昨年11月に決めた。

 ダイオキシンは自然界にもあるし、塩分を含む食品などを燃やしても発生する。しかし、環境問題が大きな関心をよんでいた時期に、センセーショナルな報道や一部の学者、研究者が塩ビの焼却をダイオキシン発生の主因のように主張したため、塩ビが恐ろしい物質だという風評が広がった。このダイオキシンをめぐる騒ぎで打撃を受けた業界が、塩化ビニルの製造や加工の産業である。塩ビ工業・環境協会ができたのは、このダイオキシン問題に業界がこぞって取り組むためだった。

 今日では、ゴミ焼却炉の高性能化で焼却条件を適正に管理できるので、ダイオキシンの生成量は1997年当時の100分の1程度にまで下がっているという。2000年前後にも、ダイオキシンはゴミ焼却炉の適切な燃焼温度管理で外部にはほとんど出ない、という専門家の指摘もあったが、猛毒説などセンセーショナルな報道が圧倒的だった。ここにも、今日、大きな問題になっているメディアの行き過ぎがあったことは間違いない。建材、自動車など、あちこちで塩ビが使われている。寿命が長いし、マテリアル・リサイクルが容易であるなど、塩ビはすぐれた材料だが、10年以上も濡れ衣に苦しんだことはあまり知られていない。

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2014年11月 6日 (木)

『人類は80年で滅亡する』(西澤潤一他著)が現実味を帯びてきた

 国連の気候変動に関する政府間パネル、いわゆるIPCCがこのほど統合報告書をまとめ、発表した。科学的見地からの地球温暖化の進行および将来予測、温暖化への適応および緩和策をパッケージで取りまとめたものである。
 すでに地球温暖化は氷河の後退、海面上昇、豪雨、干ばつなど、さまざまな天変地異を引き起こしており、放置しておけば、ますます人類の生活基盤を脅かすことは必定とされる。そこで、IPCCの報告書は工業化以前と比較した温度上昇を2度未満に抑制することを求め、温室効果ガスの排出量を2050年までに2010年比40%~70%削減し、今世紀末までにほぼゼロにする必要があると結論づけている。化石燃料の燃焼による二酸化炭素の排出を抑制するのは無論のこと、二酸化炭素の地中埋蔵など、あらゆる方策で大気中の温室効果ガス量を抑制することが破局回避に求められている。
 1992年のリオ地球サミットで世界が取り組み始めた地球温暖化対策は、京都議定書などの若干の進展はあったが、アウトサイダー、中国の経済発展によって温室効果ガスが急増。同じくアウトサイダーの米国も排出抑制にコミットしないで今日に至っている。EUはこれまでも温暖化対策で独自の道を歩んでいるが、中国、米国、ロシアなどの各国の抵抗もあり、世界全体として温室効果ガス削減で大きな前進は望めないのが現実。
 2000年に西澤潤一東北大学教授らが出した『人類は80年で滅亡する』は、CO2地獄で人類は21世紀中に滅びるおそれがあるとし、主に工学的な視点から「CO2地獄からの脱出」策を説いている。この14年も前に出版された本が”予言”した道を世界は歩んでいるのではないか。
 ところで、今年9月発行の『日本の感性が世界を変える』(鈴木孝夫著)は、地球環境問題を解決するため、鎖国の江戸時代の経験を世界に広めることを提案している。
 温暖化は、地球という閉鎖社会の中で、これ以上、人類が物理的な拡大を求めることを許さない段階にきている。したがって、閉鎖社会の中で、人類が争わず共存して生き延びるには、無駄な資源浪費もなく、自然環境に過度な負担をかけないソフトな生き方が必要である。それには江戸時代のような生き方を世界に広める必要があると著者は訴えている。可能な限り衝突を避け、自分を抑え、相手を立て、友好的な人間関係を維持するために気をつかう日本の文化も温暖化問題に直面している人類に不可欠だと言う。
 地球温暖化が人類滅亡をもたらすおそれはかなりある。したがって、世界は戦争したり、宗教対立で殺し合ったりとか、よその国と些細なことでいがみあっているようなゆとりはないはずだ。鈴木氏の本は、そうした対立の愚劣さを気付かせてくれる。

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2014年9月11日 (木)

温暖化を阻止しないと人類の未来が危うい

 この夏、日本では台風や低気圧による猛烈な雨が土石流などの災害をたくさん引き起こしている。3年半前の巨大地震に国民は恐れおののいたが、自然がもたらすさまざまな脅威に対しては、被害を最少化する努力を積み重ねることが重要である。

 地球温暖化は、自然現象であるが、化石燃料を燃やすなど人為的な活動の積み重ねで起きる。そして、それによる地球環境の変化は人類に多くの災害を及ぼす。このため、人類の未来を暗鬱なものにしないようにするには、国際的に温暖化の抑制、(温暖化の進行に伴う悪影響を最少化するための)適応などを推進せねばならない。

 だが、我が国に関して言えば、地球温暖化防止対策は政治の主要課題からはずれているし、国民の関心も乏しくなっている(ちなみに米国ホワイトハウスのWebは、「気候変動とオバマ大統領の行動計画」と題して詳しく書いている)。それを反映してか、メディアの温暖化関連の扱いは目立たない。メディアの役割は世の中に追従するのではなく、先駆けて警告することにあるはずだが、温暖化問題の扱いを見る限り、お粗末と言わざるをえない。

 国連のWMO(世界気象機関)が9日に発表した温室効果ガスの年平均濃度は2013年に二酸化炭素で396ppmと過去最高になった。英国の産業革命前に280ppmであったのが、約4割増えている。2005年には379ppmだった。この勢いだと400ppmを突破するのは2015~2016年だろうとWMOは予測している。

 ちなみに、同じく温室効果ガスのメタンの濃度は産業革命前の1750年に比べて153%増、亜酸化窒素は21%増である。

 温室効果ガスの排出量が増え続け、大気中の濃度がさらに高くなっていくと、人類の生存基盤である生態系に大きな打撃を与える。そして、排出を抑制しても、温暖化の進行を止められない、言い換えれば人類の生存基盤が失われる時が近い将来に来る。WMOのJarraud事務総長は「我々(人類)は時間切れになりつつある」と警告している。

 世界のあちこちで戦争、内乱が起きている。失業などで生活苦にあえぐ人々も多い。こうした眼前の出来事を取材し報道することもメディアの重要な役割だが、未来を想像し、起こり得る災厄などを人々に知らせて、備えをするよう訴えることも極めて大事だ。温暖化問題に真正面から取り組もうではないか。

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2014年2月12日 (水)

放射能汚染を科学的に究明した本『土壌汚染』に感動

 中西友子東京大学教授が昨年9月下旬に出版した『土壌汚染 フクシマの放射性物質のゆくえ』(NHKブックス)を読んだ。”フクシマ”以降、放射能、放射線、放射性物質などという言葉がメディアにしょっちゅう出てくる。ベクレル、シーベルトなども同様。そこで、それらの定義を知るため、同書に手を伸ばしたのだが、通読して、放射性物質による汚染のメカニズムなどを科学的に究明していることに感心した。

 同書に教わったことの1つは、土壌表面に付着した放射性セシウムは土壌に吸着して離れない、傍の植物の根でも吸い上げることができないということである。当初、樹木の葉に付いたセシウムにしても、枯れて地上に落ちたら、分解し、土壌に吸着される。

 福島県の山に落ちた放射性セシウムも土壌や木の葉にくっついていて、雨水によって流出することはほとんどない。

 また、土壌に付いたセシウムは表土の5cmぐらいまでしか汚染していない。とはいえ、この汚染された表土をはぎとるという工学的な除染をすれば、農業の基盤である微生物に富んだ貴重な土壌表層を失うことになる。

 畑を天地返しし、よく混ぜて鋤き込めば、表土の放射線測定値は大きく下がり、作物を育てることができる。そのほか、さまざまな除染の方法が研究されているが、可能な限り、大切な土壌という資源を生かす方法を用いるべきだ。

 国や県がコメの汚染をチェックしているが、それは玄米が対象。精米し、水でとぎ、水を加えて炊くと、放射性セシウムの濃度は10分に1以下に下がる。種子には子孫にできるだけ害を与えないようにする性質があるからではないか、という。

 桃などの果樹・果実の放射能汚染は、樹皮に付着した放射能とほぼ同じ量のセシウムが幹の中に入って起きる。しかし、果実や剪定・落葉などで樹体内のセシウムは減っていく。

 乳牛の餌に放射性セシウムを混ぜて2週間与え続けたあと、混入を止めたら、牛乳中のセシウムは減り、2週間後にはほぼなくなった。放射能汚染の牛を処分する必要はなかったのではないか。

 生物濃縮は起きていないらしい。代謝された放射性セシウムはいずれ土壌に吸着し、生物にはあまり蓄積されないのではないか。

 きのこによっては、高い濃度のセシウムを蓄積しているものがある。生えた場所の近辺に局地的な循環系を形成し、菌糸を伸ばして落ち葉から栄養と一緒にセシウムを採り込み、寿命が来たら、また栄養源になるという循環をしているという。

 放射能汚染を追究する場合、過去に、米ロや中国が行なった核実験による放射性物質の降下による影響も考慮しなければならない。

 

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2013年12月16日 (月)

除染は何のため、誰のため?と問う多田順一郎氏

 日本記者クラブが16日に催した勉強会で、NPO放射線安全フォーラムの多田順一郎氏(伊達市市政アドバイザーなどを兼務)が”フクシマ”に関する「除染と線量」について私見を述べた。

 その中で、①除染は年間1㍉シーベルト以下まで達成したとしても”不完全な復旧”であり、したがって、除染で”原状回復”は不可能、②除染をしても何一つ新しい価値が生まれてこない、ゼネコンに札束が行くだけ、③年間1㍉シーベルト以下に除染しなくても、十数㍉シーベルトなら健康に暮らしていける、必ずや、少し汚染の残る環境と妥協して生きていく勇気が生まれるだろう、④線量の高い地域は除染せず、国が買い上げて、移住による再出発を支援するほうが合理的、と主張。

 また、中間貯蔵施設と県外最終処分についての政府の見解は悪しきリップサービスで、「国民の誰一人として、県外最終処分が実現できると思わないだろう」と批判、各市町村がそれぞれ小規模な産業廃棄物処分場を持つのがよいと提案した。いまの仮置き場について、住民は当初、危険なものだと思っていたが、実際にはそうでもないと思うようになっている、と指摘した。

 放射線安全フォーラムでは飯舘村の長泥地区で試験除染を実施した。そこから学んだことを踏まえて、除染で「農地の一番よい部分の表土を5cmも剝ぎ取って、山砂を入れるというようなことで、農地が水田として使えるとは思えない」、「山林では腐葉土層を剝ぎ取れば、大雨で山崩れしかねないし、山林から除染廃棄物を運び出す手段もない。収穫物に吸収されない方策をとるべきだ」などと語った。

 また、多田氏は、「数兆円の費用を除染に使ったものの、その効果ははっきりせず、首長選挙で現職が軒並み敗れていることに象徴されるように、住民の不満がうっ積している」と言い、その原因は東電賠償という枠組みをはめてしまった点にあると述べた。賠償である以上、原状回復が基本であり、除染して(住民が元通りの生活に)帰還することが唯一のシナリオになっているというわけだ。その結果、多くの人がこの除染という幻想にとりつかれ、宙ぶらりんに歳月を過ごしていると見る。

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