2018年10月 9日 (火)

ドル不足 調達金利UPが気になる

 10月8日付け日本経済新聞朝刊の一面トップは、「ドル不足 調達金利上昇」という見出しの記事である。脇見出しは、「邦銀、10年ぶり水準」、「米利上げ・新興国不安」とある。

 米国の利上げと新興国の経済政治不安で世界的にドルに対する需要が高まり、米以外の国のドル調達がしにくくなっている、というのが背景ということらしい。

 気になるのは、日本の銀行の海外融資や日本企業の輸入資金などに充てるドルの確保が難しくなって、ドル調達金利が上昇したり、円安で日本の国内物価が上がること、関連して株価水準が大きく下がること、などである。極端な低金利を背景とする世界各国のバブル的な経済の崩壊も心配だ。

 日本では、安倍内閣の継続で、極端な低金利、膨張一本鎗の財政運営が続いている。それが世界経済の変動によって大きく修正を迫られる可能性は少なくない。

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2018年3月 4日 (日)

逆「トリクルダウン」を目指せと言う中前忠氏

 経済同友会の会報『経済同友』2月号に、中前忠国際経済研究所代表が昨年12月に会員セミナーで講演した「経済ナショナリズムが変える成長モデル」の要旨が載っている。

 労働生産性の上がっている企業は雇用を減らす。余剰になった労働者は生産性の低い第三次産業に移る。このため、全体として企業収益は上がっても、労働者の報酬は下がり、所得格差は広がる。この傾向が世界中に見られるという。

 日本では、国の所得に対する家計所得の割合は1980年の68.9%から2015年51.9%まで落ちている。加えて、家計所得に占める税・社会負担額は1980年の21.7%から2015年35.8%にと重くなっている。

 逆に、国の所得に対する企業所得の割合は1980年の21.3%から2015年32.0%へと上昇。企業所得に対する税・社会負担額は1991年のピーク48.7%から2015年31.8%へと下がっている。こうした企業優遇策のため、労働分配率も下がっているという。これを是正しない限りは国内消費は伸びないと中前氏は指摘する。

 そこで、消費税を廃止し、法人税増でその分を補う。そうすれば、消費は増え、結果的に国内企業にもプラスに働き、賃上げも可能になると言う。家計から企業へ富が行き渡る「逆トリクルダウン」を目指すレジーム・チェンジを唱えている。

 中前氏は昨年10月5日夕刊の日本経済新聞コラム「十字路」で、消費税の撤回、貯蓄利回りの引き上げ、および財政赤字対策としての企業への増税を説いた。今回は、それに続くもの。逆転の発想が説得的だ。

 

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2017年10月26日 (木)

鋭い指摘がある書物『巨大ブラック企業』(佐高信)

 ブラック企業という言葉はいろいろな使われ方をする。本書では佐高氏と専門家との対談を中心に、日本を代表するビッグビジネスの東京電力、日本航空、東芝、トヨタ自動車、松下電器(パナソニック)の5社の経営の問題点を多面的に紹介している。5社とも、私自身が一時、取材したことがあり、その後とはいえ、そんなことがあったのか、と教わることもあった。

 松下電器(パナソニック)については、立石泰則氏が、山下跳びといわれた山下俊彦社長について「社長になるつもりがなかったから、変な野心を持っていなかった」、「名経営者を一人選べと言われたら、迷わず山下さんを挙げる」、山下氏は「家電だけでは生き残れないと考え、……(コンピュータ事業再参入、半導体事業強化など)デジタルへ大きく舵を切った」と言う。

 戦後にPHP運動を始めたいきさつ、松下政経塾を創設したいきさつなどを読むと、幸之助神話のつくられた過程がわかる。また、立石氏は、いまの松下の広報はメディアはコントロールできると考えているという。開かれた広報と言っているが…。

 トヨタについては、『トヨトミの野望』(梶山三郎著)に取材協力した井上久男氏(フリージャーナリスト)は「豊田家では株式を二%くらいしか持っていない。……資本の論理で言えば、豊田家の会社ではない。……かつ上場しているから社会の公器という存在」、「日本社会にとってみたらまさに公器」、「そういう公器を、株式を持っていない豊田家という、創業者の子孫だからといって経営を任せてもいいのかという大きな問題提起を、この本の主人公はするわけです」と言う。

 また、井上氏は「社内で意見を言う人間が排除されるようになってしまった」、「トヨタがどこかの国に似てきたと思いますね。……トヨタという会社はグローバル企業で、多様性が必要な会社なんですけど、考え方に多様性がなくなってきている」、「今のトヨタで出世する人は、本当に忖度が上手い人ですよ」とも指摘する。

 同氏によれば、一時期は「社徳」や「オープンな会社に」と言って、メディアともうまく付き合っていきましょうという感じだったトヨタが、今はまた、秘密主義に戻ってしまったという。情報統制がすごいとのこと。役員人事は社長専管事項であり、その人事情報を書くとそのメディアはパージされるという。

 かんばん方式についての同氏の説明は興味深い。「本来のかんばん方式は、トヨタの方から取りに行く発想だったんです。要るものだけ取りにいくということで、下流工程から引き取っていくのがかんばん方式の神髄だった。すると、部品メーカーからしてみると、トヨタ自動車というのは下流工程なんです」、「本当はトヨタが引き取りにいかないといけないんですが、かんばん方式はそういう意味でも変質しちゃった」。

 という具合に、本書は読んでいくと、日本の企業社会のひずみをいやというほど感じさせられる。と同時に、どこかの大国の政治のありかたとも共通しているような思いにとらわれる。

 

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2017年10月11日 (水)

神戸製鋼所の性能データ改ざん

 鉄鋼、アルミ、銅製品の大手メーカー、神戸製鋼所が性能データを改ざんして顧客に納入していたという。同社は自動車メーカー、鉄道、宇宙・防衛向けなど、多様なビジネスを展開しているが、顧客と約束した強度などの基礎データが達成できなかったにもかかわらず、達成できたかのような文書を納入先に提出していたようだ。

 これより少し前、日産自動車が工場で組み立てた自動車を試験運転し、出荷するテストを無資格者にやらせていた事実が明らかになった。

 こうした不正が国内、国外を問わず、また、業種を問わず、暴かれている。フォルクスワーゲンが排ガス規制を不正にパスしていた事件もそうだが、近年、グローバルな競争に勝ち抜くだけの技術力、コストダウンなどができないメーカーの不正が目に付く。

 いまや、ものづくりは、何の分野でも、国内外を問わないグローバルな競争が繰り広げられており、メーカーとしては、技術力、マーケットシェアなどで世界ナンバーワンにならないと、収益的に苦しい。また、日本国内では、法令順守に対する取り組みが甘い。カルテル行為に対する受け止め方はまさにそうである。したがって、独占禁止法などの遵守への取り組みはまだ甘い。

 したがって、その分野のトップ企業以外の企業は、競争力の強化に努めるのは無論だが、それだけでは追いつけないとなると、不正に手を染めることになりやすい。

 そうした土壌が日本にはあるように思う。

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2017年8月12日 (土)

国債&借入金の現在高は1079兆円

 財務省の発表した国債および借入金の残高は、ことし6月末現在で1078兆9664億円にのぼる。さらに、政府保証債務の現在高は6月末現在、40兆2736億円である。

 天文学的な数値なので、ピンと来ないだろうが、5年前は国債および借入金残高が976兆1853億円だった。これは、過去5年間に102兆円余の増加、平均すると、毎年20兆円余ずつ増えている勘定である。

 10年前は国債および借入金の現在高が836兆5213億円だった。ことし6月末までの10年間に242兆円余増えたわけである。平均すると、国債および借入金だけで、毎年、24兆円余も政府の債務が増え続けたというわけだ。これを人口数で割れば、毎年1人あたり20万円近い。

 政府の予算編成において、財政再建が建前として挙げられるが、この国債および借入金現在高の数値の推移は、およそ、財政再建なぞどこ吹く風、という実態を示している。景気の良し悪しにかかわらず、国債の発行で財政の相当部分を賄うことに政府も、議会も、経済界も危機感を抱かないことが危機の深刻さを表している。

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2017年7月26日 (水)

消費低迷には家計減税をと説く中前忠氏

 中前忠氏(中前国際経済研究所代表)が日本経済新聞に寄稿するコラム「十字路」は、その独創的な視点で評価が高い。7月24日の「消費はいかに低迷してきたか」では、「減税が必要なのは、企業よりも家計」と言う。

 日本経済は長期のデフレから未だ脱していないが、企業部門は収益、貯蓄のいずれもが改善している。それに対し、家計部門は低迷を続け、家計の貯蓄は大きく減っている。間接税と社会保険料の負担が重いからだと中前氏は言う。

 これに対し、政府は財政再建を実質的に棚上げし、デフレ脱却を眼目に、2018年度の国家予算でも従来型の大盤振る舞いをする可能性が大きい。しかし、利益を内部留保して財務内容をよくしてきた企業を喜ばせる政策では、家計の消費は伸びない。そこで、中前氏は家計減税こそが求められているという。

 私見では、日本の企業は利益をなるべく社内に貯めておこうとする。不景気や乗っ取りなどに備えて内部留保しておこうという防御的意識が強いのである。このため、リスキーな事業への投資において欧米の企業におくれをとるおそれがある。

 したがって、企業にあまり内部留保させないような税制とか、従業員の賃金を上げるような社会的雰囲気、例えば、春闘で、労働者が高い賃上げをめざして強力な統一闘争をするとか、といったコペルニクス的転換が必要ではないかと思う。

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2017年7月20日 (木)

日銀の物価上昇2%の見通しははずれっぱなしでも責任がないのか

 20日までの日銀金融政策決定会合で、日銀は、物価上昇率が安定的に2%に達する時期を「18年度ごろ」から「19年度ごろ」に先送りすることを決めたという。

 自民党が政権の座に復帰したときに、日銀の新総裁に黒田東彦氏が就任した。これを受けて開かれた2013年4月の日銀政策決定会合では、デフレ脱却のため、なすべき政策を一挙に打ち出した―というのが黒田総裁の主張であった。即ち、2%程度の物価上昇を2年程度のうちに実現するとし、マネタリーベースおよび長期国債の保有額を2年間に2倍にする、などというものだった。

 きょう(20日)の日銀の発表によれば、物価上昇率が安定的に2%に達する時期は19年度ごろへ1年間先送りするという。目標時期の先送りは昨年11月に続いて6度目である。黒田バズーカなどと当初もてはやされた黒田日銀の政策は、もともと根拠の乏しい公約にすぎなかったのではないか。その背景として、世界の経済情勢や国内経済の実態に対する認識が的を射ていなかったということではないか。

 日銀は国債の極端な大量購入や、ゼロ・マイナス金利政策などを実施して内外を驚かせてきた。そうした極端な政策のツケもたまりにたまっている。安倍政権の経済政策は、アベノミクスの行き詰まりともからみあい、財政危機をより深刻にしている。

 今回の審議委員交代を機に、日銀の審議委員は安倍政権好みの人たちばかりになり、今後の金融政策決定会合は、本質的な議論を進めてくれるか疑わしい。

 政府は財政再建で立ててきた基礎的財政収支の黒字化という目標が実現困難なため、もっとゆるい目標に切り替えようとしているようだ。これらを含め、安倍政権の経済政策は、要注意である。

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2017年6月14日 (水)

上場企業の6割強が実質無借金――を考える

 上場企業(金融などを除く)の財務体質が改善され、2016年度末時点で実質無借金企業が前年度より60社増えて2000社を初めて突破した、と日本経済新聞の13日付け朝刊が報じた。金融などを除く上場企業は3500社近いが、そのうちの58%が実質無借金の企業だという。

 現預金、短期保有有価証券などの手元資金から借入金、社債などの有利子負債を差し引いた「ネットキャッシュ」を算出。これがプラスの企業を実質無借金と定義している。

 GDPなどでとらえるマクロ経済では、デフレが続いているとか、賃金上昇率が低く、消費も低調だ、など、日本経済は長期停滞から抜け出せないように言われる。それにもかかわらず、ないしは、それだからこそ、企業は実質無借金化しているのだろうか。

 市場経済では、起業家が事業を起こし、必要な資金を株式、社債や借入金という形で調達するのが普通だ。資金の必要がなければ、資金を手元に置いておかず、株主などに返還するのが常識である。また、内部留保で手元資金が積み上がる一方で、雇っている社員などへの給料を増やさない、ないしは、下請けなどを買い叩くような企業は、社会的な公正さを欠いていると言える。

 企業が新技術、新製品などで事業の維持・拡大をめざせば、雇用も拡大し、国民経済も活性化しよう。また、内部留保を適正なレベルにとどめ、資金使途が見当たらないときは、増配で株主に返せば、消費の増大につながる。増配する企業が増えているが、もっと大々的に行なったらいい。そうすれば、株価はもっともっと上がる。

 また、個人の貯蓄が1000兆円を超え、無借金企業が増えるということは、マクロ経済では、政府が借金を増やすことと裏腹である。政府が法人税や個人所得税などの増税を行ない、国の借金を異常な高水準から引き下げることは望ましいことだろう。

 経済団体連合会は創設70年を迎え、会報の6月号は『「豊かで活力ある日本」に向けて――岐路に立つ日本と経済界の役割』と題して特集を組んでいる。だが、上記の、証券・資本市場の観点を欠いているのは残念である。

 

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2016年11月 7日 (月)

体温計の目盛りを変えてごまかすようなことをやってきた

 野村証券副社長、日本取引所グループ最高経営責任者など資本市場で重要な役割を果たしてきた斉藤惇氏。朝日新聞の連載インタビュー『「市場の時代」道半ば』が7日付け第16回で終わった。最終回の見出しは「歪み正し市場いかせ」だった。

 「資本市場では、株価や金利が生産性や成長性などで合理的に判断され、値決めされる。企業も事業ごとの現金収支など合理的な数字をもとに経営するから本当の競争力がつく。経済全体でも、資本市場を中心に据えた国は効率性をもとづいた取引がされているから、生産性が高くGDPも増えている」――斉藤氏の基本的な認識はこれだ。

 それに比べ、日本は市場重視とは逆だ。景気対策として、株価の買い支えを考える政治家もいるという。「市場は失敗した時や非合理的なことには痛みを与えるから教訓になるのだ。熱があると市場が教えているのに、体温計の目盛りを変えてごまかすようなことを続けると、本当に取り返しのつかないことになる」と指摘する。

 市場経済は富の創出では一番いいシステムだが、格差拡大を引き起こす。だから、政府の再分配政策で配分の歪みを是正する必要がある。それによって、誰もが市場経済がいいものと感じるようにすることができる。斉藤氏はそう考える。

 いま、「国債がこれだけ増発されているのに、「金利ゼロ」という嘘のような世界になっている」。日銀は国債を大量に購入しているが、それは価格形成を歪め、市場機能を阻害している。社会も、財政などをなんとかせねばと本気で考えることをしない。そうした斉藤氏の指摘には素直にうなずかざるをえない。

 日本の企業は間接金融のウエートがまだ高い。また、家計の資金運用も、預貯金や国債などの安全資産がほとんどだ。これでは経済が活性化しないと斉藤氏は言う。

 ”アベノミクス”は斉藤氏の意見とは180度違うと思う。そうした面からも、斉藤氏のインタビューは意義が大だ。

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2016年9月22日 (木)

わかりにくい日銀の新金融政策

 日本銀行は2%の物価上昇目標を早期に実現するため、「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)付き量的・質的金融緩和」の導入を決定した。

 安倍政権はデフレ脱却のため財政出動や異次元金融緩和を進めてきた。その中で、日銀は、2%の物価上昇を目標にして、国債の大量買い付けによる資金供給量拡大などを行なってきた。さらに、ことしの初めにはマイナス金利の導入に踏み切った。しかし、2%の物価目標は達成できず、マイナス金利は金融機関の経営に打撃を与えるなど、金融政策は行き詰まってきて修正を迫られていた。

 しかし、新聞等を見て、この日銀の政策転換を理解し、納得した国民は少ないのではなかろうか。エコノミストといわれる人たちの意見もまちまちだ。そうした意見の中で納得できるのは、”アベノミクス”の3本の矢のうちで、ほとんど手付かずになっている成長戦略というか構造改革を実行するよう求めている点だ。それに、異次元緩和の出口がどうなるのか、定かでないとの指摘だ。

 ところで、先頃から、政府は働き方改革に手を着けており、非正規雇用や長時間労働の是正にある程度の成果を挙げると見込まれる。これは労働運動が怠ってきた問題点であり、意義がある。

 しかし、構造改革に本格的に取り組むとしたら、日本の経済社会のどこに問題があるのかを多面的な切り口で分析することが必要だろう。それには、党派や競争相手などを超えたオールジャパンで取り組むことが不可欠だと思う。

 

 

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